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開き直りましたね

 そんなこんなで私達は次の目的地に向かいます。

 ちなみにここに来る途中で、護衛の馬車を巻きました。

 だってこれからとある場所に潜入する事になったのですから。


「“テオル魔法学園”、貴族庶民の両方が通う学園。今回はその学園にいる、ローゼル君にあいに行く事になります」

「ふん、ガキ共の巣窟か」

「魔王様……、そういえば魔王ヤード様はお幾つなのですか?」

「18歳だが? それがどうかしたか?」

「では、学園の最高学年にぎりぎり引っ掛かりますね」


 私が笑うと魔王様がびくっと震えた。

 また何かに巻き込まれたり酷い目に遭うと思っているのだろうか。

 もっとも、巻き込むんですけれどね?


「実はこの学園、その学園にいる生徒の年齢層の人間でないと入れないのです」

「私は魔族の王、魔王だ」

「見た目が人間なので大丈夫です。そして私達も年齢詐称の魔法を使って、そこに潜入して彼に会いに行くのです」

「ふん、面倒な……」

「まあまあ、一番面倒臭い、紹介書類の偽造……ではなくて知人を脅し……ではなくて弱みを握り……穏便に文書を手に入れたので大丈夫ですわ」

「……何だか悪役令嬢らしい言葉が聞こえたような」

「私は悪役令嬢になるつもりはありませんのであしからず。そして魔王様、その学園に入るにはある条件があるのです」


 そこでまた私が笑うと、魔王ヤード様は嫌そうな顔をするが次に私はユーグに、


「貴方ももちろん来るのよ。年齢くらい幾らでも如何こう出来るでしょう?」

「僕も行かないといけないんですか? この馬車でお留守番は駄目ですか?」

「いざという時には貴方にも頑張ってもらわないとね?」

「うう、神使いの荒い悪役令嬢だな」


 そう嘆くユーグを捕まえて、私達はその学園に向かったのだった。






 用意させておいた服にたまたま呼びがあったのは幸運だった。


「いやだいやだいやだいやだ」

「魔王様、早く着替えて下さい。せっかくこんな素敵な女性の制服が……」

「だから、私は男だ。それが何だ! その短いスカートは!」

「いまはこれが標準です。きっと似合います」

「似会ってたまるか! やめろ!」


 そう叫ぶ魔王ヤード様ですが、ムッして私は魔王様お押し倒して嫌がる魔王様を無理やり着替えさせました。

 もちろんユーグは馬車の外です。


「や、やだっ、やめろっ、脱がすな!」

「わー、魔王様胸が大きくてくびれが……」

「や、やめろ、触るな、あんんっ」

「さてまずは上から。そしてスカートをこうしてと」

「は、早。なんという早業! と言うかなんだこれは!」


 魔王様は恥ずかしそうに、スカートを抑えている。

 顔が真っ赤になっているが、


「こ、こんな風が吹けば中が見えてしまいそうな短さって、おかしいだろう!」

「あ……私が13歳くらいの物を目安にしていましたので、スカートが短くて胸のあたりが……」

「く、こ、こんな格好で私が歩けるわけ無いだろう!」

「……よし、こんな美女な魔王様に頼めば、きっということを聞いてくれそうですね」

「く、こ、この……だが仕方がない。世界の破滅を救わなければ、私はあのユーグにとどめを刺して元に戻れない。……協力する」


 嘆くように呟いた魔王ヤード様はいいとして。

 さてこちらは準備はどうかしらと私はユーグを見るとそこには、


「……もう、本当にルナは僕の扱いが酷い」


 そこにいた成長したユーグは、前から美少年だと思っていたけれど、輝くばかりの美形に成長していた。

 それに面食いな私は一瞬見惚れてしまう。

 何だこの凄い美形はと思ってみていると、そこでユーグが微笑んで、


「どうしたの、ルナ」

「べ、別になんでもないし。何だか格好良いなと思っただけで」

「……ルナは、大人になった僕が好みなのかな」

「ま、まあ格好いいし」

「……相変わらず面食いだね。でも、ふーん」


 何だか嬉しそうにユーグが笑って、それに更に私達は顔を赤くする。

 そしてそんな私達のやりとりを見ていた魔王ヤード様が半眼で、


「そこ、ちちくりあっていないで、行くんだろう?」

「はーい。あれ、魔王様は諦めたのですか?」

「……もうこの美しさで男共を悩殺してやることにした。私は女になっても美しい」

「……開き直りましたね」

「本当だよ! そう思わないとやっていられない! 後は酒を飲むかしかないが、ここには酒がないからな!」


 そんなやけくそになった魔王ヤード様。

 そんな私達は、ようやく学園へと向かったのだった。





 書類があったためか、すんなり学園内に入り込めた。

 慎ましやかだが、それでいて凝った彫刻やステンドグラスのはめられた白い校舎。

 やはり一般人が入学するといっても、貴族の子弟がやってくる学園だ。

 外壁もそうだが中も中々綺麗で古いがいい素材が使われている。

 いずれこの学園に私は来ることになるのだろうかと思いながらその廊下を歩いて行く私達。


 昼休みなのかもしれない、廊下には生徒がそこそこいて、でも昼休みにしては少なく見えるが……出会った生徒がとざわめく。

 それはそうだろう、これだけ美男美女が揃っているのだから。

 さてさてローゼル君は何処かな、確かこの回の教室だったかなと思って、途中にいる男子生徒に問いかけると、彼は顔を真赤にして、


「ロ、ローゼル君はいまここにはいません」


 それを聞いて私は、もしかして食事に行ってしまったのかなと思ったのだが彼は少し迷ったように黙ってから、


「ローゼル君は、男女混同、美女コンテストに行っています」


 それを聞いて、魔王ヤード様が変な顔をした。

 そして私に聞いてくる。


「一つ聞いていいか? そのローゼル君は女なのか?」

「男ですよ、女装が趣味に自分の美貌に過度な自信があるナルシストですが」

「……そんな変なやつ、必要なのか?」

「将来重要な治癒能力者として活躍するんです。それに美貌を磨くことで様々な新しい薬も作りだしたとも言われているんですよ? 女性の味方です!」

「……やはり女はよく分からない」

「やだー、魔王様もいまは女の子じゃないですか」


 それを聞いた魔王様が、再びユーグを追いかけまわし始めたので、私は先程の男子にそのコンテストが何処で行われているのかを聞く。

 そしてあてにならない男二人の襟首を掴み、私はそのコンテスト会場へと向かったのだった。

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