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存在そのものがそこにいるだけでも

 まず真っ先に急いで現れた使用人の一人が、ユーグに声をかけたのは、この触手生物が怖かったのかもしれない。

 ユーグに何かを話している使用人の一人。

 ユーグはどこか険しい顔をしているように見える。


 私がいる位置からは、離れているためかよく話が聞こえない。

 何があったのだろうかと思っているとそこで魔王ヤード様が、


「そろそろ下ろしてもらえまいか」

「あ、はい。十分写真も取れましたし問題ないですね」

「……新技の実験では」

「それも目的の一つです。一度に幾つも目的が達成できていいじゃないですか。ヤード魔王様は暇を持て余していましたし」

「……今後はルナの魔法には絶対に、そう、絶対に付き合わない!」


 そう宣言した所で私は触手を私は元の種に戻しました。

 これも特定の物体に作用させるので、特に囚われていたヤード魔王様には影響なく、私達と同い年になったりはしていません。

 そこでユーグが私達の方にやってきました。


 珍しく深刻そうな顔をしているな、と私が思っているとそこで、


「アラザ地方の方で、濃い霧が発生して町と連絡がつかなくなっているらしい」

「……あそこには今後二人ほど仲間になる相手がいるから、監視の者を送らせていたけれど、うーん。濃い霧、ね」

「自然現象なら問題ないけれど、それが……破滅の予兆だと、予想よりも早すぎる」

「そうね。ゲーム内だともっと後なのにね」


 それがどうしてこんなに早くなってしまったのか。

 色々とゲームと違いすぎて、それが、結果として崩壊を速めている?

 ふと恐ろしい想像が私の中でよぎるも、考えすぎだと思いなおそうとして……できなかった。


「ユーグ、一つ聞いていいかしら」

「……何でしょう」

「あのあたりの地方は、私が“勇者”として生まれるはずの場所ではなかったかしら」

「そう、ですね」

「私うがあそこのあたりで生まれなかったから、予定よりも早く崩壊の予兆が出てきたり、そういった事は考えられない?」

「……十分ありうるでしょうね。勇者としての力は、その崩壊の停止と再生ですから」

「存在そのものがそこにいるだけでも、影響があったりする?」

「あります。そういった存在ですから。“勇者”は」


 そこまで聞いた私は、頭を抱えたくなった。


「私を悪役令嬢なんかにした付けがここに来ているんじゃない! どうするの!」

「い、一応僕にもその能力があります」

「よし、仕方がないので今回はユーグには私の代わりに頑張って働いてもらうわよ」

「ルナは動かないのですか?」

「もちろん一緒に行く。ユーグだけだと心配だし。いろいろな意味で」

「えー……でも、ルナと一緒なのは、嬉しいかな」

「? そうなの?」

「うん、もう少し僕はルナと“普通”にはなしたりしたかったなと思っていたから」

「? この前までずっと一緒じゃない。これからも。この世界の破滅をどうこうぢないといけないし」

「……そうですね。うん。これからも一緒ですね」


 そう、微妙にかみ合わない会話をユーグが言う。

 珍しい言い回しだなと私が思っているとそこで、


「ならば私も行こう。折角だからそこの邪神の力も見ておきたいからな」

「……来なくていいのに」


 ぽつりとうんざりしたようにユーグが呟く。

 それにヤード魔王様はそれはもう、魔王らしい笑みを浮かべて、


「お前がこれほどまでに嫌がるとはな。しかも、暇を持て余していた所だから丁度いいかもしれない。この私もついて行ってやろう。世界の破滅の予兆というのも気になるしな」


 というわけで好奇心旺盛な魔王様とユーグと共に、両親に私は事情を話して説得してから、そちらに向かうことになったのでした。


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