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第八章 隠された本質(第二部)

「はい」

 マリアはスウィングをじっと見つめる。シンフォニーの隣に立つと小さく見えるマリアも、スウィングとの身長の差は余り無いらしく、わずかに頭を上に向けるだけで視線が合う。


(あれ?)

 マリアの顔を見返したスウィングは、ある事に気が付いた。

「私の顔に、何か……?」


 困ったような顔をしたマリアに、慌ててスウィングは謝る。

「失礼しました。どうして兄と一緒に皇宮を出たんですか?」


 いや、それよりもまず、どうしてこんな山奥の小屋に住む娘が皇宮の使用人になどなれたのか。

 スウィングにはそれも疑問だった。


 すると、そんなスウィングの心を読み取ったかのようにマリアは苦笑し、口を開いた。

「私は、フィデル地方のアルザス公爵家の大奥様に、知人のツテで雇われました。」

「お祖母様に?」


「お祖母様?」とエルレア。

「うん。母さんの実家がアルザスでね。兄さんはよく遊びに行ってたけど……あ」


「ええ。そこでシンフォニー様にお会いしたんです。私は大奥様の身の回りのお世話をしていましたから、お会いする機会が何度もありまして」

「なぁマリア姉。俺、もう地下にこもっていい?」


 ユリアスが退屈そうな声で訴えた。

「ええ」

 銀髪の少年はマリアの横をすり抜け、台所の方へ行くとしゃがみこんだ。


 そして、床に埋め込まれた扉の取っ手を握ると力をこめて持ち上げる。


 扉の下には階段があるらしく、ユリアスは慣れた様子で床下へと消えていき、床板にもなっている扉を最後にばたりと閉じた。


 エルレアは興味深そうに見つめていたが、思い出したようにマリアの方に向き直る。

 スウィングも、その出来事で一瞬飛んでしまっていた話の内容を思い出した。


「兄は、何のために貴女を皇宮に招いたんです?」

 その問いかけに、マリアは言葉を詰まらせた。

「言えない理由ですか」

「……私の口からは」


 クィーゼルが面倒くさそうに舌打ちをする。

「……ったく。はっきり言やいいだろ。回りくどい質問ばっかしやがって。つまり、第一皇子があんたを連れてるのは、あんたが第一皇子の女だからか、って事だよ!」


「え……っ!? いいえ! とんでもありません! その誤解はシンフォニー様に失礼です!」

 突拍子もない事を言われた、というようなマリアの反応。


「だったらなおさら理解わからねーな。どうして“あんた”なんだ? やましい理由じゃないなら答えろよ」

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