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15俺と王女の前に婚約者が何故か出会っていない聖女と仲良く登場してくれて王女と喧嘩し始めてくれました

 そして今日は入学式だ。


「ふんっ!」

 怒ったアンジェに朝から俺は口をきいてもらえなかった。


「いや、姫様。本当に申し訳なかった」

 俺は頭を下げたが、

「絶対に許さない」

 ととりつく島もないんだが……


 いや、これはまずい。絶対にまずいぞ!


 乙女ゲーム『バイエルンに咲くピンクの妖精』では入学式の始まる前にヒロインと第一皇子エーベルハルトとの出会いがあるのだ。編入試験に受かって三年生に編入したヒロインが遅刻しそうになり慌てて走っているところに、アンジェを迎えに行くように言われて渋々馬車だまりに行こうとしたエーベルハルトとぶつかる。そのぶつかった途端にエーベルトとヒロインは恋に落ちると言うイベントだ。

 ぶつかったら普通は怒るだろう!

 そう思う俺は乙女ゲームには向かないのかもしれない……


 それはおいておいて、俺はなんとしても二人の出会いを阻止しようと思っていた。

 俺は阻止するだけじゃなくて、ヒロインの聖女ミーナの代わりにアンジェとエーベルハルトことエーベルの出会いの場を作ろうと思っていた。


 本来は一週間前に学園に来て試験を受けた後は、皇宮に乗り込んでバルトを使ってアンジェとエーベルの仲を深めさせようと思っていたのに、グスタフのせいでスケジュールがぐちゃぐちゃになってしまったのだ。


 こうなったらここでヒロインとエーベルが出会う前にアンジェとエーベルを出会わせるしか無いと俺は今日は早めに馬車で学園に乗り付けた。

 だけど、昨日裸を見たとかでアンジェが怒ってしまって口もきいてくれない状態になっていた。


 まあ、怒っていても婚約者のエーベルに出会って機嫌を直してくれたら言う事は無いのだが、元々アンジェはエーベルのことをなんとも思っていないみたいだった。前任者のラファエルの記憶をたぐってみたら、前に一度エーベルに手紙を書いてみれば良いのではと提案していた。マイヤーはそれに賛成してくれてアンジェに話してくれたみたいだが、本人は全然やる気がなかったようだ。散々やいのやいのとマイヤーに注意されて、最後は課題にして書かされたものの、義務感丸出しでアンジェは書いてくれて、何回も書き直しを喰らっていた。


 その時に練習で俺に書いてくれた手紙が俺の机の引き出しの奥底に残っていた。  


 それにはここまで育ててくれた感謝の言葉が延々と書かれていた。

『今まで苦労かけたので、今後は私が一生懸命努力するから、これから一生涯一緒に楽しく生活してくれたら嬉しいです』

 俺はその手紙を読んで涙したのだ。


 このようにアンジェには手紙の文才がない訳ではないのに、エーベルに対する手紙はおなざりだった。

 まあ、会った事も無いから仕方がないのかもしれないが……エーベルを一目見ればアンジェもエーベルに心惹かれるようになるんだろうか?


 俺としてはそんなアンジェをあまり見たいとは思わないが、ここはアンジェのためだ。心を鬼にしてアンジェとエーベルの出会いを演出しなければ……そう思っていたのに、アンジェの機嫌はとても悪かった。


 アンジェに悲鳴を上げさせた後は「ノックもしないで淑女の部屋の扉を開けるなんて最低だ」とセバスチャンにも怒られるわ大変だった。


 言い訳させてもらうと俺としてはまだ部屋に案内されて間もないから着替えなんてしてないと思っていたのだ。

 それにアンジェの裸なんて小さい時から世話していた俺は見慣れていたし……胸がないのを見られたとかアンジェが真っ赤になって怒っていたが、そんなのはとっくに知っていることだ。

