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精子から始めるチートファンタジー  作者: 跡地
第一章「卵子争奪戦」
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第5話「完全寄生」

「危ない。本当に危ないな~」


 背後から迫る俺たちを見て、【完全支配パーフェクト・コミュニケーション】のスキルホルダーが言う。言葉とは裏腹に、焦りはなかった。


「……ばんり!」


 むしろ顔を青ざめさせたのはセンリの方だった。俺は身体をセンリにぴとっと寄せる。慰める手も、励ます手も持たない俺にできることは、これくらいだ。


「……ありがとう」


 センリが小さな声で言った。決意の固い表情で先頭集団をにらむ。


「あれれ~ダメじゃないか、センリ。ちゃんと作戦通りにやってくれなきゃあ」


 男は愉快そうに身体を揺らすと、センリを見下ろすように言う。


「い、嫌だ……っ。ばんりの言うことは、もう聞かない……」


 接触している俺だから分かる。センリは必死にこらえているが、身体は震えていた。そんなセンリの内心をも見透かすように、男、バンリはくつくつと嗤う。


「別にセンリの意見は聞いてないよ。これは、命令だよ」


 ビクッとセンリの身体が跳ねた。


「離れて……」

「え?」


「私から、離れて……」


 センリが俺を押す。俺は頭が真っ白になった。状況についていけていない。


「早く、行って! 私を置いて!」


 恐れるようにセンリが叫んだ。だが、俺がセンリを置いていけるわけもない。俺は視線をセンリに送って、その理由を問おうとした。その瞬間だった。ばんりが、決定的な言葉を放ったのは。


「これは命令だ。センリお姉ちゃん」


 ザシュッと、何かが切れる音。身体が、動かない。鈍い痛みが、下半身からやってくる。


「うがああああああああああああアアアァァアッッ!!!」


 白くて、細くて、長いものが、子宮内液に漂っていた。


「しっぽ」


 俺のしっぽが切れていた。


そうだ、スキルだ……早く、早く、治さなくっちゃあ!


善意性分配エゴイスト】と念じる。短期間で何度も使用した、俺のスキル……スキル!

 千切れたくらい、なんてことはないのだ。

 治りさえすれば、痛みもすぐなくなるだろう。状況を把握するのは、それからでもいい。


「センリお姉ちゃん、良くやったよ。あとは僕が誕生するのを見送るだけでいい。さぁ、ついておいで」



「エゴイスト!」


 口にまで出して俺は叫んだ。センリが離れていく。ずっと側にあったセンリのぬくもりが失われていく。


「リーダー!」


 気付けば仲間たちが俺の身体を支えていた。もはや自分では動かすことのできない身体を。


「スキル・ウィンドウ」


 俺は、絞り出すようにその言葉を唱えた。そして開かれるライトブルーの小窓。




【スキルなし】



「う、ぅああああああああっっ!」


 痛い痛い痛い。もはや自分ではどうしようもなくなってしまった、下半身の喪失を、俺はとうとう認識せざるを得なくなる。

 俺のしっぽを切ったのはセンリだ。切られたしっぽが分子消失していく。この現象を俺は知っていた。


「ごめん、ごめんね……」


善意性分配エゴイスト】。俺のしっぽの分まで長くなったしっぽを振って、センリは去って行く。


「私の【完全寄生パーフェクト・パラサイト】は、最も強い者に寄生し、寄生し尽くすスキル……人のスキルを強化するなんて、そんな優しいスキルじゃないの……」


 センリは懺悔するように言った。確かに、俺はセンリのスキルをウィンドウで確認はしていなかった。する必要性すら感じなかったのだ。


「スキルはその人の前世の形よ。私……最低でしょ?」


『……【善意性分配エゴイスト】? あなたも楽しそうな人生送ってるわね』……いつかセンリが言っていた台詞の意味を、ようやく理解する。彼女は嘆いていたのだろう、俺を、そして自分を。 


「センリ!」


 俺は叫んだ。俺の身体の断面から、動力源のグルコースや、細胞質が漏れていく。それでも構わなかった。


「センリ! なんでなんだ!」


 訊きたいことがたくさんあった。本当にたくさん。


「無駄だよ。センリお姉ちゃんは、僕の奴隷なんだから。スキルなんて関係なく、僕には逆らえないのさ」


 バンリが全てを失いつつある俺に向かって言う。スキルは前世を反映する。【完全支配パーフェクト・コミュニケーション】なんてスキルを発現したバンリは、一体どんな前世を送ったのか。


 バンリとセンリの姉弟関係は本当なのか。どうしてセンリは裏切ったのか。気にならないと言えば、嘘になる。だが、そんなことより訊きたいのは、ただ一つのことだ。


「どうして」


 センリの背中が遠い。センリは俺を見ない。それでも、それでもだ。俺には分かった。問わなければいけない理由は、それで十分だった。





「どうして、そんなに悲しそうな顔をしてるんだよ!」


 俺は叫ぶ。命が、散っていく。

果たしてセンリと主人公はどうなるのか……!? 残り2話で精子編完結です。

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