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驚愕の事実

 目の前でユーグが木の根に貫かれて、倒れていくのがゆっくりと見えました。

 まるで時間が凍ったように感じます。

 乾いた唇でユーグの名前を呼ぶも、ユーグは笑っている。


 私が無事で嬉しいかのように。

 なんでそんな、と思うと同時に、私の中でふつりと言葉がこみ上げてくる。

 この世界の異常はユーグの負担にもなる。


 だから、私が。


「異世界のゲームってものがあるんだって。それを見ていたらこの世界によく似ていたから……私、やってくる」

「でも……」

「だって、大好きなユーグが苦しんでいるのをもう見るのは嫌だもの。それに他人事じゃなくて、私にだってこれから影響してくるはずだし、私が行けばいいのよ」

「……一時的な転生は、記憶も力も封じられてしまうよ。今の全力は使えないよ?」

「大丈夫、この世界と同じ乙女ゲームの知識があればなんとかなるよ」

「……なるのかな?」

「どのみちもう、手を施さないとどうにもならないもの、やるしかないわ。大丈夫、ユーグはゆっくりしていればいいよ。無理しているんだから」

「……それで、どのキャラになるのかのお手伝いくらいはさせて欲しいな」

「えっとね、男の勇者が一番最適だと思うの! そして悪役令嬢の子はちょっと……」


 会話はいぜんしたもの。

 今の私になる前の私がした話と、約束。

 私にとってユーグは、とても大切な人だった。


 我儘でこうなったとはいえ、こうしてこの世界に降りてまでユーグは……。

 そして記憶と共に、力があふれてくる。

 神様の時は世界は広すぎるから大雑把にしか分からなかったけれど、今ならば何がおかしいのかがよく見える、そう思って私はそっと倒れたユーグを受け止めて、小さく呟く。


 ユーグの体が癒されて、閉じられた瞼が開く。


「もう大丈夫そうだね」

「……ルナ?」

「無茶したら駄目だよ。ユーグは大分弱っているんだから」

「! ルナ、まさか……」

「きっかけになって魔力が溢れている。でも、丁度ここに歪みがある。だからその亀裂をなすのに個の魔力を放出すれば……この悪役令嬢のルナは、壊れることはない」

「そう、か」

「でも私の前に出てけがはこれからしないでね。何も考えられなくなってしまった」

「それだけ僕の事が大事だって事かな」


 ユーグがそう、いう。だから私は頷いて、


「大事だよ。だからもう、怪我はしないでね」


 そう告げるとユーグは目を瞬かせて、次に頷いて微笑む。

 そして私はこの力をどう使えばいいのかと思って、駆け出し、まずはヤード魔王様を捕らえていた触手を切り落とす。と、


「ルナ、なんだかいつもと違くないか?」

「これが私の本性です。では、根を止めるのをありがとうございました」


 そう言って、後はフィフス達にヤード魔王様はお任せして、私は走ってそのまま、紫色に輝く湖に飛び込む。

 パシャント水の跳ねるような音がして、周りには紫色の景色が広がる。

 ここではない。


 もっと暗い場所。

 そう思って探すと、更に小さな場所に黒い線のようなものが見える。

 そこから白い泡のようなものが噴出しているのも見える。


 その暗い場所では無数の蔓のようなものが見える。

 これが全ての原因。


「後はこのルナの力を使うだけ」


 特殊能力チートの時間操作。

 それを私の本来の力、女神の力で発動させる。

 目の前の黒い亀裂が、どんどん白い光に飲み込まれていく。


 どれくらいたっただろう。

 トンと小さな音が聞こえて、四角いガラスの破片が現れる。

 ゲーム内では異界から落ちてきた悪夢の一つである、“無の欠片”。


 ふと思い出してそれを手に取り、魔力で球状の玉を作り封じる。

 後でこれをみんなに見せよう、そう思いながら気づけば周りが普通の透明な水になっている。

 そして結構冷たい。


 早く戻ろうと思って泳いで地上に出ると、根っこの部分がしわしわになって転がっているのが見て取れる。

 どうやらこれでこの世界の異常は上手く解決できたように思えた。

 のだが、岸に上がって私は気づいた。


「あれ、これで世界の崩壊のイベント、解決しているんじゃ……」


 という驚愕の事実に気付いたのだった。

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