16.第一皇子の婚約者の王女が最低のEクラスに配属されたのが判明したので後で抗議しようと心に決めました
アンジェとエーベルが睨み合ってくれたときだ。
キンコンカーンコーン!
いきなりベルが鳴り出してくれた。
「ちっ、予鈴のベルだ。行くぞ」
エーベルはそう言うとミーナや取り巻き達と慌てて去って行った。
「悪役令嬢のあなたも覚えておきなさいよ」
捨て台詞を吐いてピンク頭もつんと顎を尖らせて去って行った。
「私達も急がないと」
「ねえ、悪役令嬢って来ないんじゃなかったの?」
「でも、あれはどう見てもミーナ様が予言された悪役令嬢よ」
「結局、ミーナ様とエーベル様の仲を邪魔する悪役令嬢は来たのね」
「来なくて良かったのに!」
女達の声が聞こえたが、一体どういうことなんだろう?
来なくていいって隣国の王女に対してあまりにも失礼ではないのか?
文句を言ってやろうとしたが、既に言った者はいなかった。
でも、アンジェが悪役令嬢として有名になっているってどういうことなんだろう?
やはりミーナは転生者なんだろうか?
これだけではよく判らなかった。
「ちょっとラフィー、私達も早く行くわよ!」
ぼうっと考え事をしていた俺は、アンジェに手を引かれて慌てて入学式の開かれる講堂に行った。
「ねえ、あの子じゃない?」
「あの子って何?」
「ほら、相思相愛のエーベルハルト様とミーナ様の仲を邪魔しに来た悪役令嬢よ」
「ああ、あの?」
皆、アンジェを後ろ指で指してくれるんだけど、こいつらなんだ?
俺はさすがにむっとした。
女どもに一言言ってやろうかと思ったのだが、
「ラフィー、時間はないんだから、私はラフィーと一緒だったら全然平気だから、私から離れないで」
アンジェに釘を刺された。
「ねえ悪役令嬢が連れているおじいさんは誰なの?」
「ちょっと、貴方たち、誰がじじいなのよ!」
俺が止める前にアンジェが切れて、俺に失礼なことを言った女に叫んでいた。
でも、じじいってそれはそれで俺はショックなんだけど……
そもそもアンジェ、君は今しがた自重しろって俺に言ったところだよな!
「そこ、何をしているのです。早く、席に着きなさい!」
先生が注意してきた。
「はい、すみません」
上級生っぽい女達が慌てて講堂の中に入っていった。
「あなた達もさっさと入りなさい」
「ま、マイヤーじゃない!」
俺はアンジェの声に驚いて俺達を注意してくれた先生を改めて見た。そこにはあきれた顔をしたマイヤーがいたのだ。
「アンジェリーナさん、私は今は教師です。マイヤー先生と呼びなさい」
「で、でもなぜここに?」
アンジェはとても混乱していた。
「詳しくは後です。あなた達は一年E組です。直ぐに席に座りなさい」
有無を言わさぬ声で命じてくれたのだ。
「判りました」
硬い表情のままでアンジェは講堂に入っていった。
「まさか、この年で入学されるとは思ってもいませんでした」
俺は横を通り様にマイヤーにそう声をかけられた。
「そちらこそ、先生として入られるとは想像だにしてませんでした」
俺はマイヤーを振り向いた。
「アンヌ様には最後までお子様の面倒は見るとお約束しましたから」
俺はマイヤーとハイタッチしたい気分だった。
そうだ。俺とマイヤーはアンヌとそう約束した仲だった。
「ちょっとラフィー行くわよ」
「ああ」
俺は慌ててアンジェに追いついた。
「何を話していたのよ」
「昔話です」
「何それ、私に言わない気?」
「そこ、早く席に着きなさい」
きつそうな赤い眼鏡をかけた女性の先生に注意された。
「「はい」」
俺達はE組の席を探す。
一年E組の席は一番右端だった。
EDCBAの順だ。
「おい、あれは悪役令嬢じゃないのか?」
「本当だ」
ここでも、ぼそぼそアンジェを見た生徒達の声がする。
俺がじろりと睨むと
「ねえ、でもあの子侍従を連れているの?」
「でも、あの人制服を着ているわよ」
「どう見てもおじさんよね」
「変なの!」
俺を見て今度は生徒達が言い出すが、言われるだろう事は予想していたので、俺は無視した。
叫びそうなアンジェを今度は手で制して、俺達は空いていた一番前の席に着いた。
そうそう、この年になってお兄さん呼びをしろとは言わない。
でも、おじいさんでなくておじさんだ!
あのくそ聖女今度会ったときに言い返してやろうと俺は心に決めた。
「おい、なんであんなおっさんが制服着ているんだ?」
「おかしくないか」
生徒達がざわめく。
俺はそいつらを無視して席に着いた。
俺の前で学園長が頭を抱えているのが目に付いたが俺は無視した。
まあ、こんなのは予想した通りだ。
横でアンジェがムカムカしていたが、俺はそんなアンジェの膝を叩いて首を振った。
俺を見つけて驚いた顔の来賓の男がいた。確か宰相のマインブルクだったかだ。
マインブルクは学園長のところに行って俺の方を見て二三話していたが、戻って行った。
俺はそれよりも壇上で俺達を憎々しげにつみめているエーベルが気になった。
「ええ、今日はお日柄も良く……」
しばらくしてから退屈な入学式が始まった。
俺はいつも式典は退屈なので寝ていたようだ。
良くバルトやアンヌに起こされていたそうだ。
「寝ないで下さいね」
とマイヤーにもよく注意されていたみたいだ。
マイヤーが遠くからこちらを睨んでいるの視線も気になったし……
でも、退屈な学園長の話はすぐに終わった。寝ないで良かった。
その後宰相が挨拶してくれて、何度か俺の方を見てくれたので俺はびくりとしたが、結局俺に触れてくれなくて俺はほっとした。
新入生代表はクラーラだった。
さすが辺境伯の娘だ。
「挨拶するのは私よりももっとふさわしい方がいらっしゃるのですが……」
て言って俺の方を意味深に見るのは止めてほしかった。
なんか男達の視線がビシバシと突き刺さるし、アンジェの気分も急降下しているのだが……
まあ、クラーラは見た目もきれいだし、男どもに人気なんだろう。
「我が帝国の学園に入学おめでとう。我が帝国の学園の学力は大陸一であり、例えそれは他国の王族と言えども例外ではない……」
そう言いながらエーベルは勝ち誇ったようにアンジェを見てくれたのだが、それはどういう意味だろう?
俺にはよく判らなかった。
「本当よね。王族なのに、最低のEクラスなんて」
「さすが悪役令嬢ね」
周りの言葉のお陰で、俺は少し理解できた。
どうやら、帝国の学園は成績順らしい。
そう言えば周りの生徒達は見るからに騎士志望か、見た感じ平民とおぼしき連中しかいないみたいだった。貴族らしい生徒達はAとかBに固まっているみたいだ。
そう言われてもアンジェは平然としていたが、俺は学園長を少し睨み付けた。
学園長がびくりとしていたが、こちらを無視してくれた。
俺がEクラスなのは判るが考えたら第一皇子の婚約者のアンジェがEクラスはまずいだろう。
俺は絶対に学園長に後で抗議することにしたのだ。