 それを言うとまじで雷撃されそうだから言わなかったが……


 アンジェの雷撃は学園で教わる前に既に宮廷魔術師並だった。

 まあ、俺達が身を守るために練習させたというのもあるのだが……

 その雷撃を喰らったら俺でも命はやばいと思う。



 その上、アンジェとエーベルの出会いの場を作るために早めに来た俺は、その馬車だまりから校門を入ったところで固まってしまった。


 そうそこにはまたしても自分の銅像がでかでかと鎮座していたのだ。

 俺は俺の銅像が学園にまであるとは思ってもいなかった。

 昨日は裏口から入ったので気付いていなかった。


 もっとも今回の銅像は魔王を倒した俺達四人のパーティー全員が銅像になっていたのだが、俺が前に立って剣を構えていて一番偉そうに見えるのだが……


 絶対にこれもバルトの奴のせいだ。

 これではまるで俺が大陸の二大国家のバイエルン帝国の皇帝とフランク王国の国王を従えて魔王を退治したみたいではないか!

 まあ、二人は当時は皇太子と第一王子だったが……

 二人とも我が強くて本当に大変だった……

 当時を思い出して俺はうんざりした。


「お母様!」 

 一方のアンジェは俺の後に庇われたアンヌの像を見て息を飲んでいた。


 あのむかつく毒婦ベアトリスのお陰で、王宮にたくさんあった王妃アンヌの肖像画は殆どが破棄されたか倉庫にしまわれていた。離宮にはアンヌの姿絵もあったのだが、来る時にはしまわれていたように思う。アンジェは縁もゆかりもない学園に自分の母の像があってほっとしたんだろうか?


 でも、アンジェは何故か自分の母親を憎々しげに見ているような気がしたのは俺の目の錯覚か?


 そのアンジェが一歩前に出ようとしてよろけてくれた。

「おっと」

 俺は慌てて支えようと手を差し伸べたら何故かアンジェが俺に抱き付いてきたんだが……


 えっ、何故抱き付く?

 アンジェは何故か勝ち誇ったようにアンヌの像を見ているような気がしたが、気のせいだろう。


「まあ、さすが悪役令嬢アンジェリーナ。いきなり初老の男を引っかけて抱き付いていますの?」

 俺達の後から甲高い女の声がした。

 おい、初老の男って誰だ?


「えっ?」

 そう思いいつ振り返って俺は目を見開いた。


 そこにはピンク頭の小悪魔のような顔をしたヒロインのミーナが、これまた不機嫌そうな皇太子の第一王子のエーベルハルトに大きな胸を押しつけて抱き付くように歩いてきた。


 何でこいつらもう知り合っているんだ?

 ゲームでは入学式ギリギリに来たヒロインとエーベルが出会うはずなのに、まだ時間が大分あるぞ!

 俺は混乱した。

 それにアンジェのことを悪役令嬢って言うなんてどういう事だ?

 こいつもひょっとして転生者か?

 俺は慌ててミーナを見た。


「何を言っているのよ。あなたこそ婚約者のいる男に、でかい胸を押しつけて歩くなんて、本当に噂通りの破廉恥令嬢よね」

 アンジェが言い返していた。


「な、何ですって、誰が破廉恥令嬢なのよ」

「そうだ。貴様。ミーナに失礼だぞ」

 ピンク頭のミーナに続いてエーベルまでミーナを庇って言いだしてくれた。

「失礼な男ね。婚約者の前で他の女といちゃつくなんて、一体どういう教育を受けているのよ」

「な、何だと、他の男とイチャイチャしてる貴様に言われたくないわ」

「ラフィーは私の護衛騎士よ。私が転けそうになったときに助けてくれただけじゃない」

「ミーナもそうだ。恐ろしい悪役令嬢を見に行くって言うから付いてきただけだ」

「付いてくるのに何でその淫乱女の胸を押しつけられて鼻の下を伸ばしているのよ」

「誰が鼻の下を伸ばしているんだ! お前こそ、助けてもらって抱きつく事は無いだろう」

「何ですって!」

「何だと!」

 いきなり二人は睨み合ってくれたのだ。

 これがフランク王国の王女のアンジェリーナとバイエルン帝国の皇太子の息子のエーベルハルトの出会いだった。

 俺にとってはもう最悪だった。




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