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終わりなき世界で  作者: 緋島 奏
第一章  東京都編
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第一章 八 帰還と報告

 教室の扉が勢いよく開く。


「これでここが…。」


 本物ではないことがわかっただろう、と言いかけて天斗は大きく目を見開く。


「な、なんだよ。あれ。」

「…宝箱…か?」


 思い切り開け放たれた教室には天斗たち、クラスメイトの道具どころか掲示物も一切なかった。しかし、空の教室の中心に一メートル四方の青色の箱が置いてあった。金色の縁取りがしてある、探索型のゲームによく出てくるような見た目の箱だ。その見た目故、明人が宝箱だといったのはあながち間違いとは言えない。


「…天斗、お前がここは東京じゃないって言ったのは正しかったよ。でも…さすがにこれは予想できなかったか。」

「…ああ。」


 天斗たちは驚きを隠せずにいた。こちらの世界に来て初めて、何らかの進展があったような気がしたのだ。


「これって、試練に何か関係あるかな?」

「一応みんなのところに戻って、試練の文の解読と合わせて話し合ったほうがいいんじゃね?」

「確かにな。戻るか。」


 天斗は佑の意見に頷いて同意を示してから、教室の扉をそのままにして、来た道を戻り始める。


            *    *    *


「おー、仲井達。一体どうしたんだ?」


 天斗たちが校庭まで歩いて戻っていくと、圭介含めるサッカー部のメンバーらが声をかけて来る。


「…それなんだけどさ、高崎。…何というか、宝箱があった。」


 将の脈絡のない説明に圭介はいぶかしげな顔をする。無理はない。さっきの将の説明だけを聞いたら天斗たちも理解できない。逆に理解できる者はいないだろう。


「…まあ、いいや。みんなが揃ってから詳しく話してくれ。実はさっき中原と飯田の二人と合流したところなんだ。」

「ほんとか?」


(やっと来たか。)

 天斗は壮真たちの合流によって、緊張の糸が切れた。心から安心とは言えないが、少なくとも今までよりははるかに楽になった、はずである。


「みんな、本当に遅くなってごめん。」

「いいんだ、気にするな壮真。」


 啓太と会話する壮真の姿はどこも変わりはなかった。ケガすることもなく無事に到着できたようだ。


「それじゃ、俺が帰ってきて間もないけど、いくつか報告したいこともあるから話し合いをしよう。」


 壮真がまとめるのに、もう誰も何も言わない。慣れてきたのか、認めたのか、どちらかは分からないが。

 クラスメイトは壮真の声に、大きな円を作って校庭に腰を下ろした。ちょうどクラス全員で円陣を組んだような形だ。


「えっと、まず改めて謝る。遅れてごめん。」


 その言葉に零も慌てて頭を下げる。


「もうそれはいいから、中原。」

「そうだぞ。やっと全員がそろったんだから先に進めないと。」

「ああ、そうだな。」


 壮真はゆっくりと頭を上げる。それからクラスの円にさっと目を走らせて天斗を見る。


「天斗。まず、お前の報告からでいいか。学校内に行ってたって話だけど。」

「…わかった。…みんなも知ってると思うけど、俺と明人、佑、それに将はさっき校舎内に入った。理由はまあ、俺の単なる思いつきなんだけど…。わかったことはここが、日本から消滅した東京都ではない、ということだ。」


 この言葉に天斗、佑、明人、将、壮真、零以外が騒然とした。無理もないことではある。ここに来てからすぐの時は、誰もここが東京だと疑ってかからなかったからだ。しかし、誰もなぜわかったのかという旨の質問はしてこなかった。


「てことは、ここは東京都とは違う全くの別の場所ってことか?」

「そうだ。」

「さっき俺の“活動許可証”の周辺地図で調べてみた。ここは、第一演技場というらしい。ちなみにコードネームが、裏・東京。」

「コードネームってなんかくさいな。」

「うん。」

「お前のその地図って、現在地がどこかとかわかるのか?」

「ああ。そうみたいだ。」


 そう言って壮真は天斗のほうに自分の活動許可証の一ページを見せる。


「なんか、現在地が赤い点で示されるみたいなんだ。俺が動けば点も動くっていう謎の仕組み付きだけど。」


 遠くからはあまり見えないが、壮真が嘘をついているようには思えなかった。ここで嘘をつく必要がないからだ。


「なんか、魔法みたいだな。」


 佑の言葉に壮真は笑う。


「確かにそうだな。」

「それはまた後でで。…俺たちが校舎内に入ったときのことなんだけど。もう一つ報告しなきゃならないことがある。俺らはここが本物の東京かどうか、確かめるために自分たちの教室に行ってきた。ここに、圭介には言ったけど、宝箱みたいなのがあったんだ。」

「宝箱? どんなのだ?」


 天斗の報告に、壮真が疑問を持つ。


「ゲームに出てくるようなやつだ。」

「ああ。まったくそのままって言ってもいいぜ。」

「…その宝箱が試練に関係あるかどうかを話し合いたくて、仲井君はこのことを出したってことで言いの?」


 零の言ったことは的を射ていた。だから、天斗は迷いなくうなずいた。


「ああ。その通りだ。」


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