第十四章 苛立ちの理由(第二部)
「お嬢。大丈夫か? なんか顔色悪いぞ」
小屋から出ると、朝食の用意をしていたクィーゼルから声をかけられた。
「……平気だ。原因なら分かっている」
昨晩の衝撃がまだ収まっていないのもあるが、先ほどのスウィングの様子も気がかりだった。
スウィングも顔色が悪かった気がする。
どことなく元気がないというか、彼らしくない雰囲気だった。
スウィングとシンフォニーは、やはり似ている。
多少の事では動じず、いつも周りを安心させるように笑ってみせるのだ。
その彼があんな態度を取るのは、きっと何か重大な事件があったに違いない。
昨日の夜、おやすみと声をかけられた時は普通だった。
何かあったとすれば、今朝だろうか。
エルレアが考え込んでいるうちに、テーブルに全員が揃い、マリアは紅茶を丁寧に淹れ、クィーゼルはそれを運び始めた。
やがて、全員で朝食をとり始める。
「変な光景ね」
にべもないシャルローナの一言に、場の空気が一瞬だけ止まる。
エルレア、セレン、クィーゼル、ニリウス、第二皇子スウィング、シャルローナ、第一皇子シンフォニー、マリア、ユリアス。
確かに、一晩経って冷静な頭で眺めると、一つのテーブルで揃って食事を取るには立場も性格も違いすぎて異様なメンバーではあった。
「いいんじゃない? たまには」
スウィングが和やかに言って場を取りなす。
エルレアはその様子を見て、少し安堵した。
いつもの彼だ。
マリアは、少し離れた位置に座って朝食を取っている金髪の少女の傍に歩み寄ると、静かに声をかけた。
「あの……エルレアさん。この後、少しお時間をいただけますか?」
「……はい。構いません」
「ありがとうございます」
マリアは少しだけ微笑んで、自分の椅子に戻っていった。
美味しいはずの焼きたてのパンは何の味もしなかった。
エルレアはパンを喉に通すためだけに紅茶を飲み、最後に果物を口に運んだ。




