SS~あるうさぎの追憶~
タイトルにSSってつけたけどSSの長さじゃない。
普通に1話分になってしまった。
まあ、ふーこは一番のお気に入りキャラだからしょうがない。
というわけでふーこ視点のお話です。
わたしはラビなのです。
名前はまだないのです。
といってもうちの種族で名前なんてあっても意味ないのですけどね。
そんなわたしが名前をもらう三年前のお話なのです。
わたしは三つ子の末っ子として生まれたのです。
お母様は由緒正しい水魔法の家系でお父様は平民だったのですが、すごい風魔法使いなのです、
生まれてから2週間ほどがたちました。
今日は家族みんなでお出かけなのです。
お父様とお母様と一緒に生まれた2人のお姉様。みんなで一緒に少し離れた花畑に行ったのです。
花がとても綺麗でおいしそうだったのです。
お父様に言うとここら辺の花はあまりおいしくないと言われてしまったのです。
むう、お姉様達もそんなに笑わなくてもいいと思うのです。
わたしがふくれていたら、お父様が魔法を見せてくれました。
ラビに限らず、だいたいの魔物は一つの魔法しか使えません。
たまに2つや、3つ使える方もいるのです。
でも、お父様はいくつも魔法を使えるらしいのです。
お父様はスキルがどうの、と難しい話をしていましたが、全然理解できないのです。
一番上のお姉様はふんふん、と頷いていましたね。
お姉様も賢くて素敵なのです。
お父様の魔法はただ風邪を起こすだけの魔法でした。
でも、お母様ーーーお父様ほどではありませんが、優れた魔法の使い手ですーーーが水の魔法で切り取った花びらが風に乗っていて、ぐるぐる回っていてとても綺麗でした。
最後にお父様はわたしたちに空を飛ばしてくれたのです。
少し怖かったけども、風を感じることができてすごく気持ちよかったのです。
お父様みたいに魔法が使えたらいいな、と思ったのです。
これがわたしの一番古い記憶なのです。
それからは大したこともなかったのです。
お母様から一人前の女となれるよう振る舞いやおいしい草を探す方法を教えてもらったりしたのです。
お姉様達は簡単にできていたのですが、わたしにはなかなか難しくてよく末っ子ちゃんはお転婆だね、と言われていたのです。
そんなわたしが一番楽しみにしていたのが、お父様の話を聞くことなのです。
お父様の一族はお父様以外に魔法を使える方がいないらしく、お母様と結ばれるのには色々とあったそうなのです。
ロマンスなのです。
あと、お父様のお話しには結構な割合でお父様自身の武勇伝なんかもはいっていて、それを聞くのも楽しかったのです。
そんな楽しい生活が終わったのは一年がたった頃だったでしょうか。
ラビの寿命はだいたい15年で2歳の年のラビッシュがとれる頃のお祭りで、一人前と見なされます。
だから、一年もたてば、何らかの魔法が使えるようになります。
現にお姉様達はすでに魔法を使いこなせるようになっています。
真ん中のお姉様は2つ、上のお姉様に至っては3つの魔法を使えるようになっており、やはり天才の子は天才だと、噂されています。
ですが、わたしはそのころになってもまだ、魔法を使えないのです。
普通一年もたって、魔法が使えなければ一生使えないとされているのです。
お父様が優しく教えてくれますが、魔力を流すという初歩の初歩が上手くできないのです。
今ではお姉様達への指導などもあり、なかなか練習の時間もとれなくなっています。
そのかわりに、お母様が見てくれるはずになっているけどもお母様はわたしのことを見向きもしてくれません。
まわりがわたしのことを「出来損ない」と言っているのは知っているのです。
だから魔法の練習をするのが辛くなったのです。
そこからの一年は魔法の練習をほとんどしてません。
むしろ、山の中を駆け巡って遊んでいました。
その頃にもなると、わたしは魔法が使えないというのを理解していましたし、諦めていたのです。
とりあえず、今のわたしの楽しみは果物を食べることなのです。
野いちごなんかは見つけにくいですか、木になっている奴は簡単に見つけられるのです。
