第十三話~四天王会議~
だらだらと会話をしつつウルフの里へと向かった。
できればふーこの故郷も見に行きたいな、なんて思いつつのんびりする気まんまんだった。
結局、僕達はバルトの背に乗っけてもらっていた。
ぴょんぴょんするのがうっとおしかったとのこと。
さすがに速い。安定してこの速度が出せるならここまで来るのももっと楽だったのにと思う。
狼の里へと着いたがなんにもなかった。
そりゃそうだ。いくら知能があるといっても、狼は家を建てたり道具を作ったりなんかしない。
理由を聞いたら作ったところで自分達の爪や牙より便利にはならないとのこと。
そりゃそうだ。
ご飯は生肉をご馳走になった。
さすがに生肉は厳しいので木を集めて火をつけたら魔法を使えるのかと驚かれた。
どうやらウルフでは魔法を使えるものはほとんど生まれないらしい。
ふーこいわく、ラビのところではもっと一般的だったから種族によって差があるのだろう。
あっ、ちなみに雪のご飯は僕がとってきたおいしそうな草盛り合わせです。
◆ ◆ ◆
ちなみに、バルトの件だが当然騒ぎになった。族長の娘でもあり里の人気者らしい。
今は族長の手前、何も言ってこないが不満があるのが丸わかりだ。また、決闘だ!なんてことにならないのを祈るばかりだよ。
夜、改めてシルバーウルフさんと何が起こったのか話し合った。というか、森の中に急に現れたことは知っているらしく最初から全部話すこととなった。
トレントのこと、ふーことのこと、シャボン玉の件のこと、クレアにあって追い出されたこと、その途中でゴブリンに襲われたこと、そしてここまでの道中について。
当然、ゴブリンキングの実力やその編成、そしてオリジナルスキルを使ったことまで。
一番興味を引いていたのはここまでの道中での魔物との遭遇率だった。ちょっと意外。
というのも、本来ならそこまで遭遇率は高くないとのことだ。
もともと神殿(仮)があったところくらいの出現率が普通なんだそうだ。
シルバーウルフさんが走って一時間程度だと言っていたので、おそらく30キロあるかないかといった距離だから、一度か二度程度の遭遇はあるだろうと言っていたが、最低でも10回はエンカウントしている。
そのたびに蛇行して着くのが遅くなったのは仕方ないとおもう。
そのことを言うと厳しい顔になって面倒なことになるかもしれない、と言われた。
このような事態にならないようシルバーウルフたち四天王が魔力溜まりを管理しているはず、らしい。
「もともと、この島は魔力が薄いのだ。
そこでこの地にやってきたうしがめ様が魔物によって弱いものが虐げられるのを防ごうと四箇所の魔力溜まりから生じる魔物を圧倒的強者によって狩り、安全に暮らせるようにしようとしたのだ。
最初はうしがめ様一人だったが、クレアが生まれてトムが生まれて最後に我がこの島に流れ着いた。
クレアは最も広い範囲を受け持っているからこういうことがたまにあるのだ。」
魔物にもしがらみがあるのか。案外大変なんだな。
「でも、なんで一番広い土地をクレアに与えるんの?それこそ言い出しっぺのうしがめが管理すればいいよね?」
「それはあいつの土地が自由を掲げているからだな。
うしがめ様とトムの土地は殺生が禁止されている。
草食の魔物のみが集まり楽な生活をしていると聞く。
一方我の土地では意思あるものが集まり、集落を作りそこは攻撃してはならぬと定めた。
それもこれも我に力が足りないからよな。
クレアの力は圧倒的だ。普通なら完全な自由など寝首をかかれるのが怖くてやってられんよ。」
〈どこへ行ってもお家だったら安全だったのです。ゆえにほどほどの自由を求める者はこの土地に集まるのです。
ただ、窮屈でもあるので攻撃的な魔物のほとんどはクレア様の土地に移るのです。〉
「まあ、あの広さを一人で見るのは無理があるからな。今までにも何度かそういったことは報告されたことはあるし、四天王合同での狩りもしたことがあるぞ?
