第一章 十四 中原 壮真
またまた投稿が遅れてしまってすいません。頑張って間に合うようにしているのですが、どうしても書き終わらなくて。
これからのことも考えて投稿の頻度を三日に一度か、四日に一度にしようかと思います。
体中に力を入れてみるがピクリとも動かない。かろうじて動くのは口と目だけ。しかしそれらを動かすだけでも大変。
「壮真。どうだ? まだ動けないのか?」
壮真が動けなくなって約三十分が経過した。それでも壮真の体は自由になることは無く、むしろ状態はひどくなる一方であった。
「ああ、前より動きづらくなったかも。」
この言葉に話しかけてきた啓太はもちろん、ずっと隣にいた零も驚きを隠せなかった。未だに原因は分かっていない。ここに来てからというもの不自然且つ非現実的なことばかり起きていたので、よっぽどのことがない限りは何とかなるだろうとは思っていたが、今のこの状態だけはどうにもならなかった。体が動かせないとどうしようもないからだ。
ここまで考えて壮真の頭には何かが閃きかけたが結局具体的な形になる前に、抽象的なまま消えてしまった。
「天斗は戻って来たか?」
今の壮真はこれだけが知りたかった。
「まだだよ。」
質問には零が答えた。天斗は一体一人で何をしているのだろうか。自分の思いついたことを確かめようとしているのだろうが、別に日が落ちてからでなく次の日になってからでもいいはずだ。それとも今でないといけない何か、なのだろうか。
「みんなは何してる?」
現在、ここの大広間にはほとんど誰もいなかった。動けなくなってからは人に聞く話でしか状況を把握できないのだ。
「ほかの奴はみんな自由に過ごしてるよ。ま、自由って言っても特にすることは無いからしゃべったりと
かしてるだけだけどさ。」
「そうか。」
「そういえば、さっきわかったことなんだけどさ、たぶんここいいるほぼ全員がお前の指示で動くことに依存しきってる。」
「依存?」
「ああ。誰も自主的に、これからのためとか言って動くやつがいないんだ。お前が動いてた時はそんなことはなかっただろ。」
どうやら中原 壮真という指導者がいなくなってからというもの、クラスメイトたちはこれからのためには動かなくなったということらしい。つまりは指示されるのに慣れて自分で考えようとしなくなったということだ。隣でうなずきながら聞いていた例を見た限りだと啓太と零の二人だけはそのことに気づいていたらしい。
(まずいな…。)
ここに来てずっと動きっぱなし考えっぱなしとはいえ、まだ初日だ。今までになかったことで、精神的・肉体的にに疲弊しきっているのだろうが、ただでさえ明るくない先が思いやられる。
「じゃあ、俺はちょっとみんなの様子を見て来るわ。」
「ああ…、ちょっと待て…。」
壮真は啓太を見送りかけて、慌てて呼び止めた。だが、声が小さかったからか啓太は足を止めない。体が動かないということは忘れていた。
そのことに気づいたのは自分が床に倒れ込んでからだった。
「中原君っ!」
「壮真! どうしたっ? …ていうかお前動けるのか?」
思い切り打ち付けた腕をさすりながら立ち上がる壮真に啓太は当然の疑問を投げかける。
「いや、俺も動けた事には驚いた。さっきまで全く動けなかったのにな。」
(そうだ、それより…。)
壮真は自分の制服のポケットに手を突っ込んで中に入れてある《アンダーワールド活動許可証》を探る。
(やっぱりか…。)
壮真が啓太に聞きたかった事、否頼みたかったことは自分のポケットの中に許可証があるのかどうかということだった。壮真が啓太と会話をしながら動けない理由について考えたところ、許可証内の『これを所持している間にのみ活動することができます。』という記述を思い出していた。そこで自分が動けないのはもしかすると…と考えたわけだ。
「俺の活動許可証がない。いつの間にとられたのかわからないけど、それが動けなかった原因だと思う。」
「中原君、誰かに貸したりした? ほら、中原君のだけ地図が載ってるし。」
「いや、誰にも中身を見せたことも、貸したこともないよ。」
「てことは誰かに盗まれた、てことか?」
「そうなるな。」
(ん? 待てよ。地図…。)
「そっか、だから…。」
「何かわかったの?」
「ああ――」
その時少し離れたところで、物音がした。
「誰だっ。」
物音がしたほう、それは外へとつながる扉がある方向。考えたくはないが、敵対する生き物が入ってくるという可能性も、夕暮れの“生物確認”で考えている。
「天斗…やっぱりと言えばやっぱりだけど。」
「すまねえ。勝手に行動しちまって。」
「仲井君。」
見たところ天斗の様子に変わりはなかった。怪我などもしていないようだった。
「中原君、やっぱりってどういうこと?」
「ほら、活動許可証がなくなってるって言っただろ。しかも俺のには周辺地図が追記されてる。それから、ここからは推測だけど、許可証がそれもそこの地図が必要な人は誰かなって考えたんだ。」
「なるほど…。」
零は素直に驚いているようだった。とはいえ壮真自身も気づいたのはついさっきのことだったのだが。
「そこまで気づいてたのか…。」
「まあ、それはいい。」
「ん?」
「なあ、天斗。一人で行動してここまでしたからには何か収穫があるんだろ? まさかないとは言わせないぞ。」
壮真は天斗に向けて唐突にそう言う。天斗は驚いたような顔をしていたがすぐに元の顔に戻り、にやりと笑って言った。
「もちろんだ。そのための単独行動でもあるからな。」