でも、まわりが魔法を使って採っているというのを聞いてショックを受けたのです。
魔法が使えないわたしは果物すらまともにとれないのです。
もちろん、お父様に言えばとってきてくれたでしょうけどそんなこと簡単には頼めまないのです。
たまに、お父様がとってきてくれることもあるのですが「いりませんっ」と言ってしまうのです。
そういった日には帰ってくるとわたしの部屋にちょこんと置いてあることがあるのです。
・・・丁寧に一口サイズにカットされて。
ここまでされたら食べないわけにはいかないのです
とか誰に対するのかも分からない言い訳を並べて食べてるとお父様が覗いていることがあって、すごく恥ずかしくなってしまうのです。
お父様は無理しないでもいいよ、と言ってくれるのですが、わたしは自分自身の力でとりたいのです、と言うと笑ってくれたのです。
とりあえず、まずは木の実に届くようジャンプしてみるのです。
だんだんと近づいているように思えるのですが、なかなか届きません。
結局半分まで届くのに半年もかかってしまったのです。
そこで、他の方法も試してみようと思ったのです。
たしか、魔法で木の実をとるにはいくつか方法があって、一つはわたしがやっていたような自分の体を高いところまで運ぶ方法。
もう一つがお母様のように斬撃などを飛ばして実を落とす方法。
最後に大きなものを幹に当てて木を揺らして実を落とす方法なのです。
そこで、わたしは木の幹に体当たりをしてみたのです
簡単に弾かれてしまったのです。
木は揺れてすらないのです。
少しむっとしたわたしは自然と蹴りを繰り出していたのです。
すると、少しだけですが、木が揺れたのです。
これならいけるのです、と思いわたしは練習を続けたのです。
もちろんジャンプの練習も忘れません。
また、半年がたちました。一人前とされるまではあと半年なのです。
まだ、木の実は落とせないのです。
今日もわたしは森へと行くのです。
この森は決して近づいてはいけないと言われているのです。
でも、わたしは行くのです。というか、目的のものがここにしかないのです。
目指すのは森の中の広場なのです。この広場の真ん中に少し大きめな木があるのです。
この木になる果物がわたしの目的なのです。
お父様は色々と珍しいものを持って来てくれるのですがこの実は見たことがないのです。
きっと初心者向けの簡単に取れるものなのです……。
それすら、取れないわたしって・・・と沈んだ気持ちになるのですが、まずはこれを取れるように頑張るのです。
この木に向かって蹴りをいれていると、一匹の狼がでてきます。
この状況にもなれたもので、わたしは彼女とのバトルに自然と移行するのです。
彼女に最初に会ったときはびっくりしたものでした。
狼なんて、会ったら死ぬと言われてるような魔物なのです。
全速力で逃げてしまったのです。
お父様にはこんな恥ずかしいこと言えないのです。
幸い、追いかけてくることはなく、不思議に思いつつも次の日にそこに行くのでした。
でも練習してるとまたその狼がやってくるのです。
いつも全速力で逃げるのです。
それからその広場に行って練習を開始すると必ず彼彼女が現れるようになりました。
練習できないことにイライラする日々が続き、ある日ついに反撃してしまったのです。
彼女は驚いたようなのでしたがすぐに牙をだして反撃してきたのです。
普通に考えれば勝ち目なんてないのです。
でも、油断しているようだったので、相手の頭に思いっきり蹴りを叩き込んでやったのです。
一発KOだったのです!
どうやら、彼女自身もしたっぱだったのでしょう。
ふう、これでゆっくり練習ができるのです。
目を覚ました彼女はショックを受けたようでとぼとぼと帰って行ったのです。
これで、平穏が訪れたかのように思いましたが、次の日からも彼女はやってきたのです。
そのたびに戦って、どっちかが負けて、その日は解散といった感じです。
悔しいですが、わたしの負けの方が多いのです。
ずるいのです!