オーガが出たという噂がたったときもあったな。
まあ、おそらく今回も注意を促して少し視察をして終わりだろう。
そのためにも一度集まりがあると思われるから、お主にも来てもらうぞ。」
「分かったよ。
ゴブリンキングがいたっていう証言を与えればいいんだね?
あと追い出されたことに対しては何もないの?」
「それに関しては何も言えん。危ない力を持っているからと、即断で殺されても文句は言えんからな。
それが自由というもの、だと。」
殺す権利はあるけど殺される義務もあるってことかな?ずいぶんと野蛮・・・いや、こっちの世界ではそれが普通なのか。
「それが終わったらここにいてもいい?行くところがなくなっちゃうんだよね。」
「まあ、よいぞ。お前なら身内に引き込んでも問題はなさそうだ。」
「そんなもん?
あっさりしてるね。」
「娘が認めた相手でもあるしな。」
そうだった。
なんだかなあ。
たしかにこの島は平和だ。けど他の人間にもあってみたい。
「別にここにずっといなきゃいけないわけじゃないよね?」
「そうだな。種が違えば不便なこともあるだろう。
そこらは自由だな。
もともと去るものは拒まず、だからな。」
なら当面はスキル上げかな?
その後のことはとりあえず放っておこう。
◆ ◆ ◆
この3日後、僕達は四天王が集まるという会議へとつれてかれた。
それまでの2日間は狩りの手伝いをしてたよ。ただ、スキルを手に入れるためにはとどめをさす必要があって、今の僕では攻撃力不足だ。
武器になる物を用意したほうがいいかも。
会議も面倒くさいけど、危ないことはないと言われていたから僕は特に何も考えずに雪と一緒に出かけた。
もちろん移動はバルトに乗って。なんだかんだ言いながらも移動手段になってくれるのでありがたい。
集合場所は山のふもと。ちょうど花畑の近くに流れていた川の上流らしい。
さて、どんな話をするんだろうと少し楽しみになっていた。
山の麓はちょうど島の中心部らしい。
バルトに乗って一時間ちょっとだからえーと、だいたい20キロくらい?
車とか使えば20分で着くと思ってしまうのは現代人の性だろうか。
集会場所はなぜか木でできた東屋みたいなのがあった。
だれが作ったんや、これ・・・。
「すごいだろう。うしがめ様が魔法を使って建てたらしいぞ。中にはわざわざ席まで作ってあるのだ。」
魔法すげえな。
人間なんかどんな建築物を建ててるんだろう。
〈にしても、一番乗りなんですね。もう少し遅くても良かったのでは?〉
セカさんが言うことじゃないよね・・・?
実際集合よりは早くきてるらしい。まあ、言い出しっぺだからね。
〈暇なのです……。バルトちゃんには悪いけどわたしの方が速いのです……。〉
僕からしてみれば十分速いんだけど。
なんでこの二人はここまでマイペースなのかね。
目を回してる雪が可愛く思えてくるよ。・・・もとから可愛いけどね!
待つこと10分。
うしがめさんがやってきた。
ちょうど向かい側に座るようだ。
さらに10分。
今度はトムホークさんだ。僕たちから見て左側に座る。
30分がたった。
とっくに集合時間はすぎている。
クレアはまだこない。
集合時間から遅れること一時間。
ようやっと現れた。
鳥が。
前にも見た極彩色のオウムだ。ひょっとしてこっちが本体なの?
〈そんなワケないでしょう。これはにわかにに怪しくなってきましたね。〉
本人ではないけどこれで代表はそろったね。
ちょうど東屋の四角にあわせて席が作られている。西がシルバーウルフさん、ついでに僕たちも。
他は誰もつれてきてないけどいいんだろうか。
ちなみに、僕たちの後ろに川が流れてる。湧き水だそうでとってもきれいだ。
向の東側にはうしがめさん。亀の体に牛の頭・・・何回見てもシュールだ。
北側にはトムホークさん。かなり大きい。羽の一枚一枚がきらきらと光っている。ただの羽ではないのだろうか。
南側にはクレア・・・のはずが、今は前に見たオウムがいる。
「おいおい、クレアはどうしたっちゅん。この会議は代理は認めてねーちゅんよ。」
これはトムホークさんのセリフ。なぜ鷹なのに「ちゅん」なのだろう・・・?
