第十一話~これから~
少しセカさんから魔法の説明を聞いていた。
魔法で持ってるのは砂煙、クリエイトウォーター、結界魔法、回復魔法の4つか。
〈蛍火は火系統魔法の中に含まれます。mpを消費するのは魔法です。もうお忘れですか?〉
はいはい、覚えてますよーっと。
ふーこが魔術を使えるのが割と意外だね。持ってるの珍しいんでしょ?
〈まほーとかまじゅつとかよく分からないのです。とりあえず敵が倒せるならいいと思うのです?〉
発想が脳筋だよ・・・。
ん?子うさぎちゃんが起きそうだ。
というか、この騒ぎの中ぐっすり眠ってたの?
〈マスター、そのままでいいんですか?〉
なにが?なんか問題あったっけ?
まわりを見渡す。目には入るのはゴブリンの死体、死体死体、そしてふーこの亡骸・・・ちょっ!
やべっ、どうしよう。
〈別にそのままでいいと思いますよ?〉
脳筋うさぎがなにか言ってる。
良いわけないでしょ!
生まれて1ヶ月で母親の死体を見たら一生もんのトラウマだよ・・・。
とりあえず僕の後ろに隠しておこう。
「ん~。おとーさん~?その耳なーに~?」
耳?別に何も変なところは・・・ってなにぃ!
うさ耳になってる・・・だと・・・。
なぜに!
というかこれ誰の声?
セカさんじゃない、ふーこでもない。
〈娘の声に決まっているじゃないですか! ショータは何を言っているのです?〉
どゆこと?
どうやらうさ耳になってるらしい。やばい、現実を受け止めきれない。たぶん、ふーこの魂と接続しているのと全魔物要素が重なった感じ、らしい。
声の方の原因は「言語理解」らしい。これがあれば違う言語でも聞き取れたり話せたりするらしい。
・・・あの亀が持ってたのもこれか。
いや、おとーさんってなに!?僕、父親になった覚えないんだけど!
〈えーと・・・。色々とあったのです。うん。仕方なかったのです。
理由は・・・あとで話すから。〉
嫌なら説明はいいよ。お父さんになんてなった覚えがないのに呼ばれて驚いただけだから。
お父さんか・・・。いい響きだ。
こんなにかわいい子にお父さんと呼ばれるとは。
そういえば、名前があった方がいいよね。なにがいいかな~。うさ吉とかは・・・
〈ショータ?何考えてるの?そんな名前本気でつけるつもり?死にたいの?〉
ふーこが怖い!なに?そんな駄目なことした?
〈マスター、この子は、いえ、この子も雌ですよ。というか確認くらいしましょうよ・・・。〉
oh……、またやらかすとこだった。
〈どっちにしても、ショータじゃなくてわたしが決めます!ショータはちょっと黙ってて!〉
はい!
・・・あれ?おかしいな。なんか尻に敷かれている夫の気持ちを味わった気がする。
〈白い毛・・・儚い感・・・・・・。よし!決めました!この子の名前は雪です!分かりました?〉
どことなく変な名前で呼ぶなという気持ちを感じる。
はいはい、お母さんの方針に従いますよ。
「雪。お前の名前は雪だ。お母さんがつけてくれたんだぞ?」
「なーにー?おとーさんがなにか言ってくれるのはじめてだね~。でもなんて言ってるかあんまりわかんないや~。えーと、ゆき?がどうしたの~?」
あれ?上手く伝わってない。スキルのレベルが足りないのか?
「ところで~おとーさん。おかーさんは~?」
!!!
どうするの、ふーこ?
〈正直に言うのがいいと思うのですよ?
たぶん隠しきれないと思いますし。わたしの娘だったらこれくらい大丈夫なのです!〉
確かに隠し通せる気はしないけど。でもまだこんな小さいのに。
「おとーさん?どーしたの?
泣きそーな顔してるよ~?」
雪にまで心配されてしまったか。
よし、覚悟を決めろ。もし、雪が傷ついたとしても僕が癒やしてあげなくちゃ。
おとーさんとしては当然だろ?
「雪、これからさ、嫌なことがあるかもしれない、というかほぼ間違いなくあるんだけどさ、おとーさんに思いっきり甘えてもいいんだからな。
おとーさんは雪のことが大好きだから。」
〈大好きだなんて・・・雪うらやましいっ〉
ふーこさん?今大事なとこだから。
というかあなたのことだから。なんで本人がそんな暢気なんだよ。
「なーに~?おかーさんになにかあったの~?」
僕は雪をだっこすると意を決して振り向いた。
「え?おかーさん?どうしたの?血がいっぱいで・・・。おとーさん!おかーさんは大丈夫なんだよね?すぐに元気になるんだよね。きっとまたお話してくれるんだよね……っ。」
雪が僕を見てくる。雪の望む答えは返せない。
僕は首をゆっくりと振ると雪を抱きしめた。
「ううっ。おかーさーん!いやだよー!
