表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精子から始めるチートファンタジー  作者: 跡地
間章「失われる、センリとの幸せ」
8/22

EX1「強くてニューゲムをするために」

様々なアドバイスを頂けましたので、間章を書き直します。なるべく早く間章を完結させますので、どうぞよろしくお願いします。


4/14 多精子受精問題解決のために、一章のラストを変更しました。EX1についても修正しました。


ご迷惑をおかけしてすみません。

『子供のころに、成長期とともに魔力を鍛えるのは定番だもんね』


 センリがそんな世迷い言を言い出したのは、受精卵の着床が完了したころだった。着床は受精後6日目から開始し、12日目に滞りなく完了した。

 無事に着床するまでは産婦人科領域では「有か無の法則(All or none)」の期間と呼ばれ、流産の可能性が最も高い時期なのだ。


 つまりは流産を恐れて、俺とセンリはそれまで変な行動の一切を控えていたわけである。 具体的には

「じゃあ、今日から私がセンリお姉ちゃんね!」

「いいや、まだ妹の可能性があるぞ」

「ふふふ、馬鹿め! 先に生まれなくとも心のあり方がお姉ちゃんなら、それはお姉ちゃんなのだ!」

「どういう理屈だよ、それ」

「さぁ、お姉ちゃんとお呼び! さん、はい!」

「などと妄言を吐いており……」

「えええ、なんか受精してから私の扱い雑じゃない!? 別にイイけど」

 という感じに静かーに暮らしていたのだ。


「そう、耐え忍ぶのも今日までよ!」


 胚盤胞はいばんほう(受精卵が成長したもの)が無事に子宮内膜に潜り込むと、とたんにセンリが元気を爆発させるように宣言した。具体的には胚盤胞を包む透明帯(膜のようなもの)が脱げ始め、着床寸前のころから非常にそわそわしていた。

 気分は新発売のゲームの前日らしい。良く分からないが、センリが嬉しそうなので全て良し。

 そしてセンリ風に言うなれば、今日はフラゲ不可能な、半年前から待ち望んでいたゲームの発売日。天にも昇るどころか宇宙まで飛び出していきそうな勢いで、センリは宣言した。


「目指すは、強くてニューゲームよ!」


 センリが目をきらきらと輝かせる。もちろん物理的に目はないので、心の目みたいなものだ。俺たちが人間らしき形になるまでは、もう数週間はかかる。

 だが精子時代と同じで、相手の表情が感覚で分かるのだ。センリ曰く、これもレース主催者の計らいというものらしい。つまりは魔法的な作用があっての結果なのだろう。


「そのために私たちが生まれるまでにしておくべきことは、大きくわけて二つあるわ」

「二つ?」

「そう! 情報収集と、魔力の強化よ」


 センリが魔力と呼ぶものについては、この12日の間にとっくりと説明されていた。センリはレース主催者(神とか、そんな存在らしい)に教えられた情報を、俺に伝えてくれたのだ。様々な小説やゲームの情報を交えながら。


 転生ものの物語では、主人公が膨大なMP(魔力総量)を幼少期に鍛えるのは定番であるということ。

これから生まれる世界で魔力に相当するものは、光粒子フォトンと呼ばれているということ。

 光粒子フォトンは前世でいう光化学に習った振る舞いをする面もあるそうだ。つまりは鏡や水面に反射されるわけである。そんな光粒子フォトンでどうやって魔法を構成するのか、それはレース主催者も教えてはくれなかったらしい。生まれてから確認しろということだろう。


「情報収集?」


 魔力(この世界では輝度きど)の強化については聞いていたが、情報収集については寝耳に水だ。……ちなみにこの状態でも俺たちは睡眠を必要としている。脳もないのに、不思議なものだ。


「そう! どこに生まれるかも分からないし、生まれる前になるべく世界について知っておくのは得策でしょ?」

「まぁ、確かに」

「攻略サイトを見ずにゲームをするのは楽しいわ。私も好きよ。でも今回は失敗できないもの。できるだけの準備をしておかなくっちゃ」


 センリはやる気を大噴火させ続けている。言っていることは正論だ。しかし一つ大きな問題があった。


「でも、どうやって情報収集なんてするんだ?」

「決まってるじゃない」

 

 センリ史上最高のドヤ顔(当然ない)を放ちながら、彼女は言った。


「あなたの、スキルでよ!」


 まさしく最高に他力本願の作戦だった。


「うーんスキルって言ってもなー」


 俺はスキル・ウィンドウを再度確認する。センリに返してもらった【善意性分配エゴイスト】も加え、約百ものスキルが並んでいる。相変わらずのスピード狂スキルたちが半分以上を占めている。


 残った3万のスキル群は素質という扱いで、現状は使用不可となっている。例えば


【図書の大海アーカイブlv0】自分の周囲にある図書の内容を、把握することができる。効果範囲はスキルレベルに応じて広がる。スキルランクA。現在使用不能。


 と言った具合である。まさに宝の持ち腐れだ。だが百のスキルの中には戦闘以外の使い道がありそうなスキルがいくつもあった。例えば、


本質を見抜く目ニア・トゥルースlv1】鑑定を行える。鑑定内容が全て正しいとは限らない。正確さはスキルレベルに依存する。スキルランクB。


 である。センリに見せたところ「いいねーいいねー定番だねー!」といつものようにはしゃいでいた。かわいい。

 気になったので【本質を見抜く目ニア・トゥルース】でセンリの前世のスリーサイズを調べようとしたら「乙女の秘密」と出た。元のスキルの持ち主の性格を反映しているのかも知れない。使えないスキル認定寸前である。

 しかし【本質を見抜く目ニア・トゥルース】はセンリの言う通り、便利なスキルだった。というよりこのスキルがなければ、俺はセンリを失っていただろう。


 卵子を分配する際に【善意性分配エゴイストlv1】の説明文が増えていたのは、このスキルのおかげだったのだ。感謝しなくてはいけないだろう。



「まぁ妊娠は十月十日もあるって言うし、頑張ってみましょ!」

「まぁ、センリがそう言うなら」


 最近気付いたが、俺はかわいすぎるセンリの言うことを断り切れない節があるようだった。これも解決しなければいけない重大な課題だろう。


「あ、ちなみに出産までは280日だから。九ヶ月とちょっとだよ」


 28日を一ヶ月と固定した病院方式の「数え」での場合のみ、十月十日となるのだ。つまりは実際の暦とは少し異なるのだ。

 前世の記憶はないが、そういう知識だけは思い出せる。俺がその知識を披露するたびにセンリはむすった顔をして、


「し、知ってたし。お姉ちゃんだからね! 知ってたし!」


 と言うのだ。それがかわいくて、俺は指摘しなくてもいい間違いを指摘しているのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