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CANDY  作者: MIZUKI
18/22

8. -1 帰国

僕はスーツケースを閉じると、狭いながらも住み慣れたホテルの部屋をぐるりと見回した。


半年以上の滞在中、何度か部屋を変えてもらった。

今の部屋は角部屋なので窓が多くて気持ちが良かった。

僕は心の中でお世話になりましたと礼を言うと、部屋の扉を閉めた。


通路で、ベッドメイクのおばさんに会った。

英語は話せないが、気が利く人で、服の洗濯なども頼んでない時も気にかけてきれいにしてくれていた。


僕は一応英語で例を伝えて、そしてデパートで買ったお菓子と香りの良いハンドクリームを手渡した。

彼女の働いている手がいつも気になっていたのだ。

彼女は喜んでくれたようだ。

少し涙ぐみながら別れの握手をしてくれた。


僕はロビーへ降りて、まだ準備中のレストランへ入っていった。

ここのコックにもずいぶん世話になった。

調理場を覗くと、僕に気が付いたコックが笑顔で出てきた。


「とうとうお別れだね。」

「長い間、おいしい料理のおかげで仕事も頑張れましたよ。ありがとうございました。」


毎日ここで食事をする僕に、彼はメニューにあるものではなく、ごく一般的な家庭料理やあっさりした味付けのもの、そしてインターネットで調べたのか、味噌汁を作ってくれた。

ここの食事のおかげで、僕は不健康に太ることもなく、胃を壊すこともなく、ありがたい食生活を送ることができた。


コックと別れの挨拶を終え、フロントへ。

若いフロントマンが今月分の滞在費をプリントしたものを手渡した。

彼は若いだけあってあっさりしている。

サインをして彼に戻すと、不意に手を差し出された。

僕はぶっきらぼうなその彼と、初めて笑顔を交わして握手をした。


スーツケースを引いてホテルから出れば、いつも通勤で世話になっていた殆ど僕専用になっていたタクシードライバーが待っている。

僕は胸に温かなものがこみあげてきた。


彼と彼の家族のこと、僕との思い出話などたくさん話しながら、空港へ送ってもらった。


様々なことを思い返しながら、うとうとと夢を見ながら、僕は飛行機の中でまどろんでいた。


長く苦労した日々は、飛行機に乗っている数時間であっという間に遠い過去のものとなっていくようだった。


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