暑くなったら怪談! なんてのは、もう言わないご時世だよね。常に、いつも、怖い話を皆聞きたがる。これは、イマドキの怪談の一つ! ウソかホントかはしらないよ?
某掲示板に立てられたスレを見つけたのは梅雨とかウソだろという暑い日だった。
今日のお料理という平和過ぎるスレを見るつもりだったのに、ついうっかりよそ見をしてしまった。
ネタなのか釣りなのか、よくわからない話がいくつか書き込まれている。
スレのタイトルはイマドキの怪談。オールジャンル。救援は、というところが文字化けしている。
ローカルルールの記載と新規スレを立てる番号が指名されていた。
残業終わりにきさらぎ駅。職場よりマシな気がする。
猿とバトルなう。増援求む。
すれんだーな男性に追いかけられています。ストーカーですか?
白ワンピの長身美女に監禁されています。楽しいです。
こういうものに必要な不気味さが皆無。
レスもブラック企業www、GPSで位置送れ、よっしゃ実績解除しに行くぜ! と楽しげだ。なお、位置情報は文字化けしていた。
皆がネタとして消化しているっぽいなとスクロールしていく。
「死人が更新する話?」
そこにあったのは、こういう話だった。
―――
昔々の5年前。
従兄が亡くなった。本人のスマホやPCはパスワードがかかっており、中身を見ることができなかった。伯父と伯母はそのまま供養しようと解約、PCも破棄した。幸い、サブスクを重課金していることもなかったのでそれで問題なかったそうだ。
実家帰省したときに、従兄の話になった。
別の従弟にこの一年ほど前にメールが来た。最初はみんな元気? という文面。日付は亡くなった年だったのでなにかの間違いで届いたのかと感動さえしたらしい。
そこで思い出した。
そういえば、SNSを使っていてアカウントを聞いていた。メールを送るような甲斐性があるなら、SNSのほうもなにか仕掛けている可能性はある。
従兄は少しばかりいたずら好きだったからだ。面食らった顔を見て意地悪く笑うような性根の悪さをよく言えば、だが。
そこにあったのは、変わらず更新されているページだった。
日付を遡って見れば定期的に更新されている。従兄が生きているなら書きそうなことをずっと書き綴っていて、いいねや返信さえもしていた。
本当に、まだ、いるみたいに。
さすがにおかしい。
SNSを管理している会社に乗っ取りではないかと問い合わせるとこんな返事がある。
故人への配慮により、削除ではなくAIでの運用を始めております。また、長期利用のない場合にはAIでの利用をすることは利用規約にも記載されております。
改めて見れば一年ほど前に規約変更されており、研究目的で利用に同意してもらうとあった。
AIの人格育成としての情報として、また、有用な情報の削除をしないための苦肉の策と。
でも、おかしくないだろうか。
間を空かず、ずっと、投稿されている。規約が改定される前から、ずっと。
―――
うひぃっと悲鳴を上げそうになった。
安心できる材料とスクロールしていく。予約投稿じゃない? というレスに少しほっとする。しかし、時事ネタもいれていると反論される。
それならばやはり乗っ取りではないかと指摘される。ごもっとも。そうだよねぇ。はぁ、コワがって損した
ごはんのレシピを探す旅にでなければ、と思いつつもなぜか指はスクロールしている。
最後にあったのはページのアドレスだった。
……好奇心は人を殺すからなぁと閉じる。
かちっ。
マウスが×で閉じるはずが、意図せずズレた。
よく見慣れた時間を溶かすSNSのあるアカウントが出てきた。
怖いページかと思いきや普通。というかこれ、私のフォロワーでは?
今日もいつもと変わらず、雑談とお昼の写真を投稿していた。おいしそうないつものお店の……。いや、よく見ると変だった。文字が溶けた箸袋。和食と見えたけど、皿と料理の境界が歪んでいる。
店の名前を書かないのはいつものことだけど。
え、これ、前から?
怖くなって前の写真もさかのぼる。どれもぱっと見、ちゃんとした料理に見えた。それなのにどこかおかしい。おいしそうと皆がコメントをするのに店の名前が出ることもない。千人単位のフォローしている人がいるのに? これで一件も特定されないとかある?
……。
そ、そういうこともあるよね! 強引に納得させてフォローを外すことにした。
向こう側にいる何かがやばいというのだけはわかる。人間であろうとなかろうと虚構を延々と語るものは正常とは……。
は? エラー? シャットダウン!?
ちょ、バックアップ!!
無情にも画面は真っ黒になった。そして、再起動したあとには同じページが広がっていた。
フォローを外す前に。
ミュート、ブロックとよぎったがいいことがある気がしない。
そう思っているうちにDMが届いた通知が来る。
『やあ、友人。君とは長い付き合いだし、この先も付き合っていたいのだよ。』
友人、君死んでるそうじゃないか、じゃあ、君は誰なんだい? そう問いかけるべきか。
返事のために広げた白い画面を眺めて私は……。




