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第三章 ドルチェの森(第一部) 

 湖面に反射する太陽の光で、彼は目覚めた。


 身を起こしてからしばらく湖を眺めていたが、顔に浮かんだ険しい表情は消えない。



(いつまで私は……呪われ続ける。)



 否。そのために。


 終わらせるために、城を出た。



「シンフォニー様? お疲れですか?」



 気遣うような声と共に、緩く波立つ金色の髪の女性が現れる。


 瞳の鋭さを一瞬で消し去り、彼は振り返った。



「マリア。……いいえ、少し嫌な夢を見てしまっただけです。どうしました?」


「あ。昼食の準備ができましたので、小屋の方へお呼びしようと……。」


「ああ、すいません。今行きますよ。」



 ニッコリと笑って返す彼に、マリアはわずかに頬を染めてうつむいた。





                  ☆





 セレンやクィーゼルにせがまれて、スウィングがもう幾つめかも分からない遠方の街の話をし終えた時、前方に、夕空を背に立つ黒々とした巨大なみねと、そのふもとに広がる深緑の森が見えてきた。



「あれが?」とエルレアが尋ねる。


「そう。あれがブリランテ山脈と、ドルチェの森よ。」



 シャルローナの周りの空気が張り詰めるのを、エルレアは感じた。



「森の中へ進める?」シャルローナが御者へ問いかけた。


「一応、道のようなものはありますが……もう随分使われていないようです。草がひどい。」



 若い御者は戸惑った声で返す。



「進める所まで進んで頂戴。あとは自分たちで歩くわ。」



「は、はい。かしこまりました。」





                  ☆





「う……気持ち悪い……。」


「ついて来れないようなら、ここに置いていくわよ。」



 姉のエルレアに支えられて馬車から降りるセレンを見て、呆れた様子でシャルローナが言う。


 荷物を背負って馬車から降りたクィーゼルは、「ん~!」と思い切り背伸びをして、肩を鳴らした。



「それにしても、こんなに時間がかかるとは思わなかったな。日の入りまで2時間くらいしかないけど、どうする? シャルル。」



 スウィングは外していた剣をベルトに差して言った。


 エルレア、スウィング、シャルローナ、セレン、ニリウス、クィーゼルの6人の前に広がるのは、一つの街がスッポリ入ってしまいそうなくらい広大で深い森と、その森をすそに纏ってそびえる黒々とした高い山だった。



「入るわ。」



 即座に答えると、シャルローナは一歩前に出て振り向き、全員の顔を流し見る。



「物音がしたり、変なものを見たりしたら必ずすぐ知らせること。決して皆から離れないこと。分かったわね?」


「……あ。」



 小さく声を漏らしたのはニリウスだった。直後、ビュッという音と共に何かがシャルローナの頭の横をすり抜ける。


 ビィィィン、と、矢がシャルローナのすぐ後ろにある木に刺さって震えた。



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