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終わりなき世界で  作者: 緋島 奏
第一章  東京都編
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第一章 十一 異世界の生物

すいません。遅れました。今後もこういうことがあるかもしれません。

 地が揺れた。土地全体が動いているような、地震のように。


「今度はなんだよ。」


 遠くから大きな音が聞こえたかと思うと、今度は地が大きく揺れたのだ。しかし揺れはすぐに弱まっていき、収まった。


「なんだったんだ? 今の。」


 壮真たちがこちらの世界で初めて感じる、何か大きなものの予感。うまく言葉にできないが、何かがこの世界にはある。


「学校の外からだよな。」

「ああ。偵察の者が無事だといいけど。」

「校舎の外に急ごう。どうせ集合もすぐだし。」


 天斗は冷静に決断した。今ここであれこれ考えていても結局は集合場所に戻らないといけない。その時に何があったかは帰って来た偵察班の者に聞けばいいだろう。

 校長室の探索を切り上げて壮真たちは校庭の中心、集合場所に急いだ。他に探索していた者は皆戻ってきており、解読班は何やら話し合っている。進展があればいいのだが。

 壮真はポケットの中に入れていたシャープペンシルを数本取り出して解読班のもとに近づく。


「どうだ? 進んでるか?」

「うーん、微妙なとこかな。」

「そうか…。ああ矢崎、これ校舎内で見つけてきたからメモかなんかに。」


 一番近くにいた由里に手に持っていたシャープペンシルを手渡す。


「こんなのあったんだ。他にも何かあった?」

「ああ、付箋紙に、水の入ったペットボトルがあったけど。」


 付箋紙はともかく水は何に使うかわからない。だからと言って、飲めと言われても飲まないが。


「それより、中原。さっきの音聞こえた?」


 由里は話題を変える。


「ああ、なんか崩れるような大きな音だったよな。」

「そうなの。私たちにも何があったかわからなくて。」


 外にいたのにと思っているのかどうかわからないが、何しろ初めての出来事だ。わからなくてしょうがない。


「中原っ!」


 遠くからそう叫ぶ声が聞こえて、壮真は振り向いた。日が暮れかけて遠くのほうはよく見えないが、残りそろっていない者たち、偵察班の者たちだ。


「啓太。何があった?」

「こっから少し離れたところででっかい生き物が出た。」

「はっ? どんなのだ?」


 こちらの世界でクラスメイト以外を見たことがないので見てみたい気もするが、急いで走ってきたことから考えるとそういうわけにはいかないのだろう。


「詳しいことは移動しながら話す。とにかく今はどこか休めるところに。」


 壮真は啓太とともに皆のほうを振り向いた。


「みんな、今からあそこの旅館に移動する。今日はそこで休むぞ。」


 学校の左手に見える旅館を指さしながら、結構説明を省いてからそう告げる。壮真と啓太、その後ろを急いで零がついていくと、クラスメイト達はまばらに動き始めた。


「で、生き物っていうのは?」

「ああ、それは――」



                  *  *  *



 冬島 啓太は自分が指示したとおりに、学校の外の南から西にかけてを、東 亜美と横手 幸の二人とともに歩いていた。


「冬島君。何かあると思う?」

「さあ。でも一応学校の外にあるものを見て回るのが役割だから。」


 啓太自身、こちらの世界に自分たち以外の人や動物がいるとは思っていない。ただ今後に役に立つようなものがあった場合、それを見逃さないようにするのだ。


「もう結構歩きましたし、日も暮れかけているので学校のほうに戻りませんか?」


 幸はいつも敬語で話す。本人曰く、敬語だと他人を言葉で傷つけることが少ないからだと。


「そうだな。戻るか。」


 例の生き物を見たのも、ここからだった。


「冬島君。あれなんだと思う?」


 急に亜美が問いかけてくる。指さすほうを見ると、広い交差点の中心のほうに赤い小さな光が集まっている。夕焼けの赤の中でも映えるくらいそれは赤かった。


「近寄ってみるか?」


 自分たちの役目は見たことがないものを捜索すること。なのでそれが何かを知ることも自分たちの役割ではないか、啓太は心の中でそう思っていた。


「東と横手はここで待っててくれ。」


 そう言って啓太は一人恐る恐る謎の赤い光が集まりつつある場所へと近づいていく。その時だった。集まった赤い光は赤い光同士ぶつかり合い、砕けてその数を増やし始めた。一瞬のうちに人一人を飲み込むくらいの数にまで増えた。


「えっ。」


 啓太はその様子を呆然と見ておくことしかできなかったのだが、それが間違いだった。光は互いに合わさり、巨大な光へと変化すると、瞬く間にその形を変化させていった。


「なんだ、この生き物…。」


 見た目は想像上の動物だった。平べったい赤黒い頭に輝く、溶岩のように揺れる赤い瞳。首の横からは、刃のような銀色の細く広い物体が突き出しており、背中には丸っこい形の翼のようなものが生えている。

 その生き物はゆっくりと頭を動かして近くにいた啓太を視界にとらえた。この瞬間、啓太の中の何かが大きな警鐘を鳴らしていた。しかし、圧倒的に巨大なうえに恐ろしい顔に見られて動けなかった。


「まずい。」


 心の中では逃げないといけないと思っているのだが動けない。


「「冬島君っ!」」


 後方から聞こえた幸と亜美の声で啓太は、金縛りが解けたように体が軽くなった。そう感じるや否や啓太は後ろに軽く跳んだ。


「逃げるぞ。」


 そう言って走り出した。


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