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枕投げ

 こうして約束を取り付けた私達は、やけに幸せそうにお菓子を食べている魔王様が襲われそうになったりしながらも、そのヤード魔王様を連れ絵部屋に戻ってきました。

 ちなみに部屋に戻ってきてすぐに、ヤード魔王様は、フィフス達に会った疲労からかベッドに横になってしまった。

 しかも、


「ルナ、今日は一緒に寝ないか?」

「……今は女同士だし、構わないかな? ……え? ユーグ?」


 私はヤード魔王様と一緒に寝ようと思ったのですが、ユーグに手を引っ張られて後ろに隠されるようにされてしまう。

 どうしたのだろうと私が思ってみているとユーグが、


「ルナと一緒に寝るなんてことはさせるつもりはありません。代わりにこの僕が一緒に寝てあげましょう。どうやら魔王様はひとりで眠れないような“子供”のような感性の持ち主のようですからね」

「ほう、言ってくれるではないか。それほどまでにいうならいっしょに寝てやろうか? 寝首をかかれるかもしれないからな」

「それよりも朝まで気絶して枕投げが出来なかったと嘆く羽目にならないかを考えておくことですね」


 嗤うヤード魔王様に、皮肉の応酬を繰り返すユーグ。

 そこでヤード魔王様はユーグを睨み付け、


「お前と寝るなんてお断りだ。だが、枕投げという物はしてみたいな。そしてお前にたたきつけて勝利してやる」

「たかだか枕投げ程度で熱くなるのもどうなのでしょうね」


 と、ユーグが小ばかにしたようにヤード魔王様に答えるが、枕投げと聞くとそれはそれで私は楽しそうに聞こえたので、


「私もその枕投げに参加します」

「よし、女同士で組もうではないか!」

「……ヤード魔王様、さっきまでは自分は男だと散々言っていましたよね?」

「物事は自分の都合の良い方に捕らえるようにするのもまた、生きる知恵だと思う」

「……でもユーグは強そうなので、二人で攻撃するのは良いかもしれません」


 ユーグが、ルナは薄情です! と言っているのを聞いたが、すぐに枕投げが始まり、そんな事は言っていられなくなる。

 結局、ヤード魔王様が一番初めに倒されてしまい、枕投げ大会は終了したのだった。








 それからすぐに眠る、というわけではなく、私とユーグは隣同士で座り、お茶を飲んでいた。

 暖かいものは落ち着くわ、と思っているとそこで、


「ルナは、この世界が好き?」

「うん、好きよ。どうして?」

「……実は僕は、あまり好きではないかもって思ったから」

「そうなの? なんで? 世界の維持をしないと神様としてもこう、出世みたいなものが出来なくなるんじゃないの?」

「……本当は覚えているのかな?」

「? 何が?」


 何を覚えているというのだろう? と思って私は聞き返そうとした。

 けれどそこで気づく。

 ユーグがやけに真剣な表情で私を見ている、その事実に。


 そこでユーグがふっと悲し気に微笑み、


「ルナはこの世界の事とかヤードの事ばかりだね」

「今は最優先でどうにかしないといけない事だからね。なんできくの?」

「うーん……もう少し遊びたいって思ったんだ、ルナと」

「これが終わればまたしばらく時間があるから沢山遊べるわよ」


 そう答えるとユーグは少し黙ってから、頷いた。


「そうだね、まだまだ時間があるから、ルナと遊べるね」

「そうよ。何を言っているの? もっと私だってこの世界も見たいし、それにはユーグも連れて行くから覚悟するように」

「……僕もか。うん」


 そこで何が嬉しいのか、ユーグが微笑む。

 その笑顔を見て私は、ほんの少しだけ心の中に温かいものが溢れだすような気がしたのでした。


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