「これはこれは皆様。あいにくながら主はさっきまでゴブリンの残党狩りを行っておりまして。
すでに出発しておりますからすぐに着くかと。」
これはオウムの言葉。残党狩り?あれで全部じゃなかったのか?
にしてもこいつの言葉はきれいに聞こえるな。他のと違って翻訳時の雑音がほとんど入らん。
〈群を作る以上非戦闘員はでてくるかと。どれくらいの規模の群だったのかは分かりかねますが。
ゴブリンは繁殖力が強いので一匹残らず始末しないといけませんからね。〉
ふーん、案外ちゃんとした理由だったんだ。
「それにしてもお前たち、少し弛んでおらぬか?キングレベルの個体が生まれるなら最低でも五年、普通に考えるなら十年はいるだろう。
その期間の間、一度も気づかなかったのか?」
これはシルバーウルフさん。ウルフさんには細かいことをすでに伝えてあるからね。
「なにー!キングっちゅんか?それを群ごと倒すとはさすがはクレアっちゅんね。
あれ?でも召集かけたのはシルだったちゅんよね?どういうことっちゅん?」
「ふむ、キングが出たというのは本当か?確かなのだろうな。」
これはうしがめさん。
うしがめさんは僕が鑑定を使えることは知ってるはずだから具体的な証拠をだせってことか?
「そうですね。少なくともキングの他にジェネラルが四匹、ナイトが16、その外上位個体が20ほど。」
「おいおい!なんでそんなに細かくわかるっちゅん!
というかなんでお前がここにいる・・・そもそもお前誰っちゅん?」
「「「「・・・。」」」」
まさか忘れられてるとは。シルバーウルフさんもうしがめさんも「え?」って顔してるよ。
まあ、ここは自己紹介をしておこう。詳しい話もその方がしやすいだろう。
〈全部ばらすつもりですか?〉
いや、さすがに大事なところは言わないよ。
転生したってことと、直接の身体能力に制限がかかってるってこと、そのかわりに鑑定が使えるってことくらいかな?
ふーことのことは、うん、正直に言おう。
良いよね?
〈いいのですよ。もう死んでるのですしね。〉
ということで説明タイム。僕に関してざっと説明した。
さすがに神様だとか転生だとかは胡散臭そうな感じだったけど。バルトはなんかすごい!って目で見てた。純粋か。
鑑定に関しては驚かれた。やっぱり見るだけでステータスが分かるのはやばいらしい。
確認とのことで全員分のステータスを鑑定させてもらった。結果はOKとのこと。
前回見たときと変わってない部分は省略させてもらいます。
基本、agiのところが見えるようになって、あとはオリジナルスキルかな。
うしがめ lv28
agi106
オリジナルスキル「魔装」
シルバーウルフ lv25
agi425
オリジナルスキル「限界突破」
トムホーク lv23
agi265
オリジナルスキル「魔力念動」
マジカルパロット lv24
hp960 mp1200
sp480
atk72 def72
int120 min120
dex120 agi120
オリジナルスキル なし
パロットさん代理で来たにしては弱すぎない?
そんな目で見てると、
「私は武力というより頭をかわれているのです。
というよりも、クレア様と話ができるのは私だけなのです。
クレア様はそのお力の代償に言語能力が乏しく、ちゃんとしたスキルを持っている私以外では意志疎通ができないのです。」
とのこと。文官なんだね。というかこの前と態度が違いすぎるでしょ。猫かぶりか。
いや、今は後ろに権力がないから威張れないのか。ス○夫タイプだな。
そのタイミングでクレアさんがやってきた。
来て早々だけどパロットさんになにか言ってる。
「ふん、ーーーでなによりーーーー。計画ーーーー。
ーーーーー準備ーーー。」
ほんとだ。所々しか理解できない。
「ええ、皆様。クレア様は遅れて申し訳ないと言っております。そうだ、ショータ様、クレア様にも説明のため鑑定してみてはどうでしょう。(ーーーー。ーーーーー。ーーーーーーーーーーーーーーーー。)」
なんだ?急に言葉にあわせて雑音が入ってきたぞ?
