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伝承

 遥か昔、ある大きく栄えた帝国に一人の女がいた。


 その女は大変美しく、かつ聡明であり、また、奇怪な術を操ることができた。

 女は、日照りが続けば雨を降らせ、神が怒り稲妻を落としたならばこれを防ぎ、人々が深い傷を負えばこれを瞬く間に癒してみせた。

 女はどのような人間に対しても温情を施し、人々もまた、その女を畏れ敬っていた。


 女は己の術を己のみの力とはしなかった。

 女は自らの妖術の仕組みを研究し、そして遂に、その術を万人が操ることができる為の学問を築き上げた。女はその術を「魔法」と呼び、人々はその女を「はじまりの魔女」と呼んだ。


 魔法は帝国に住む人々の生活を大きく変えた。人々は、飢餓に苦しむことも、獣に襲われて死ぬことも無くなった。

 帝国は女のもたらした魔法の力によってさらに大きく栄えていった。


 ある時、帝国の王は魔法の持つその絶大なる力を軍事に利用することを考えた。

 王は帝国中から魔法の素質のある者をかき集め、はじまりの魔女に命じてこれらを育成させた。

 はじまりの魔女の指導の下、魔術師たちはみるみる力を伸ばしていった。そして王は、魔術師による軍隊を編制し、はじまりの魔女にこれを指揮させた。


 王はまず手始めに、その軍隊に隣国の領地にある小さな村を襲わせた。村は焼かれ、村人たちのほとんどは死に、残りは奴隷として強制的に帝国に連行された。

 王はこれを期に、次々と他国に攻め入った。

 魔法の力は計り知れず、攻め入られた村、町、国はすべて火の海に沈んだ。

 帝国はますますその勢力を広げ、領地を広げていった。

 帝国には数多くの奴隷が連れて来られた。彼らは人としては扱われず、劣悪な環境の中での労働を強いられた。


 王は満足だった。

 敵対する恐れのある国々は既に滅び、もはや帝国に仇なすものは存在しなかった。

 すべてをその手中に収めた帝国の王は贅の限りを尽くした。かつて夢見ていた、まさに至高の日々だった。


 しかし、その日々は長くは続かなかった。

 ある日の晩、突如帝国の至るところに火の手が上がった。

 人々は魔法で以ってこれを消そうと試みたが、火は衰えるどころか勢いを増すばかり。炎は忽ち帝国のすべてを覆っい尽くした。

 王や家臣、魔術師に至るまで、帝国に住むほとんどの人間はこの炎に呑まれていった。彼らは塵一つ残すこともなく消えていった。


 帝国の上の空高くで、一人の女が笑っていた。

 人々が炎に呑まれ、そして消えゆく様を見ては笑っていた。

 やがて炎は帝国のすべてを焼き尽くすと、これまでの勢いが嘘であったかのように炎は消えた。

 それを見届けると、女は音も無くその場から消え去った。


 その後の女の行方を知る者はいない。

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