体が大きいせいであっちの攻撃をわたしは受け止めれないのです!
初めて負けたとき、というか二回目に戦ったときなのですが、食べられちゃうと思ったのです。
結局なにもされなかったのですが。
目を覚ましたとき彼女の顔が目の前にあったのにはびっくりしたものです。
したっぱのくせに、と思ったこともありますが考えてみればわたしの方が一人前になってすらない子供でした。
まあ、負けを認めてやろう、って感じなのです。
だんだんと戦うのが楽しくなってきてるからって、負けたのが悔しいから負け惜しみをいってるわけじゃないのですよ。ええ。
ちなみにまだ、木の実は取れません。
おかしい、さすがに半年前の倍くらいは跳べるようになったと思ったなのですに。
彼女にそう愚痴を漏らすと木だって成長してるんじゃない?と返されました。
確かにそうです。彼女に言われるまで気づかなかった自分が恥ずかしいのです。
ここ、半年で、彼女とは簡単なやりとりができるようになっているのです。
言葉が理解できないのに、なんとなく言いたいことは伝わってきます。
彼女はよく、「親父の近衛レベルにはなったはずなのにいまだ勝ち越せない・・・」といったことをよく言っているのです。
よく分からないのです。
あと、小さい声でつぶやいているようなのですが、ラビのわたしにははっきりと聞こえているのです。
さらに半年たち、収穫祭が近づいてきたのです。
この頃になると彼女には負けっぱなしなのです。
ちくせう。彼女がすごくうれしそうなのがむかつくのです。
でも、ついに木の実をとることができました!
一つしかなかったからお父様にはあげれなかったのですが、お父様はすごく喜んでくれたのです!
そして、ついに収穫祭の日なのです。
お父様からステータスを見せるように言われたのです。
ステータスって何なのです?と思ったわたしは悪くないと思うのです。
教え忘れてるお母様が悪いのです。
とまあ、一悶着ありましたがステータスはこんな感じだったのです。
ラビ lv29
hp870 mp290
sp870
atk174 def58
int58 min87
dex87 agi203
性別 雌
種族スキル 聴覚強化
有効スキル
脚力強化Ⅱ lv46
跳躍 lv86
蹴り補正Ⅱ lv38
危険察知 lv57
鎌鼬 lv2
高いのか低いのか分からないなぁと思ってたら両親が愕然としているのです。そんなに低かったのでしょうか。
お父様とお母様が何を言っているのか少し不安になったのです。
収穫祭の夜はこの土地を治めてくださっている方に会いに行くのです。
毎年、ラビはこの時期に行くのが慣例なのです。
その方はシルバーウルフ様という御方でとても強大な力を持っているのです。
この島はシルバーウルフ様以外にトムホーク様、うしがめ様、そして狂乱熊のクレア様によって分割されています。
それぞれは魔力だまりの近くに居をかまえてそこから湧いてくる魔物や、ゴブリンなどの危険な魔物の処理を行い、なるべく安全な暮らしができるようにしているのです。
いつか戦ってみた・・・おっとゲフンゲフン。
岩の上にシルバーウルフ様がいるのです。
長老が挨拶を述べ、わたしたちがその庇護下にあることを認めて頂くのです。
そして、今年一人前となるものを前にだし、お言葉を賜るのです。
なぜかシルバーウルフ様にじっと見つめられているのです。
長老がシルバーウルフ様の言葉をラビの言葉に直しているのです。
それを聞かなきゃいけないはずなのに気になってしまうのです。
居心地の悪さを感じながらも長老の言葉が終わるのを待ったのです。
そうして収穫祭も終わるのです。
あとは家に帰ってご飯を食べるだけなのです。
そう、思っていたのです。
次の日、目が覚めると知らない部屋でした。
そして、すぐそばには男がいます。
たしかお父様の遠縁の方だったと思うのです。
少し、いやかなり婚期を逃した方なのです。
男が目を覚ました。
気持ち悪い視線、わたしの下半身の方を見てる。
男が近づいてくる。
彼女と戦うときと違って高揚感もなにもない。