まあいい、とりあえず鑑定してみよう。
クレア lv53
agi265
ユニークスキル 休眠
あれ?オリジナルスキルじゃなくてユニークスキルになってる。
どうゆうことだろう。
とりあえず自己紹介も終わり、本題に入った。
ゴブリンに襲われふーこが戦ったが、数が多く不利になったこと。
ユニークスキルのおかげで逆転したと思ったらキングがでてきてさらに混戦になったこと。
ふーこのユニークスキルが強化され、勝てると思ったがキングのユニークスキルによって負けたこと。
キングはユニークスキルの反動で動けないところを僕が倒したこと。
さすがにキングがユニークスキルを使えることについては驚いていた。
どうやらあの場所にいたもので受け取ったのは6人だが、この島にいても来なかった場合、受け取っている可能性があるということが分かったからね。
ちなみに、クレアさんは聞くこともできないらしく、パロットさんがずっと訳してた。
なぜか雑音が入るようになったけど。
「結局、どうするのだ?いい加減クレアも土地を減らすか?
そこまで魔物がいるわけではないんだろう?」
「そうは仰られても自由を求めにくるものはかなり多いのです。
管理されているならばともかく、管理しないとなるとそれ相応の広さも必要になるのです。」
「やはり前々から言っている通りお主の土地は一度整理した方が良いのではないか?
今回の一件でユニーク持ちが現れたかもしれん。」
大人たちは会話してますねー。
僕?もう役割は終わったので雪と遊んでますよー。
バルトもついてきたけど。
そのときナニカの雄叫びが響いた。
それは話に上ってるクレアさんの土地じゃなくてーーーシルバーウルフさんの土地?
なんでだ?危険な魔物が現れたのか?このタイミングで?
混乱する僕をよそに四天王の皆さんは落ち着いてらっしゃる。
「やれやれ、このタイミングで魔物が沸くとは。ついていない。どれ退治にいってくるよ。
すぐ戻るさ。
ああ、お主たちはついてこなくともよい。ここで待っていろ。」
そう言うとシルバーウルフさんは土地へと戻っていった。
それだけなら、よくあることだそうだ。
そのようにうしがめさんが説明してくれたから僕もすぐに平常にもどった。
その10分後、トムホークさんの土地でも魔物の声が響くまでは。
「同じタイミングで沸くとはっちゅん。本当についてないっちゅん。さっさと戻ってくるちゅんよー」
そうしてトムホークさんもいなくなった。
大丈夫なのか?
残ったのはうしがめさんとクレアさん。パロットさんに僕と雪とバルトだけ。
唐突にうしがめさんが口を開いた。
「で?この茶番はいつまで続けるつもりだ?なにがしたいのかは知らんが・・・ろくなことにはならんぞ?」
その言葉を聞くとパロットさんは急に言葉使いを変えた。
「おいおい、つれないねぇ。こっちはもう何年も準備してきてるってのに。」
「ふん、お前らの企みなど筒抜けだ。悪あがきはよせ。お前らではあの二人に勝てる人員を用意などできまい。」
「さすがに余裕がすぎるんじゃないですかねー。こっちには人質だっているのに?」
人質?それって僕らのこと?
「それがどうした。私には関係のないこと。」
「ちっ。ぶれないねー。まあいい、クレア様やっちまいましょう。」
するとクレアさんは腕を振った。
その対象はうしがめさんーーーではなく、僕だ。
蚊帳の外にいたと思っていた僕はその一撃をかわすことなどできず、思いっきり吹っ飛んだ。




