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終わりなき世界で  作者: 緋島 奏
第一章  東京都編
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第一章 十六 天斗の行動 2

「で、あの文はどういう意味のことが書かれていたんだ?」


 壮真の問いに天斗は少し考えるような表情になった。それから顔を上げて思いつめるような顔を向けてきた。


「その前に…お前、俺らがやっていないようなことをしなかったか?」


 突然の天斗の質問には壮真は答えられなかった。何を聞いているのかがよくわからなかったからだ。


「どういうことだ?」

「そのまんまの意味だ。俺らがいないところ、もしくは知らないところでお前だけ何か特別なことをした記憶は無いか?」


 じっと天斗の顔を見ても、答えるべき言葉が見つからない。なぜなら壮真はずっとクラスメイトと協力して何事も行ってきた。それだから、自分だけが何かをやった記憶などは無いはずだ。


(――待てよ。)

 ここまで考えて壮真はたった一つだけ思い当たる節があることに気づいた。


(ほかの者は“試練の試練”を受けていないのか?)

 そう試練の試練とは、ここ、偽東京に来る前に壮真と零が受けたものだ。実際は何と呼ぶかわからないが、試練を受けようにもこれのせいで受けられない、という思いからつけられたものだった。当時の壮真たちは全員が同じものを受けてこちらに来ているとばかり思っていたのであえて口には出さなかったのだ。だが、今も壮真は実際のことは分かっていない。


「…一つだけあるにはある。でも…。」


 壮真は未だにほかの者が受けたのか受けていないのかわからない。


「俺が思うに、お前がその行動をしたっていうのは俺らと合流する前じゃないのか?」

「…。」

「あたりか。なぜ黙っていたのか知らねえけどできれば今後は伝えてほしい。」


 天斗は壮真が隠していたことを怒るわけではなかった。自分の要求を言っただけだった。


「…ああ。俺が、いや俺と零はこちらの世界に移動するときに“試練の試練”を受けたんだ。」


 ゆっくりと壮真は話し始めた。天斗もそれ以上は何も言わずに壮真の話に聞き入り始めた。


「試練に試練ていうのは?」

「試練を受けるために、というか受けるという選択をしたから、この東京擬きの世界に来たわけだろ? でも俺と零はこちらの世界に移動する前にあっちとこっちの中間地点みたいな場所に一度止められたんだ。」


 壮真は自分が思っていたより滑らかに言葉が口から出てきた。皆に言わなかったのはしょうがないとはいえ、悪いと思わないわけがなかった。散々協力だの言っていたが自分ができていなかったことになっているのだ。


「でその試練の試練の内容はどんなのだったんだ?」


 壮真はその時のことを話した。それを聞いた天斗は思った通りだというように頷くと今度は自分が口を開いた。


「中原、お前のメモ帳に何が書いてあったか覚えてるか? あの追加の記述だ。」

「ええっと。」


 壮真は自分のメモ帳の新しいページを開いて内容を確認する。


「…果てなき道を超えし者、大いなる力を得ん。――準備は整った。光の欠片に触れよ。」


 初めて見た時に一度見たのだが、内容までは覚えていなかったのが事実。頭に残っていたのは準備は整った、の部分くらいなものだ。


「そう、その大いなる力っていうのは結局わからずじまいだったんだが、なんとなく全体のものは掴めたと思う。わかったのはそこに書いてある内容と教室にあった宝箱は関係がある。それと大いなる力っていうのはこれから役に立つものだってことだ。」


 内容は分からないとは言いながら、天斗は断言している。つまり何らかのことに確信を持っているのだ。


「てか壮真ですらメモ帳と宝箱が関係あるって気づかなかったんだろ? なんでお前は分かったんだ?」


 隣で黙って話の内容を聞いていた啓太は突然質問した。


「…俺は中原のメモ帳を持っていっただろ? その時おれはずっと手に持っていたんだ。教室に入ったときはあのメモ帳の表紙部分が光ったよ。それで確信したんだ。何か綱アリがあるんだって。」


 天斗の答えに啓太は納得したのかどうかわからなかったが一度頷いて黙り込んだ。


「…話を戻そう。もう一つだけ発見があってな、例の生物のことなんだけどあいつは日が暮れ始めに近い時間帯しか活動しないことがわかった。」


 この言葉に、ずっと黙って聞いていた零を加えて大広間に残っていた他の者まで、ぱっと振り向いたのだった。


(やっぱり、みんな気になってたんだな。)

 話し始めた天斗の声に皆は耳を傾け始めた。



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