死んじゃやだーー!
ぐすっ
またわたしと遊ぼうよ……。
おかーさん……。」
雪……。ごめんな。
その後三時間にわたって雪は泣き続けた。
しょうがないと思う。
僕は肉親の死にあったことないからわかんないけどもし、あんな兄貴でもいなくなったら泣くんだろうか。
そんなことない気がするな。
今、雪は僕の腕の中で眠ってる。
泣き疲れたのだろう。
ふーこ、大丈夫?
〈ええ、大丈夫なのですよ。はい。べ、別に泣いてなんてないですし。子供じゃないんですから!ただ、こう、我が子があんな風なのを見ると・・・〉
大丈夫なのかな。このままだとよくないよ。
〈わたしが姿を出せればいいんですけどね。そうしたらすぐに収まるでしょうに。
それよりも!ショータは早く移動しなきゃいけないのではないですか?クレア様はやるといったらやる御方ですよ?〉
そっか、その問題もあるんだっけ。
実際ふーこはどうしようとしてたの?
〈わたしの故郷に帰ろうと思ってました。そこはシルバーウルフ様の管轄なので〉
じゃあ、そうしようか。どれくらいかかるの?
〈別にわたしのところじゃなくてもいいのですよ?
わたしが取り次ぐってこともできませんし。
結構遠いですよ?たぶんうしがめ様のところの方が近いのです。〉
いいよ。ふーこの故郷も気になるし。
(うしがめとはあまり会いたくないし。)
〈そうですか・・・だったら境界まではわたしの足で二時間くらいだったのです。
今のショータなら1日あればつきますね。〉
そっか、だったら結構余裕はあるね。
なら、ふーこのお墓を作っておこうと思うんだけどどこがいい?やっぱり故郷の方がいい?
〈お墓ですか・・・。〉
あれ?そういった文化はない?
〈私たちは基本的に食べられて死にますからね。なかなかお墓なんてものなかったですから。〉
だったら僕のお気に入りの場所でいい?
〈お気に入りの場所なのですか?どこなのです?〉
花畑だよ。結構洞窟から近いところにあったやつ。
川辺にあってね。
蜜とるのによくお世話になってたな~。
〈どうやって蜜なんてもってるのかと不思議だったんですけどね。限りがあると思ってたからあまり食べれなかったのに。〉
いや、十分食べてたよ・・・。
◆ ◆ ◆
花畑にて。
〈久しぶりですね。こういう風に花を見るのは。〉
あれ、意外。
てっきり、結構好きだと思ってたんだけど。
〈花は好きですよ。ただ、少し昔を思い出すので、ちょっとつらくなっちゃうんです。〉
やっぱり場所変えようか?
あまり良い思いでがないなら無理することはないよ?
〈いえ、いいのです。ショータと一緒にいれば大丈夫なのですから。〉
ちょっと恥ずかしいね。
〈なのです。だけど本心なのですよ?〉
ふーこ・・・。僕も・・
〈ちょっとそろそろイチャイチャするの止めてもらえます?さすがに限界なんですけど。〉
ブーーー!!
セカさん!?なにしてくれてんの!?
〈むう、もう少しだったのに・・・〉
〈さすがに自重してください。イチャイチャとしやがって・・・。独り身の身にもなってくださいよ。〉
いや、スキルにそういった概念ってあるの?
〈実際にはできなくても感情はあるんです。
というか似たような状況でしょうに。ふーこ様だってもう体は無いわけですし。〉
〈むう、そうだけど!〉
結局うやむやになってしまった・・・。
というか僕、ふーことの関係に疑問を持たないくらいには人間やめてきてるのか……。
・・・ふーこはかわいいから仕方ないよねっ!
◆ ◆ ◆
ふーこの墓はそこまで手の込んだものにはできなかった。
せいぜいがふーこの亡骸を埋めてその上に墓石がわりの石を置くくらいだ。
〈十分なのです。もともと死んだところでなにも言われないのが普通なのですから。その気持ちだけでいっぱいなのです。それに、こうしてお話しもできますし!〉
そう?やっぱりそこら辺の感覚が地球とは違うんだねぇ。
お供え物は花よりも蜜の方がいいかな?
〈失礼なのです!別にそこまで食い意地がはってるわけじゃないのです!〉
・・・ならこの蜜はもらっちゃおうか。
いらないって言ってるし。
〈・・・。〉
最近どこかのうさぎさんが食べてたからあんまり食べれなかったしなー。
〈・・・そういえばラビには近しいものが亡くなったときに甘いものを食べるという習慣がありますね。どーしてもというなら蜜を供えさせてもいいのです。〉
素直に欲しいと言えばいいのに。
〈べ、別に欲しいわけじゃないのですし?まあ、習慣だから仕方ないのです。そう、わたしの意思じゃないのです。〉
本音は?
〈甘いのが食べたいな♪・・・しまったなのです!〉
閑話休題
いろいろと時間が経ってしまったが、さっさと移動をしなくては。
〈マスター達がイチャイチャしてるから・・・。〉
何のことやらさっぱりだよ。
で、こっちの方向でいいんだよね?
