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18.自己紹介をしてオリエンテーションのチーム分けをしました

「皆さん、私はこの一年E組の担任に任じられたコリンナ・マイヤーです。担当は詩文です」

 マイヤーが自己紹介をした時、生徒の一部がざわめいた。


「先生。先生はマイヤー伯爵家の方ですよね?」

 一人の少女が手を上げて質問した。

「貴方のお名前は?」

「申し遅れました。私はハンネローレと申します。ゴモーレ商会の会頭の娘です」

「えっ、あの子ゴモーレ商会の娘なんだ」

 イレーネが思わず呟いてくれた。

 後で聞くと、何でも帝都では五本の指に入る大商人の娘だそうだ。


「ハンネローレさんね」

 マイヤーは手元にメモしながらハンネローレを見て答えた。

「学園で実家の話をするのもあまりよくありませんが、私の母が現マイヤー伯です」


「えっ、そうなの?」

 アンジェが思わず声を上げていた。

 俺もマイヤーが帝国の伯爵の娘だとは初めて知った。

 マイヤーは元々アンヌ付きの侍女で20年近く一緒にいたのだが、実家のことは聞いたことがなかったのだ。


「マイヤー家は王宮の礼儀作法指南をされる事が多いと伺っているのですが、先生は礼儀作法の先生ではないのですか?」

「学園には私以上に礼儀作法に詳しい先生もいらっしゃいますから、今はその方が担当していらっしゃいます」

 ハンネローレはぶしつけに失礼な事をマイヤーに聞いていたが、マイヤーは全く動じずに平然と答えていた。さすがマイヤーだ。

「そうなんですね。ありがとうございます」

 お礼を言ってハンネローネが引き下がった。


「では、端から自己紹介をして頂きます」

「はい。ニコラウス・モルゲンです。父はローエンで騎士をしています。将来の目標は騎士になることです。よろしくお願いします」

 その生徒は何故か俺の方を目をキラキラさせて見てくれたんだが……


「俺はオスカー、フッセン男爵の嫡男で、いずれフッセン男爵家を継ぐ男だ」

 自慢げにオスカーが叫んでくれた。

 将来男爵を継ぐのを自慢したいらしい。


 まあ、高々男爵家と言う無かれ。そもそも帝国内において貴族の家族は祖父母からその当主家族とその直系家族を含めても0.1%もいないのだ。そもそも嫡男でない限りその代までが貴族でその次男や三男の家族は貴族でなくなる。帝国では厳格に一子相伝が定まっている。だから次男三男は必死に男の家族のいない貴族の令嬢に嫁ごうとするし、貴族の令嬢達も必死に貴族の嫡男に嫁ごうとする。だから学園では皆死にもの狂いで婚約者のいない貴族の嫡男や男兄弟のいない貴族の令嬢に群がるのだ。


