3.僕は非凡な人間なのに
大学附属の図書館は膨大な資料が保管されている。学生だけではなく、一般人にも解放され常に人がごった返しになっているが今日は特別少なかった。
明日から特別学習期間だから、今日は穴場なのだ。きっと明日からは混む。
僕は毎度そう予想して特別学習期間前から議題を探しに図書館へ行くのだ。
ガラガラに空いた図書館を自由に練り歩き、今回の議題のテーマを絞る。
勝手に僕の頭の中では彼女と組む事になっているから、女性向けの本ばかり選んでしまう。
美と健康、女性とダイエット……こんな議題じゃ最優秀賞なんて取れっこないけれど、彼女が喜ぶのなら良い。
そもそも最優秀賞を取ったのは彼女に気付いて貰う為だから。
「お願いします」
本を借りる為、係員に手渡した。十何冊かある分厚い女性向けの本に、係員も思わず目を見開いていた。
おさげを揺らしながら係員は、微笑んだ。
「今回は女性がテーマなんですか?」
「女性は神秘ですからね。必ず学ばなければいけない学問の一つです」
嘘です、ぺろぺろ。
でも、彼女は神です。ぺろぺろ。
「流石ですね。最優秀賞さん、今度も一人ですか?」
「ええ、それが己にとっても社会にとっても最高の案ですから……って、僕の事知ってるんですか?」
嘘の仮面を削られ、本当の自分が一瞬顔を出す。
「そりゃあ、有名ですよ。斎藤さん程の人となったら、図書館まで響いてきますよ」
「いやあ、嬉しい事ですね」
なら、彼女の元まで響いているでしょうかね? という本心は付け足さない。
「女性をテーマにするのなら尚更、ペアが必要でしょう。私は如何ですか? 余ってますよ」
余ってるからって受け取る程僕は優しい人間ではないよ、というのは嘘で、僕は彼女と組むから無理なのだ。
「お言葉に甘えてと言いたい所ですが、貴方とペアになりたい人に怒られては困るので辞退します」
息を吸って、嘘を吐く。すーはーすーはー、地球が汚れないね。エコロジー。
「私にはペアいませんよ。なので、選択肢として考えてみてくださいね」
にっこりスマイルと共に借りた本を渡された。しかもその上にはご丁寧にアドレスの書かれた紙が乗っている。
ご迷惑極まりないので後で丁寧にゴミ箱に返しましょう。
なーんて素振りも見せずに爽やか青年ヨロシク「ありがとうございます」と挨拶をして図書室を出た。
晴天なのに、良い事出会ってないやと空を見れば太陽を覆い隠す程厚い雲が流れていた。
確証はない、が、嫌な予感がする。