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17.偉そうな男が俺の進む前に足を突き出してきたので思いっきり踏みつけてやりました

 エーベルトは若いにも関わらず、演説するのが好きみたいだった。

 延々20分くらい話してくれたのだ。

 その大半が帝国がいかに国力が高いかということに費やされていたと思う。

 国力というよりも軍事力だと俺は思うのだが……

 何しろこの帝国は騎士の数が我がフランク王国に比べて倍以上いた。


「諸君、我が帝国はこの大陸最強の国家であって、他国からの圧力に屈したりこびへつらったりしない。それだけは信じてほしい」

 最後にアンジェをチラリと見て言い切るのは止めてほしかった。


 皆が盛大な拍手をした。


 こちらをチラチラ見る奴らもいたんだが、一体何なんだろう?

 帝国が強いのは元々知っているのだが……


 入学式の式典は終わり、その後俺達は各クラスに移動することになった。

 Eクラスがどこにあるか知らない俺達は

「ねえ、そこのあなた。Eクラスってどこにあるかご存じ?」

「えっ、あなた様は悪役令嬢……すみません。知らないんです」

 アンジェが傍の女の子に声をかけたが、女の子は慌てて逃げていった。


「ねえ、ラフィー、悪役令嬢って一体何なの?」

「さあ」

 俺は取りあえず首を振っておいた。アンジェにはラファエルが前世の記憶持ちの男に変わってしまったことは全く話していない。ラファエルの前任者が悪役令嬢が何かなんて知る訳は無かった。


「何でも、愛し合っている皇子殿下と聖女様の仲を引き裂こうとしゃかりきになる令嬢の事だそうですよ」

 後ろから女の子が声をかけてきた。


「貴方は誰なの?」

 警戒してアンジェが尋ねると、

「申し遅れました。私はイレーネ。クラーラ様の侍女をやっています」

「ああ、クラーラ嬢の。じゃあ、クラスはAクラスなのか?」

 俺が尋ねると

「Aクラスは高位貴族か王族でないと中々入れないですよ。Bクラスがその下の子爵ないし男爵家の子弟で、CクラスからEクラスは残りの男爵家か文官、騎士、魔術師、使用人、商人など平民の子弟の成績順ですね。私は両親が爵位無しの使用人ですねのでAクラスは無理でした。私よりはアンジェリーナ様や伝説の剣聖様の方がAクラスだと思っていました」

 イレーネが学園長に尋ねようとしていたクラス編成の仕組みをあっさりと教えてくれた。


「そうだよな。俺はともかく、アンジェリーナ様がEクラスというのは問題だよな」

 俺が学園長にどうやって抗議しようかと考えていると、

「私はラフイーと一緒だったらEクラスで良いわ」

 アンジェが突然首を振ってくれた。


「まあ、そうですね。アンジェリーナ様さえ良ければその方が良いのかもしれません。何しろむ貴族の世界は色々ありまして、A組になられてもクラーラ様お一人では中々アンジェリーナ様をお守りできなかったかもしれません。何しろ、上級生の貴族の間では、ミーナ様を貶めるためにフランク王国からアンジェリーナ様がやってくるって噂になっていて、中々大変みたいです」

 イレーネがまたしても俺が気にしていた噂のことを事を教えてくれた。


 イレーネによると聖女のミーナは三学期の初めからこの学園に編入してきて、エーベルト仲良くなると、悪役令嬢のアンジェリーナが来春やってきて、ミーナを虐めまくると神からのお告げがあったというのだ。それが上級生に広まって、この学年にも上級生に兄や姉がいる者にはその噂が広まっているのだとか。


「えっ、そうなの? 私は別にエーベルハルト様とあの淫乱聖女の間を邪魔するつもりはないわよ」

 あっさりとアンジェが宣言してくれたんだが……

「いや、姫様はエーベルハルト様の婚約者ではないですか?」

 俺は思わず叫んでいた。


「だってそれを決めたのは私のお父様とこの帝国の皇帝陛下だし。私は別にあんな皇子のことをどうとも思っていないもの」

 あっけらかんとアンジェは話してくれた。

 変だ。エーベルに出会えばアンジェはエーベルにひかれるようになると思っていたのに、アンジェは全くエーベルのことを気にしていなかった。


 まあ、その方がアンジェが悪役令嬢にならなくて良いのか?

 俺にはよく判らなかった。


 入り口の座席表を見ると一番右奥がアンジェ、その隣が俺、アンジェの一つ前がイレーネだった。


 俺達がクラスに入ると、

「おっ、悪役令嬢様のお出ましだぜ」

 偉そうにふんぞり返っている男が叫んでくれた。

 俺がじろりと睨んでも、びくともしない。中々肝の据わった奴だ。

 俺は感心してその隣を通り過ぎようとしたときだ。

 その男が何をとち狂ったか、足をひょいと俺の前に差し出してきたのだ。

 俺はその足を踏みつけてやった。


「ギャーーーー!」

 男は悲鳴を上げて、足を抱えるとバランスを崩して盛大に転けていた。

 馬鹿だ。俺の足で蹴飛ばされて骨折しなかっただけ感謝しろと俺は言いたかった。


「き、貴様、オスカー・フッセン男爵令息様になんて事するんだ」

取り巻きの一人が俺に叫んできた。

「人の歩く先に足を出してきたんだ。普通はそのまま踏むよな。今のは軽くだが、本気で踏むと足の骨が折れるぞ」

 俺は親切に警告してやった。

「何だと」

「貴様やるのか」

 いきり立ったオスカーの野郎が立上がろうとしたときだ。


「何をしているのです!」

 そこに目を怒らせたマイヤーが入ってきた。

 どうやらマイヤーはこの一年E組の担任らしい。


「何でもないです」

 俺は慌てて椅子に座った。


 ここで騒ぎ立てたら下手したらお説教一時間コース確実だ。

 俺は経験上、というか前任者の経験だが、知っていた。


 男達がどう出るか少し心配したが、男達も慌てて自分の席に着いてくれた。


 俺は男達がこれで少しは反省するかと期待したのだが、当然そんな訳はなかったのだ。 


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