「何他人事宜しく言っているのよ。ラフィーも子爵家当主じゃない。女の子が虎視眈々と狙っているわよ」 

 後でアンジェに言われたが、こんな爺に群がってくる酔狂な女などいないだろう。

 それはアンジェの欲目というものだと思うんだが……

 俺は全く心配していなかった。


 皆次々に自己紹介をしていく。


「イレーネです。ハンニバル辺境伯家で両親は働かせて頂いています。将来は私も母のような侍女になりたいです」

 拍手が起こった。


「次は悪役令嬢だぜ」

 言わなくても良いのにオスカーが叫んでくれた。

 半数はその声にぎょっとしたが、

「本当ね」

「よくここまでこれたわね。本当に図太いわ」

 一部生徒があざ笑ってくれた。

 俺がぷっつん切れかた時だ。


「そこ、オスカーさん」

 マイヤーがニコリと笑ってくれた。

 これは最悪の顔だ。

 マイヤーがこんな顔をした時は碌な事がない。


「はい!」

 さすがのオスカーもビクッとした。


「この学園内では基本的に全ての人間は平等であり、王族であろうが、皇室であろうが、気にする必要はありません。それは判っていますね」

「はい。当然です」

 当たり前だという顔でオスカーは頷いた。


「ただ、あなたはこの学園にフッセン男爵家を代表しているのも事実です。あなたの言動一つ一つが男爵家の言動だと捉えられます。そこは判っているのですか?」

「その点も理解しています」

 オスカーは大きく頷いていた。


「なら良いのです。あなたが理解していないような言動をしていたので私は驚いただけです」

 マイヤーはまたしても作り笑いをしてくれた。こんな顔のマイヤーは碌な事はないのだ。


「俺は別に父の意に反した行いはしておりません」

 胸を張ってオスカーが宣言してくれた。

 おいおいそれはちょっとまずいのではないかと俺は思った。

 何しろアンジェとエーベルハルトの婚約はこの帝国の皇帝と国王の間でなされているのだ。

 それに対して公然と反対していると言うような物だ。


「そうですか。それは残念ですね」

 マイヤーは首を振ったのだ。

 そして、もう一度ニコリと笑ってくれた。


「これは皆さんに言うつもりはありませんでしたが、一応お伝えしておきますね。私はここには現皇帝陛下の命でいます。その旨をお父上にももう一度じっくりとお考え頂きたいと伝えてもらえますか?」

「はい?」 

 オスカーはいぶかしげな表情をした。


 そうか、マイヤーはバルトの命でアンヌの面倒を見ていたのか。

 俺は初めて知った。

 王宮で右も左も判らないアンヌにマイヤーはいろんなことを教えてくれていた。

 それもバルトのお陰か。

 俺はバルトに感謝したくなった。


「次期女伯爵の私が何故このEクラスの担任になったか合わせて考えてもらえればおわかり頂けると思います」

 能面に戻ってマイヤーが言うと、


「では、アンジェリーナさん。自己紹介を」

「アンジェリーナ・フランクです。元々母は平民なので、皆さんとも仲良く出来たら良いなと思います」


 パチパチとまばらな拍手が起こった。


 何故かその自己紹介にマイヤーは頭を抱えていたが……


 もう少しエーベルの婚約者らしくしてほしかったのだろうか?


「次はラファエルさん」

「ラファエル・サンティーニです。帝国は20年ぶりであまりの変りように驚いていますが、皆と仲良く出来たらと思います。宜しく」

 俺の自己紹介にも拍手は起こった。

 騎士志望の子からの拍手が多かったように思う。

 オスカー一行だけは憎々しげに俺を睨み付けていたが……



「では自己紹介も終わったところで、明日は新入生の歓迎も兼ねてオリエンテーションがあります。オリエンテーションは五人一組でチームを作っていただいて挑んでいただきます。今自己紹介を聞いていただいたと思うので五人でチームを作って下さい。出来たら今日は終わりです」

 マイヤーの合図で、無皆手近な相手と話し出した。


「姫様、どうします?」

 俺が聞くと

「はい。私を仲間に入れて下さい!」

 アンジェの前に座っていたイレーネが手を上げて頼んできた。


「俺は良いけれど姫様は?」

「えっ? まあ良いけれど」

 アンジェは何故かもう一つ賛成はしていないみたいだったが、変なのが入ってくるよりは余程良いだろう。


「あのう、俺も入りたいんですけど、良いですか?」

 騎士志望のニコラウスが声をかけてきた。


「俺は別に構わないが」

「私も良いわ」

 アンジェはニコラウスにはあっさりと頷いた。


「えっ、ニコラウスだけずるい」

 その後ろから女の子が声を出した。

「君は確か騎士志望のヒルデだったか」

「はい、剣聖様に名前を覚えていただいて感激です」

 その子は両手を組んで喜んでくれた。


「おいおい、大げさすぎるぞ」

「そのような。魔王を倒された剣聖様と一緒のパーティーを組めるなんて両親に自慢できます」

「ちょっと、あなた、まだ認めたなんて言っていないわよ」

 何故かアンジェが横から食ってかかっていたが、


「まあ、姫様、丁度五人だし良いではないですか」

 俺がそう取りなすと、

「ありがとうございます」

 ヒルデは俺の手を取らんばかりに近づいてきたんだが……


「剣聖様、握手しても良いですか」

「何言っているのよ。あなた、ラフィーに近づかないで」

 俺とヒルデの間にアンジェが入ってきてヒルデを睨みだした。

「別に良いじゃないですか? 減るものでも無いし」

「減るから駄目!」

 アンジェも訳の判らない事を叫んでいるし、


「おおおお、いきなり三角関係勃発か」

 とかイレーネが喜んで訳の判らない事を言い出す始末だ。


 このパーティーでちゃんとやれるんだろうか?

 俺は少し不安になってきた。

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