ただ、生理的嫌悪感だけがある。
でも、体が上手く動かない。
男が意地の悪そうな笑みを浮かべて何かを言った。
何を言ってるのか分からない。
耳には入ってくるけど頭が理解してくれない。
ただ、売られた、という言葉が耳に残っている。
気づいたときには全て終わっていたのです。
目の前には刃物で切り裂かれたような傷を持つ男がいたのです。
自分が生み出した風の刃が男の体を真っ二つにしていたのです。
ゆっくりと何が起こったのかを認識し、自分が同族を殺めたことを理解したのです。
そして、風の刃は何だったのかを考えてステータスに記入されてた鎌鼬ではないかと推測したのです。
逃げようーーそんな気持ちが湧いてきたのです。
ここに味方はいないのです。
だから、逃げるのです。
一瞬彼女のもとに行くことも考えたのですが、完全に逃げるのなら土地を変えた方がいいのです。
他の方なら、クレア様の土地なのです。
あそこは流れ者が集まると聞いているのです。
こうしてわたしは群れを抜け出したのです。
順調に土地も超えられクレア様の土地へと入ることもできたのです。
ただ、後悔したことも多いのです。
まず、気づいたのはわたしは生活能力が低いということなのです。
お母様の授業をちゃんと聞いておけばよかったのです。
食べられる雑草ならいいのですが、お腹を下すことも多かったのです。
次に、楽しませてくれるような相手がいないのです。
彼女との戦いを楽しんでいたわたしからすれば格下との戦いは本当につまらないのです。
雑魚ばっかなのです。
最後に、これは完全に想定外だったのはわたしに子供ができた、ということなのです。
あの男の子だとすると良い気はしないのですがどうしたらいいのかもわからないのです。
そうこうして、ふらふらしているうちにトレントのすみかに入ってしまったのです。
トレントは簡単に倒せるのです。
戦闘にさえなれば。
問題はトレントの擬態はわたしにも分からないということなのです。
万全ならまだしも、お腹に子供を抱える今、休憩に乗じて襲ってくるトレントに精神を追いつめられていったのです。
そんなときだったのです。空から光が降ってきたのは。
トレントの夜襲を退けていると、突然光が起こり、そこに箱のようなもののが現れたのです。
トレントは光にびっくりして逃げて行ったのです。
わたしも少しは遠ざかろうとしたのですが、陣痛が始まり、その場から動くことができませんでした。
だから、その晩、わたしが生き延びれたのは奇跡のようなことだったのです。
生まれた子供は真っ白だったのです。
わたしの群れでは忌み子とされる子なのです。
雪もふってないのに白い毛を持つ変わった子。
なんだか魔法の使えないわたしと同じような気がして無性に愛おしく思えてきたのです。
その夕方、食べ物をとる、という目的で昨日のところまで戻ってみたのです。
するとそこには一人の人間がいたのです。
人間はゴブリンよりもヒドい、とよく言われるのです。
見つけたら殺す気でかかれ、ともなのです。。
わたしは、牽制として軽めに蹴りを出したのです。
吹っ飛びました。おかしいのです?
この程度で吹っ飛ぶのなんてそこらへんの虫レベルなのですよ?
一応追撃もしたのですがなにか、透明な壁に阻まれてしまったのです。
ちゃんと始末しておきたいのですが、娘も心配なのです。戻りましょう。
トレントに気をつけなければならないのが大変なのです、と思いつつ。
次の日1日、トレントは現れなかったのです。
そのかわり、例の場所からトレントが仲間を呼ぶ声が聞こえるのです。
大丈夫なのでしょうか。
さらに次の日、様子を見に行って見ることにしたのです。
別に心配だったわけじゃないのです。
トレントを始末しにいくだけなのです。
ここでトレントを始末すれば夜が楽になるからなのです!
ということでトレントを全滅させたのです。
鎌鼬なのです、すごい便利な技な気がするのです。
その翌日のこと。
娘の為にもちゃんと食事はとらなくてはならないのです。
ここら一帯の魔物は全部殺したから安全ではあるけど、食べ物がないのです!
