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終わりなき世界で  作者: 緋島 奏
第一章  東京都編
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第一章 十二 旅館到着

すいません。また遅れました。

 慌てて帰る途中、反対周りをしていた残りの偵察班の者と会ったが、詳しい説明をする暇はないと思い、とにかく急がせた。

 謎の生物は、動きがとても鈍く偵察班たちの足で逃げるのはたやすかった。拍子抜けしてしまうが目の前であの姿を見ると心に余裕がなくなってしまうというものだ。



              *   *   *



 結局反対周りをしていた偵察班に詳しい事情が話せたのは、壮真たちに話す時だった。


「へえ、そんなことが。でも、そうなると今もその生き物は啓太たちを探してるってことになるのか?」


 もしそうなら、今向かっている旅館ではなくもっと離れた場所まで移動しなければならない。


「それは大丈夫だと思う。あいつが近づいてくるときは歩くだけで、でかい音がするから。」

「一応見張り班とか作るか?」

「いや、それはいい。見張りは交代で。数人だけに任せていざとなったときに動けなかったらいけないからな。」


 本当に移動速度が遅いらしくそこまで心配する必要はないらしい。


(近づいたら、わかるって言うしな。)

 そういう生き物が厳しい自然の中で生きていけるのかと思ったが、ここは壮真たちがよく知らない異世界だ。不思議な生態系があるのも納得がいく。


「お、もうすぐだ。」


 すぐ目の前に目的の旅館が見える。なぜか明かりはともっており、場所がわからなくなるということは無い。ここだけが例外ではなく、存在する建物はまるで、本物の東京都の夜であるかのように明るい。


「おれ、ここ行ったことないからわかんないぞ。」

「大丈夫俺もだ。」


 壮真はそう返して、無人の明るい旅館へと足を踏み入れる。

 和風建築のこの旅館は長い間経営を続けている。平日でも休日でも関係なく毎日がほぼ満員で泊まれることが少ないらしい。比較的高値だというのにもかかわらず、雰囲気などがいいと好評だと。そんな旅館で過ごすとなると普通なら気持ちが高揚してしまうものだが、今こういう状況で過ごすとなると話は違う。

 入ってみると木の床や、温かな光で確かに心を落ち着ける雰囲気がある。だが、状況が状況で全員が表情を崩すことなくもの苦しい、硬い表情でいる。


「そんな顔すんなよ、みんな。せっかく休めるんだ。」

「時計ってあるかな?」


 時計がない生活をしてみたいとは思ったことはあるが、時間に縛られる生活に慣れてしまっているので、なんとなくつらい。


「旅館だから探せばあるんじゃないか。」

「それもそうか。――みんな、俺は時間が知りたいから時計を探してくる。みんなも集合をかけるまでは自由にしてていいぞ。」


 壮真は啓太と零を連れて、旅館の探索に出た。探索と言っても学校の校舎ほど広くはない。それにここは電気がつくから特に不自由なく探せるはずだ。


「ついでにここに、何か使える物があるか探すか?」

「そうだな。」


 初めに向かうのは一番近くの客室。中に入ると、やはり人気は無いが設置物等はきちんと整えてある。


「これじゃない?」


 先に進んでいた零が置くから置時計を持ってくる。


「それ、動いてるか?」


 零は一度時計の文字盤を覗き込んで言った。


「えーと、八時に十分。」

「おかしいだろ、その時間。」


 正確な時計が無くても完全にはまだ日が暮れていない。それにいつもの生活リズムを思い出すと、微妙にまだ早い気がするのだ。


「やっぱり?」

「ああ。」

「壮真ー。これは? たぶん時間は合ってると思うぞ。」


 別の客室から持ってきた時計が指すのは六時三十五分。


「それっぽいな。まあ、確信は出来ないけどそのくらいだっていう参考にはなる。」

「じゃあ、これは? 中原君。」


 零があれから急いで客室から出ていき、別のところから啓太に対抗するように持ってきた。


「ああ…。」


 指すのは六時四十分。啓太の時計と約五分ほどのずれがある。


(てか、俺が確認する必要があるのか? 別に誰でもいいと思うんだけど…。)

 啓太と零のおかげで壮真は時計を探す必要はないらしい。


(なんか探すか。)

 啓太と零はあらゆる客室をまわっては時計を見つけて壮真の前に置いていき、少しづつ探索範囲を広げている。これでは動こうにも動けない。

 今いる客室の中を隅々まで探し回って啓太と零を呼び戻して、元の大広間に戻る。結局見つかったのは十六ギガバイトのUSBメモリーが一つだけ。コンピューターがないので、中身の確認はできないが他に何もなかったので、持って帰ることにした。


「えー、みんな…。て揃ってるのか?」


 一度集合を駆けようと思ったのだが、ぱっと見た感じだと全員がそろっているように見える。


「天斗だけ、一人でどこか行ったぞ。」

 隣で明弘がそう教えてくれる。

「天斗が? なんで一人で。」

「知るか、そんなの。ついていこうとしたら一人で行くからついてくるなって言ってさ。ふつうそこまで言われたらついていこうとは思わないし。」


 もともと天斗は一人で行動するような人物だったが、状況ごとの行動の分別はつく人間のはずだ。


「どこに行ったか分かるか?」

「…たぶん、外だ。」


 旅館内の天斗捜索に動き出そうとしていた者たちがその言葉で動きを止めた。


(外…。)

 壮真は何か嫌な予感がした。


次も遅れる可能性はありますが、間に合うように努力します。

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