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CANDY  作者: MIZUKI
17/22

7. 気持ち

車は自宅に到着し、私は苦笑し通しのマネージャに手を振って家に入った。

「ただいま・・・。」

真夜中の帰宅なので、そっと中へ入る。

さすがに卓也も寝ているようだ。


私は明日の準備をしてからベッドに入り、もう一度留守電を聞いた。

酔って上機嫌のような穂積さんの声。

最後に何か言いかけてやめている。

何のことかは想像がつかなかったが、海外へ出発するときの自分を拒む雰囲気はなくなったように感じられて、それだけで嬉しかった。



実は私はまだ迷っていた。

穂積さんの帰国日に真っ先に会いたい、迎えに行きたいと思って教習所へ通っているが、それでもまだ迷っている。

はたして、私のこの気持ちはなんなのか。


穂積さんに会いたいと思う。声が聴けると嬉しい。

でもそれは好きな気持ちなのか、兄のように慕う気持ちなのか。


最後に会った日、穂積さんは私の相談相手をやめる気でいた。無関係になろうとしていた。それがわかったとき、私はどうしてもそれを受け入れたくなかった。穂積さんが私の中から消えてしまうのは嫌だった。


相談だけじゃなくもっと他愛ない話も一緒にしたいと思った。

穂積さんの仕事の話も聞いてみたい。

ドライブにも行きたい。たまには卓也も一緒に三人で遊ぶのも楽しそう。

何気なく、いつも近くにいてほしい。


これはお兄さんに対する思い?それとも好きな人に対する気持ち?


私との些細な関係を断ち切ろうとしたことを問い詰めた時の、あの時の穂積さんの表情を鮮明に覚えている。

初めて見た、男の人のあんなに切なそうな表情。

それを見て、私も切なくなった。

帰り際に飛びついた時に抱きしめられて、嬉しかった。


そう、嬉しかったんだ、あの時。

やっぱり好きってことなのかな。


でも。

それはそれで色々と考えてしまう。

好きになることに年齢はあまり関係ないと思っているけれど、もしも世間にばれた時、そしてもしも別れるようなことになったとき、ごく普通のサラリーマンの穂積さんはどうなってしまうのだろう。


その事だけで仕事に大きな影響があるのではないだろうか。

好きになるならその人の一生を考えて向き合わなければならない相手なんだ、多分。

結婚という意味だけじゃなくて。


正直、帰国のフライトを教えてくれるか不安だった。

穂積さんの連絡先は知らないし。

でも、約束通り連絡をくれた。何か言おうとしていた。

ここでじっとしていられる私ではない。

気持ちを伝えるかどうか、それはぎりぎりまで考えるとしても、迎えに行こう。

私が歌番組の司会をした時に労ってくれたように、私もお疲れ様と直接伝えたい。


穂積さんには今まで頼ってばかりだけれど、穂積さんのことも聞いてあげたい。意見なんてできないけれど、聞いてあげたい。


色々と考えながら、私は少しずつ眠りに落ちていった。


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