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終わりなき世界で  作者: 緋島 奏
第一章  東京都編
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第一章 九 それぞれの役割

「俺は関係あると思うぞ。」


 佑は変な期待がこもった声でそう言った。しかしだからと言って、それを否定することはできない。壮真たちも宝箱がどう関係あるのか、また無いのかどちらなのか決めかねているからだ。


「宝箱って言うくらいだから、鍵なんてかかってたのか?」

「いや、それは確認してない。箱があったってことを先に伝えて置こうって思ったんだ。」


 天斗がそう答えると、ほかの三人が申し訳なさそうに下を向く。


「ああ…それなら、気にしなくていいんだ。」

「ねえ、それって何が入ってるかわからないから開けること前提で話を進めたらだめじゃない?」


 零が冷静に意見を出す。


「そうだな…。」

「でも、中身を確認する方法ってあるの?」

「ノストラダムスがわざわざ、あんなところに設置したんだよ。いつかわかるんじゃない?」

「…まだあいつが設置したって決めつけるのはだめだと思うよ。僕は。」


 その声に一気にみんなの視線が一人に集まる。普段全くしゃべらない、PC同好会の木田 匠が口を開いたのだ。ここに来ておそらく初めて声を聞いた。


(まあ、的確な意見ではあるけど…。)

 壮真はほかのクラスメイトとは、違う部分に驚きながらひそかに感心する。ここから脱出するためには全員が一致団結するのが大切だ。普段はしゃべらない者でもああいう風に意見を出してくれると、それだけでも全然違う。


「さすがオタク。言うことが違う。」


(オタク関係ないだろ…)

 明人がからかっているのか褒めているのかわからないような声をかける。本心ではおそらく褒めているのだろう。ただ、表現が下手なだけだ。


「なら…。」


 そこで突然、梓が一つ提案する。


「いったんそのことは置いておいて、別のことを先に考えたら?」

「別のことっていうと?」

「だから、まだ解決できてないことがあるでしょ。試練の文章とか。」


 正直なことを言うと、壮真の中には文章の解読のとっかかりが見つけられないでいたので、あまり考えたくなかった。もう少し別の情報を集めてから別の目線からも考えてみたかったのだ。


「俺は、吉田の意見に反対だ。」


 壮真はその声にはじかれるように顔を上げた。声の主は天斗だ。


「確かにあの箱の中に何が入ってるのかわからないから開けるってなると、ためらってしまう。でももし、箱の情報が集まらなかったら? 最悪の場合も考える必要はあると思うぜ。」


 壮真と思っていることは微妙に違うが天斗とは似たような意見だ。壮真の持つ考えを突き詰めていったらこうなる、というようなものだろう。


「最悪の場合っていうけど、箱の中身が危険なものだったほうがよっぽど最悪な結果になると思うんだけど。」


(んー。確かに。)

 天斗と梓の言い争いで周りは途端に静かになり、傍観している。全員の行動を決めることだ。他人事ではいられない。


「試練の文を解読するってどうするんだよ。何も解読するヒントなんてないぞ。」


 試練の記述について考えるにしても手の付けようがないから、状況を変えるかもしれない新たな物から先に手を付けよう、というわけだ。ここに来る前も自分たちが複数のものを考えるときは、可能性があるものから先にやってきたからだ。

 何にしても、おそらくこの状況はまずい。何事にも細心の注意を払わないと、クラスが二つに分かれる恐れがある。これから先、何があるか想像できる範疇を超えているからだ。全員で協力が必要不可欠なはずだ。


「おい、吉田に天斗。少し落ち着け。」


 壮真が行動を起こす前に動いたのは隣で、静かに皆の意見を聞いていた啓太だ。


「みんなも聞いてくれ、一つ案がある。…これから先もこういう言い争いとかがあるかもしれないだろ。そのたびにこういうことを繰り返してたらきりがない。それにいつクラスが別れるかわからない。そこで考えたのは、それぞれが自分の役割を持つことだ。」


 よく聞いてみると、啓太が言いたいのはクラスを分けるのではなく、それぞれがやるべきことを持たせる、ということらしい。


「それって、係みたいなもんか?」

「ああ。まあ、責任はずっと重いけどな。」


 話し方から察するに、啓太の中では誰がどういう役割を持つか、そういうものは決まっているらしい。


「試練の記述を解読する係、みたいな感じで分けるんだ。吉田も天斗もそれなら文句ないだろ?」


 その視線の先にいる梓と天斗は一度顔を見合わせ、黙り込んだ。


「これはいいってことか? そう解釈するぞ。」


 そこまで言うと、啓太はやることはやったというように元の場所に腰を下ろす。


「…じゃあ、そういうことだ。まずは何も考えずに、必要だと思う役割を挙げてくれ。誰か筆記用具持ってないか?」

「あ、俺持ってる。」


 サッカー部の石田 俊。よく気が利くとか言われているんだったか。どうやら、気が利くだけでなく、生活で使うものは常備しているらしい。

 壮真はそれを借りて自分の活動許可証の真っ白なページを開く。


(んっ?)

 パラパラとページをめくって探しているうちに、見慣れないページを見た気がした。また追記されたのだろうか? にしても今それを確認することはしない。

 最後に近いページを選んで、壮真はメモする準備をする。


「何か挙げてくれ。」


 皆はいきなり言われても、というように周囲の人とこそこそと話し始める。


「あー、役割なら俺が一応メンバーまで考えてる。」


 この案の発足者である冬島 啓太は手を挙げた。


 書きだめがなくなったので、次の更新は遅れてしまうかもしれません。

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