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凸凹でこぼこ

作者:

 季節は夏。学期末のテストを終え、あと数日で学生の醍醐味とすら言える夏休みを迎える、ある意味一番楽しい時期。

 そんな中、蒸し暑い時期とはいえ尋常では無いほど発汗している人間がいた。

 

 



 時は放課後。場所は屋上。あまりに急な展開に少年は混乱していた。

 えっ…と、こういう場合はどんな返事をすればいいのかな…。

 少年は砂を噛んだ歯車のように動きが悪くなった頭で懸命にその答えを模索していた。

 彼の名前は小川真おがわまこと。急に屋上に呼び出された揚句、一言『好き』とだけ言われ、どうすればいいのか当惑を隠せない十五歳のひ弱な少年である。


 時は放課後。場所は屋上。少女もまた混乱していた。

 あっ…と、こういう場合、どんな言葉を紡げばいいのだろうか。

 少女は油が切れた歯車のように動きが悪くなった頭で懸命にその答えを模索していた。

 彼女の名前は立川茜たちかわあかね。少年を屋上に呼び出した揚句、不意に口をついて出てしまった自らの言葉のせいで苦しんでいる十五歳の美麗な少女である。


 まぁ、詰まる所これはよくある告白の場面であり学校という環境ならば割とありふれた光景である。

 ただ普通と違うのは少年の身長が140センチとかなり小柄で、少女の身長は180センチとかなり大柄な為、傍から見るとカツアゲに見えないでもない所であろうか。


 少年にとって彼女は憧憬の的であった。

 モデルのような整った顔に体。腰まで伸ばしている美しい黒髪。高校生の中ではあまりに抜きん出ている運動神経。意識せずとも皆を纏め上げてしまうリーダーシップ。

 そのどれもが少年が持っていないモノばかりであり、少年にはとても輝いて見えた。

 そんな遠い存在と思われていた彼女―――立川茜に告白されたのだ。動揺するなと言う方が無茶であろう。


 少女にとって彼は羨望の的であった。

 人形のように整った顔。この年で天使の輪が浮かび上がる黒髪。とても高校生とは思えない愛らしさ。意識せずとも皆と仲良くなってしまう性格。

 そのどれもが少女には持っていないモノばかりであり、少女にはとても輝いて見えた。

 そんな愛らしくてしょうがない彼―――小川真に告白したのだ。動揺するなと言う方が無茶であろう。


 男女はお互いが持っていないものに惹かれあうとは良く言ったもので、結局の所この二人はお互いに惹かれあっていたわけだからこの告白の結果は語るまでも無い…筈なのだが。


 前述したとおり彼はかなりひ弱である。季節は夏。極度の緊張で発汗の量は尋常では無い。そして此処には日陰などと気の利いた物は無い。

 これだけ条件が揃っているならば皆まで語る必要はあるまい。


 彼が口を開いた瞬間、朝会で倒れる子よろしく、倒れたのだった。




 少年―――真は夢現な状態の中で先程起こったことを反芻していた。

 呼び出され、告白され、倒れた。

 …うん。とんでもなーーーーーーくかっこ悪いね。

 至極あっさりとした結論に達し、真は軽く自己嫌悪に陥っていた。

 起きていたなら一も二も無く逃げ出しているであろう醜態は残念ながら頭のメモリーにしっかりと記憶されていた。

 しかも何故か俯瞰ふかん視点。恥ずかしさ倍増である。


 流石にあんな姿を見られたら幻滅されてるんだろうな…。


 ………けど。………もし。それでも立川さんが僕の事を好きでいてくれるなら。


 返事は決まっている。


 僕…―――




 急に倒れてしまった真を担いで保健室に連れていった少女―――茜は胸を撫で下ろしていた。

 保健室の先生曰く、軽度の熱中症で体を冷やしておけば問題無い、とのことだった。

 冷蔵庫に入っていたスポーツドリンクを真が寝ているベッドの枕元に置いて、先生は職員会議に行ってしまった。

 何やら含みのある笑みを浮かべていた気がしたが気のせいだろうか…。

 ようやく胸の動悸が収まった茜は改めて真の顔を見る。


 …かわいい寝顔。


 年頃の男子が聞いたら恐らく喜ばないであろう感想を洩らしながらその掛け布団から出ている右手を握る。

 通常、彼女にそんな事をする勇気は無いのだが思慕の対象が眠っている為、無意識に手を握ってしまったのだ。


 あの時、小川君はなんて言おうとしたんだろう…。


 ゴメンなさい?

 他に好きな人が居る?

 何言ってるの?


 そんなネガティブな思考ばかり働く自分にイラつきながら茜は頭を掻く。


 不意に真の顔に変化が起きる。

 口を開いて何かを言おうとしているが声が小さくて聞き取れない。

 やや躊躇いながらも真の顔に自分の顔を近づける。


 僕も…―――


 そこまで聴こえたところで、これまた不意に真が目を覚ます。

 その眼には霞がかかっているが意識を取り戻したのだろうか?

 茜は反射的に顔を離し、手も離そうとする―――が、その手を離すことが出来なかった。

 その姿に似合わず強く握られた真の手が離れないのだ。


 な、な、ななな何っ!!!?


 動揺して顔や空いた手を左右に振っている茜を尻目に握った手を離さずに上半身を起こし、真は顔を茜に近づける。

 その眼には未だに霞がかかり焦点が合っていないが、逆にそれが妙な迫力を醸し出している。

 その迫力に飲まれ、思わず動きを止めた茜の耳元で真が呟く。


 「僕も………好きです」


 その一言が決定打。

 茜の顔が朱に染まる。そしてその体が震えだすと目尻には涙が滲む。


 「私も好き………」


 その一言だけ呟き、茜は真をきつく抱きしめたのだった。




 ちなみに真は抱きしめられた際に完全に覚醒した。

 が、あまりにきつく抱きしめられた為30秒後には再び意識を闇に返すこととなるのだがそれは又別の話である。

んんん甘あぁぁぁぁぁい!!!と、まあ激甘仕様となっていますw

本当はラブコメを書いてみたかったのですが、書いていたらコメディーを挟む隙間がありませんでしたw

ここら辺は連載にでもしないと厳しいのかもしれません。

また、設定をもっと生かせればよかったのですがそれもイマイチで。練習あるのみですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] このどちらもが戸惑って、という何ともいえない心情が実に良く描けていて、微笑ましい作品になっていました。付き合いだしたことによる周囲の反応など、変化した日常が簡単にでもあったりすると、もっと嬉…
[一言] 拝読させていただきました。 私は、楽しかったですよ。 設定を活かすなら、連載が必要ですね。後はもっと長くするか。 この一話で終わってしまうには、惜しい設定だと思います。
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