〈はい、そうなのです。まっすぐ走ったことはないですから細かくは分からないのです。たぶん、大丈夫なのです。〉
あれ?おかしいな。
急に不安になってきた。
大丈夫・・・だよね?
そうだ、出発する前に雪を起こさないと。
お墓のことくらい教えておかないと。
「ここに、おかーさんがいるの?」
「いや、おかーさんはな、もういないんだ。
雪を守るために頑張ったんだぞ?そのせいで会えなくなっちゃったけど、満足してるみたいだから。
ほら、悲しそうな顔をするな!おかーさんも見てるぞ?雪の元気な姿を見せてあげような。」
雪はまだ受け入れきれて無いだろうけど今度は泣かなかった。
理解できてないところもあるんだろうけど、泣かないで、という気持ちは伝わったみたいだ。
なんだろう、こう頑張ってるのを見てほんわかしてしまうのは仕方ないよね。親バカなんだろうか。
「ねー、おとーさん。おとーさんはいなくなったりしないよね?ぼくとずっと一緒だよね?」
「ああ、ずっと一緒だからな。安心しろ!」
ところで、一人称はぼくなんですね。どっから覚えてくるんだよ、そうゆうの。
・・・僕か。
それじゃあ、出発だ。
異世界にきて1ヶ月と半分くらい。
長いようで短かった。トレントに囲まれたり、ふーこに助けてもらったり、3人でシャボン玉を見たり。
色々なことがあったけどこの地を離れなければならない。
さよなら、ふーこ。君との思い出は決して無くならずに僕の中で輝き続けるから。安心して見送ってくれ。
雪を抱きかかえる。そうして僕は走り出す。まだ見ぬ土地に向かって。
〈わたしまだいますからね!?死んでないですからね!?〉
〈なんだか格好つけてますけど、せいぜいが徒歩で1日くらいの距離ですからね。〉
「おとーさん~?何をぶつぶつ言ってるの~?」
総パッシングをくらった。
恥ずかしさのあまり全力で駆け出す。
目から何かがこぼれてきた・・・。
二十秒後、そこにはsp切れで倒れている僕がいた。
「どうゆうことだ。」
ポツリと僕はつぶやく。今はまだ、鑑定とか糸とかのspを使う系のスキルは使っていないはず。
〈(クスクス、引っかかってやんのー。わざわざ説明しておかなかったかいがあるってもんよ。)〉
〈・・・みたいなことをセカさんが言っているのですけど。〉
〈(゜o゜;)〉
被告人、何か言うことは。
というか、なぜに顔文字。
〈(>_<)〉
よろしい。
・・では判決を述べる。
〈m(__)m〉
では、一月の間甘味無しの刑で・・・
〈異議あり!です!〉
〈(゜〇゜;)〉
(゜〇゜;)
・・・では弁護人、意見をどうぞ。
〈この人はどうでもいいけど、わたしまで甘いものが食べれないのはおかしいのです!ゆえに刑罰の変更を求めるのです!〉
いや、でもそれくらいしかできないし……。
そもそも弁護になってないし……。
〈わたしが直接やるのです?〉
〈(゜ω゜)〉
・・・それは、こいつに直接痛い目にあわせられる、と?
「そうなのです!だから、甘いもの抜きは止めるのです!〉
いいよ!むしろどんどんやっちゃって!
その分甘いもの多めでいくから!
〈やりました!というわけでセカさん?ちょっとこっちに来ましょうか?」
〈(*⌒▽⌒*)〉
〈あっ、逃げるななのです!〉
・・・結局、頭の中が騒がしいことに変わりはないんだね。やれやれ。
閑話休題
さあ、知ってることをキリキリ吐け。
〈はい、ぢつは補正とか強化系のスキルでもspを消費するんです・・・。黙っててまぢですみませんした!〉
他に黙ってることはナイヨネ?
〈はい。〉
まったく、なんでこんなサボリ癖のある人格になったのか・・・。神様のせいか?
それで?どのくらい使うの?
〈能力値を上げた分だけ一分ごとに減っていきます。マスターは300近く上昇させてたので一分持ちませんね。〉
はぁ!?
また、そういった落とし穴が有るのかよ……。
しかもspの量って増えないんだろ?
どれだけいじめれば気が済むのかね。
〈はっはー!そんなマスターの悩み、私が解決してみせましょう!
まず、根本的に全力を出し切らないというのがあります。スキルによる強化を抑えればそれだけ消費も少なくなります。
また、マスターしかできませんが「木のふり」のようなsp回復系のスキルを取得すればいいのです。
そして、私がlv6になったことでsp、mpの消費を1/10にすることができるようになったのです!
〈〈いや、最初からやっておけよ(おきなさいよ)〉〉
とりあえずセカさんにもう一度制裁がおこなわれる
のは確定した。




