第11話:子供の頃の僕は…~アドレア視点~
“アドレア、お前にはこの国で非常に珍しい魔力が宿っている。いいかい?魔力は使い方を間違えると、己を滅ぼしてしまうほど恐ろしい力があるのだよ。まずはしっかり使いこなすことを覚えなさい”
物心ついたころから、父上に言われていた言葉。僕はこの国では非常に珍しい“魔力”を持って生まれてきた。ただ、魔力を操るのは非常に難しく、幼い僕はいつも魔力を使いこなせず苦労していた。
魔力の力が強いせいで、僕の体の中で魔力が暴れ、高熱を出すことも多かった。魔力を抑えるためには、体と心を鍛える必要があったが、ひ弱な僕はどんなに鍛錬を行っても、中々力がつかない。
次期公爵になるために勉学にも励むが、魔力が僕の体に負担をかけているせいか、頭が上手く働かず、勉学も進まない。
魔力なんか持って生まれてきたせいで、何もかもが上手くいかないのだ。どうして僕は、魔力なんて持って生まれてきたのだろう。魔力さえなければ、僕はこんなに苦労をせずに生きられたのに…
魔力なんて大嫌いだ。そもそも僕以外、魔力を持った人間なんて他国から派遣してもらった公爵家専属の魔術師と、王宮に数名いる魔術師くらいだ。でも優秀な彼らには、僕の苦労なんて分らない。
誰も僕の苦労を知らない。僕はこのままずっと、厄介な魔力と付き合っていかなければいけないだなんて…
いつしか僕の心は歪み、孤独感が増していく。
そんなある日
「お前はいつまでたっても魔力をうまくコントロールできないどころか、貧弱で勉学も進んでいない。このままでは、次期公爵の座を譲る事はとてもできない。今からお前は、王都の街に放り出すことにした。荒くれ者にもまれながら、世間の厳しさを身をもって体験してきなさい」
僕が12歳の時、父上がそんな事を言いだしたのだ。正直僕は、父上が言っている意味が分からなかったが、ボロボロの服に着替えされられ、人気の少ない路地裏に1人放り出された。一体何が起こっているのか分からず、オロオロするしかできない。
その時だった。怖そうな男たちが、こちらに近づいてきたのだ。
「何だお前、見ない顔だな」
「こんなボロボロの服を着ているから、孤児かなにかか?でも、男なのに綺麗な顔をしているな。これは高く売れるぞ」
今この男、高く売ると言ったか?なんなんだ、こいつは。僕はこれでも公爵令息だぞ!そう思ったが、今の身なりは確かに孤児にしか見えないか…
こんなボロボロの服を着せ、こんな悪そうな男たちがいる場所に僕を1人置いていくだなんて…
そうか、父上に捨てられたのだな…
魔力もうまく使いこなせない、武術も勉学もまるでダメ、そんな僕に嫌気がさして、ここに捨てたのか…
でも、もうどうでもいいや。この国で珍しいと言われる魔力なんか持ったばかりに、僕はずっと孤独だった。何もかもうまく行かずに、辛くて悲しくて。こんな生活から抜け出せるのなら、売られるのも悪くはないだろう。
全てを諦めた僕は、そのまま俯く。
「お前、泣き叫んだりしないんだな。そうか、もう諦めたのか。それなら話は早い」
顔をゆっくりあげると、男がニヤニヤと笑っていた。その顔を見た瞬間、血の気が引いていく。
怖い!やっぱりこんな男たちに連れていかれるのは嫌だ!
「離してくれ!」
必死に抵抗するが、びくともしない。それどころか
「何だ、急に暴れ出して。まあいい、早くこいつを売りに行こうぜ。結構高く売れそうだ」
僕を担いだ男。バタバタと暴れるが、全く歯が立たない。恐怖から涙が溢れそうになる。僕は男の子だ、こんな事で泣くだなんて。でも…
父上に捨てられた僕は、きっともう誰も助けに来てくれないだろう。恐怖と絶望が僕を支配した時だった。
「あなた達、その子を離しなさい。嫌がっているでしょう」
可愛らしい声が聞こえたのだ。
この声は…




