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終わりなき世界で  作者: 緋島 奏
第一章  東京都編
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第一章 一 異世界で

ひんやりとした地面の冷たさに壮真は目を開けた。


「ん、ここは?」


 気絶する前に聞いた謎の声の言っていることが本当ならば、おそらくここは『アンダーワールド』だろう。

 周りに目を走らせると、壮真以外のクラスメイトは未だ目を覚ましていない。ふと、視界の端に先ほどのサッカーボールと思しきものが落ちていることに気づいた。ただ一つだけ違うところが――青白い柔らかな光を放っているのだ。その光は白い大理石のような地面に反射して周りの不思議な色の空間を幻想的に輝かせている。壮真が思わず見とれてしまうほどに。


「おっと、こんなことをしている場合じゃない。」


 壮真は立ち上がった。特にこれといったことが見つかったわけではない。ただ、東京が消えた謎についてもどうにかしてここから脱出しないことにはなにもできない。


「ん?」


 今気づいたが、制服のズボンのポケットに何か入っている。手を入れてそれを出す。


「メモ帳?」


 入っていたのはどこにでも売っていそうな手のひらに乗るくらいの大きさのメモ帳。ポケットには普段何も入れていないし、メモ帳自体買ったことがないので自分の物ではないのは明らかだ。

 水色の表紙を開いてページをめくってみる。


――注意事項  

その一、これは『アンダーワールド』活動許可証です。これを所持して いるときにのみ活動することができます。紛失及び破壊された場合はあなたの記録は抹消され、二度と『アンダーワールド』での活動ができなくなります。


その二、これはあなたのここでの行動により、随時記録の更新がなされます。また、メモとしての書き込みはかまいませんが、記録の削除及び改竄等を行った場合はそれ相応対処を行います。

 

 ここまで読んで壮真はページから目を離す。


「なんだこれは。活動許可証? 意味わかんねえ。」


 『アンダーワールド』に飛ばされただけでも頭の整理が追い付いていないのにさらに謎が増えた。考えなければならないことがありすぎる。

 まだ他にも注意事項がいくつかあったが、読むのは後にして一度ポケットにしまう。


「えっと…まず、授業中にいきなり東京の土地とそこにあったものが俺らのクラス以外の人間を除いてすべてが消滅。そしてそのあとに俺らが謎の声に導かれて飛ばされたのが『アンダーワールド』。ここで動くためにはポケットの中のメモ帳型の許可証が必要、と。」


 これまでのことをざっくりと簡単に整理してため息をつく。整理してもその根元にあるものが全く分からないのだ。

 壮真は頭を悩ませながら周りの様子を見て回ることにした。今の状況では脱げだす打開策すらも浮かばないからだ。みんなのところからできるだけ離れないように歩いて回ることにする。誰かと行ったほうが効率がいいことは分かっていたが、気を失っているときくらい現実のことを考えずにゆっくりしてほしいという思いがあり、起こすことがはばかられたからだ。

 いざ歩き出してみるとどこを歩いているのか、本当に進んでいるのか、実感がない。どこを見ても全く景色が変わらないからだ。ただ違うのは足を動かすたびに離れていくみんなとの距離。それが壮真の感覚の唯一の助けだった。


「…何もない…」


(はあ…。)


 何の収穫もないのに精神的な疲労だけはどんどん着実に溜まってくる。周りには小動物がいるどころか植物すらも生えていない。だからと言って何らかの人工物が設置されているわけでもない。真っ白なタイルのような地面はどこまでも永遠に続いているような気もする。自分たちはここから出ることができるのか、何もできずにすべてが終わってしまうのではないか、いろんなよくないことだけが頭の中を駆け巡る。

 いよいよ精神のダメージも大きなものになってきたらしい。


(いったん戻るか。)

 この考えに至るまでにどれだけの時間を費やしたことか。壮真は歩を進めながら一度直したメモ帳をポケットから取り出しつつ、みんなが気を失っている所まで戻る。


 メモ帳の初めの四、五ページはびっしりと注意事項なるものが書いてある。そのあとに書いてあるものは――


「えっ?」


 壮真が最後の「注意事項その二十」が書いてあるページをめくり目を通し終わった瞬間、次のページに移ったとたんページが巻き戻った。


「はっ? ……いや、違うなページの内容が一ページ分次にずれたんだ。」


 パラパラとページを戻しているうちにその事実に気づく。


「何がどうしたらこうなるんだ? まだこれについても調べる必要があるな。」


(…ん、待てよ、一ページ分のページが進んだということは…)


 壮真は初めのページを急いで開く。そこにあったのは新しく追加された、今までになかったページ――《アンダーワールド周辺地図》という名前の付いた新たな図付きの記述だった。



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