というか子供でも食べれるものってなんなのでしょう。
つくづく、生活力がないことを思い知らされるのです。
うん?あれは例の人間なのです。
なぜか袋から草、それもおいしい奴ばかりをばらまいてくれた。
むう、恩には報いるということなのでしょうか、もぐもぐ、多少なら目をつぶってもいいかもしれないのです。もぐもぐ。
その草のうち、特に柔らかくて子供でも食べられるやつを持って帰るのです。
例の場所から少し離れた洞窟に娘を残している。
留守のうちが不安なのですが、まあ、大丈夫でしょう。
娘に草を食べるとお母さんのじゃない匂いがある、と言われてしまったのです。
ぎくっ、どうごまかすのです?
娘はこれがお父さんの匂いなんだね~と言って納得してしまったのです。
違うのですけど・・・あの男よりかはマシなので否定はしないでおこう。
そう、あんな男が親になるよりはあの人間の方がいいのです。
それからその人間はわたしに会うたびにご飯をくれるようになったのです。
娘もお父さん~と喜んでるのです。
むしろ、わたしがとってきたやつにはあまり口をつけないという・・・。
こんな感じも悪くないのです、と思いながらその人間のお世話になりつつ、されど餌付けされてるわけではない!という意志を明らかにしておくのです。
別にやってほしいなんて言ってないのです!という感じ。
まあ、相手が勝手にやってくる分にはいいんじゃない?的な。
・・・なんに対する言い訳なんでしょうね。
そんな人間がわたしたちの洞窟に住み着くようになったのです。
娘はあっさりとなついたようなのです。
むしろわたしの方が疎外感を感じるのです・・・。
別になでなでしてほしいわけじゃないのです。
子供扱いするな!なのです。
あ、少し位ならいいのです……。
なにも止めなくてもいいのです……。
とまあ、こんな感じなのです。
なぜか彼の前だと素直になれないというかなんというか。
たまに目があってもすぐにそらしてしまいます。
なんだかちょっとおかしいのです。
彼についてわかったこと。
なぜか知らないのですけど食べられるものをとってくるのが上手いのです。
ただ、戦闘はできないようなのでたまに肉を取ってきてあげるとすごい喜んでるのです。
なぜかこいつは火の魔法が使えるらしいのです。
少し羨ましいのです。
あ、あと、名前を付けてきたのです。
ぴょん吉って男の名前なのです!
もっとかわいい名前がいい!と思ったのです。
そんな生活が1ヶ月くらいたった頃。
その日はなにかが呼んでいるという感覚はあったのですが、娘を置いてはいけない、と思い我慢していたのです。
結局3人で行くことになったが。
そこには昔の家族たちがいたのです。
わたしの方を睨んできているのです。
彼に隠れるようになってしまいました。
少しだけ、ほんの少しだけ安心したのは秘密なのです。
そして、土地を治めているお三方に会い、四天王の中でも一目置かれてるという、うしがめ様に言葉をいただいたのです。
実際、本物を目の前にするとすごいです。
今のままでは勝負にもならなさそうですが、いつか追いついてみせるのです!
あ、うしがめ様が何言ってるのか聞いてなかった。
というか、番という言葉が頭をぐるぐるしてて、全く内容が頭に入って来なかったのです。
その次の朝、目が覚めると彼がいなかったのです。
どきん、と心臓が跳ねた。
どっか言ってしまったのかと不安になったのです。
知らなかったのです。
彼がいないだけでこんなに不安になるなんて。
あいつは何事もなかったかのように帰ってきた。
少し怒ると、ご飯で機嫌をとってきた。
うん、ありがと・・・ってちがうのです!
勝手に外に出たことに怒ってるのです!
ご飯なんかじゃごまかされないのです!もぐもぐ。
そうしてると、あいつは懐からなにか甘いものを取り出してきた。
ふぇ!?甘い!
