第八章 隠された本質(第四部)
従妹には、強がる癖があった。
本当は嫌な癖に、泣きたい癖に、ワガママを言いたい癖に、辛い癖に、決して表には出さない。
無理をして、どんなことでも耐える。
その姿は立派だと思ったが、彼女は必要以上に無理や我慢をしているように思えた。
祖母の家の領地にある森で迷った時、彼女は木の根の間に泣きそうな顔でうずくまっていた。
名前を呼ぶと、よっぽど恐ろしい思いをしたのか彼女は自分にしがみついてきた。
その小さな身体が震えていた事を覚えている。
熱を出して寝込んだ時も、心配になって訪ねてみれば思った通り強がって、一人で苦しんでいた。
彼女は、ごく普通の女の子だ。
人より強い訳でも丈夫な訳でもない。
だから彼女が強がらなくてもいいように、周りが気を配らなければいけないのだ。
せめて彼女の悪い癖に気付いた自分は、できるだけ彼女を支えてあげなければと思った。
気付いていた。
彼女が自分の前でだけ浮かべる笑顔に。
けれど、それはきっと『特別』という意味ではないとスウィングは思った。
元々あれが、彼女の本来の笑顔であって、他の人間の言動や雰囲気が、それを封じてしまっているだけなのだ。
だから、もし誰かが自分のように彼女の癖を見抜けば、そしてその誰かが、彼女の苦しみや辛さに気付いて癒すことができれば、彼女はその誰かの前でもきっと本来の自分を解放するようになる。
沢山の人が、気付いてくれればいい。
彼女の弱さに。
そしてそれすらも愛してほしいと思う。
それはスウィングがずっと願い続けている事だった。