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妖精七区(シルヴァリアント)  作者: 佐迅斗真
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第一章 復讐の邂逅-4

クレイスの斧による攻撃を何度も避ける少年。


「何者なんだ…君は……」

クレイスの目に焦りが浮かぶ。

「ただの空からの来訪者さ」

少年は立ち止まると敵の目の前で魔封(まほう)の詠唱を始める

「右には光、左には闇…」

「詠唱だと!? とことん舐めてくれる…!」クレイスが斧を動かない少年に振りかざす。

しかし斧は少年には当たらない。

斧に何かが当たり、クレイスはひるんでいた。

「なっ!? 一体何が………!!」

木箱の方にいた少女。

少女が持つには物騒な二つの拳銃が撃った後なのか煙を上げていた。

「お前かあぁぁぁ!!」

クレイスは少女を新たな攻撃対象として斧を振り向けるが、

「……泉の中には答えが眠る。悪いな、詠唱完了だ」

少年がニヤリと笑う。

「闇魔封・破滅光輪(フェアデルプ)!!」

少年が魔封を唱えると少年の周りに黒い刃が輪の様に出現し、一斉にクレイスの方へ向かって行く。

「がっ!? あぐっ…!」

何本もの黒い刃が刺さりは消えていき、クレイスは血を吐きながら倒れる。

「ぐ……」

「俺らの方が経験が上だった。残念だったな」

少年はクレイスにそう言うと、膝をついたままこの光景を呆然と見ていたレイを見つける。


「なぁ、君」

「……俺か?」

「そうそう、君」

少女が少年の元に駆け寄る。

「ここは、一体どこだ?」




廃墟街(ルーイン) 反乱軍(レジスタンス)アジト

「ふむ…」

「空から…か…」

スレイザーの部屋にクラヴィス、コルヴムートと反乱軍の重鎮が集まっている。

そして椅子に座っている魔封を使う少年と二丁拳銃の少女。

「君たちはどこから来たんだい?」

スレイザーが二人に尋ねる。

「全く知らない所だな」

少年がしれっと答える。

「全く知らない所ってどういうことだ?」

コルヴムートも二人に尋ねる。

「なんて言えばいいかな……」

「迷子」

少女がポツリと呟く。

「そうだな、俺達は森の中で迷ってたんだ」

「そして、魔封を使ったらここについた」

「魔封で?」

「そう、俺は対象をワープさせる魔封を使える」

「しかし」

ポツリと少女が少年のセリフに接続詞を足す。

「迷子を脱出する為に俺はその魔封を使ったんだが…」


「ワープ先の場所を指定しなかった」


「迷子を脱出出来ればそれで良いと思ったから、さ」

反乱軍の重鎮は沈黙している。

ただでさえ魔封は扱うのが困難なモノで、そんなモノを適当に放ったと言われると、かなりの実力者かただの馬鹿かの二択となる。

「君は自分の力を信じてどこへ着くかもわからないワープをしたのかい? それとも」

「もちろん、自分を信じてる、当然だ」

少年は芯の通った声ではっきり答える。


「そう心が強いのは凄いことだ、並々ならぬ何かがあったんだろう」

クラヴィスが察した様に少年達に言葉をかける。

「………確かに、色々、ありました」

少年はフッと寂しそうな顔をする。

少女の方も心なしか寂しそうだ。

「……質問しても良いですか?」

「何だい?」

「ここはどこで、貴方たちは何者なんですか?」

スレイザーが驚いた顔をした。

「本当にここを知らないのか…」




「ここは、妖精七区(シルヴァリアント)。エルフが治めるちょっとした国のようなモノだ」

「壁で覆われてて、入るのも出るのも厳しいと言われている」

「ここはその妖精七区の居住区の一つ、廃墟街だ」

中央街(セントラル)から五日はかかる程に距離の離れた、妖精七区の中でもかなり端っこの見捨てられた場所だ」

「この街以外の街ではハーフエルフは虐げられている」

「エルフである区長がハーフエルフを嫌っていて、権力の及ぶ限り虐げる気でいる」

「そんな区長達の支配から立ち上がったのが、私達、反乱軍だ」

「区長の目の届かない廃墟街にて私達は機会を伺い続けていた」

「そして私達は決起した、あの第五天砦に」


「………あとは君たちが降ってきた話になる」

スレイザーが状況を話す長い説明を終える。

「……入ってくれ、レイ」

コルヴムートがそう言うと部屋のドアが開き、レイが入ってくる。


「レイ……三階であったことを話してくれ」

レイは悔しそうに強く拳を握りながら自分の負け戦を伝えた。




「俺の…俺が……弱かったから……この人達がいなければ……俺は……」

レイが悔しさの言葉を少しずつ吐き出す。

「俺は…弱い……だけど…」

レイが顔を上げスレイザー達の方を見る。

「だけど! お願いしますっ! 俺を…俺をこれからも戦いに連れてってください!」「実力が足りないなら…見合うまで鍛錬します」

「経験が足りないなら……兵術を学び対応出来るようにします」

「だから………お願いします……」

レイは言い終えると下を向き静かに涙を流していた。

「私達は、君に戦場を離れてもらう気はないよ」

スレイザーが少年達の方を向く。

「君たちは彼のことをどう思う?」


「……何がそこまで戦うきっかけを作ってるのかは知らないが…」

「こんな悔しそうな顔されたら、応援したくなるな」

少年が少女の方を見ると少女は「ん」と言い小さく首を縦に振る。

「こいつも同じ意見だ、大将さん」

少年はニヤリと笑うとこう言った。


「俺らは反乱軍に協力する」


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