これなら許しても・・・だからちがうのです!
そうゆうのじゃないんだよ!
ダメだこいつ、なのです。
わたしのことを食欲しかないと思ってる。
そんなことないんだからね!
信じられない、って目で見られたのです。失礼な。
・・・つられてしまうのは仕方ないと思うのです。
こっちを見てニヤニヤしてるのです。
ちょっと強めに蹴りを入れてやるのです!
三日後、クレア様の訪問を受けた。
心当たりは無いのですが、敵対する者には容赦ないと言われるのがクレア様なのです。
それでも後ろの二人は助かるようにしないといけないのです。
何もされなかったけれど、出て行かなきゃいけなくなったのです。
でも、死ぬよりはましなのです。
ここを離れるのも辛いけど、3人一緒なら大丈夫なのです!
ゴブリンの襲撃を受けた。
中級とはいえ百匹くらいいるのです。
いくら雑魚とはいえ守りながらだと難しいかもなのです。
娘だけなら連れて逃げられるのです?
・・・そんなことはできないのです!
あいつは娘を守って攪乱に徹してくれてるのです。
なんだかんだ言いつついいコンビだと思うのです。
ダメなのです。数が多すぎるのです。
守れないかも、という思いが頭をよぎるのです。
家族なのに。守ってあげるって誓ったのに!
わたしが、皆を、守るのです!
なに?力がでてくるのです?繋がりを感じられる。
これならーーーいけるのです!
ゴブリンを倒しきったと思ったら新手が出てきたのです。
それも下手したら私と同じくらい強いのです。
でもーーー今のわたしならいけるのです!
そう思った瞬間矢が飛んできたのです。
驚いたのです。
でもそれだけなのです。
まだ、大丈夫なのです!
まわりを見る。そして驚いた。五十近い数の上級のゴブリンがいるのです。
繋がりは残ってるのです。
大丈夫、守ってみせるのです。
彼がどこかへと走っていくのが見えたのです。
ばかっ!
一カ所にいてくれないと守りきれないのです!
矢が飛んでいく。わたしでは追いつけない。
ああーーー。
信じられないのです。
彼は無事だったのです。
それどころか伏兵を見つけてくれたのです。
あいつへと魔法が飛んでゆくのが目に入るのです。
わたしでは追いつけないのです?
ーーー守りたいーーー
そう思った。ただ、ただ、そう願った。
娘だけじゃない!
彼だって絶対にわたしが守って見せるんだから!
何かがカチリとはまった気がしたのです。
彼に対して抱いていた想いにも気づかされるのです。
彼との間にも繋がりが生まれる。
そして体は軽くなり力があふれてくる。
わたしは伏兵を蹴散らし、魔法を防いだのです。
彼の驚いた顔が面白かったのです。
そのままゴブリンの群へと突っ込んだ。
今なら、何だってできる気がした。
体が熱い。
久しぶりに感じる痛み。
でも守れたかな?
視界に入るのは彼の顔。
良かった・・・。
彼との繋がりを強く感じる。
彼に言葉を伝えれるようになっていたけど、そんなことにも気づかない。
むしろ、わたしの素ーーーお母様に良家の娘らしくなさい、と言われて矯正されていた話し方も引っ込んで、素直な言葉がでてくる。
彼ーーーショータの腕の中に抱かれている。
わたしの今までを振り返る。
思い出すのはここ1ヶ月の間のことばかり。
楽しかった、嬉しかった、幸せだった。
ーーーだってこんなにも満たされてる。
名前もぴょん吉じゃなくてふーこにしてもらった。
ショータの中でわたしの評価高かったのが恥ずかしい。
そうだ。
最後にあれだけは言っとかないと。
こんなわたしの素直な気持ち。
ショータ、大好きだよ。
なおこの後そのまま生きてて恥ずかしさで悶え死にそうになった模様。
最後に一言。
筆者はハッピーエンドが大好きです。
誤字脱字等ありましたら報告お願いします。
よろしければブクマ、評価の方お願いします。




