1.気のあった女の子に馬鹿にされて胸痛で意識を失ったら、見たこともない美少女に抱きつかれていました
幾多のお話の中から私のお話を見つけて頂いてありがとうございます。
「おい、美奈、お前餅田さんが好きなのか?」
その言葉に俺はドキリとした。
今日は会社の後輩達が俺のお祝いで飲み会を開いてくれていた。
俺がトイレから帰ってきたら、若手の営業の寺田が、俺のお気に入りの美奈ちゃんに俺の事を聞いている声が聞こえた。
「そんな訳無いじゃん。あんなキモオタじじいなんて眼中にないわ。飲み会の金づるになるからヨイショしているだけよ。60なのに、40に見えるって言ってあげたら喜んでいたけど、そんな訳無いのにね」
「だよな」
美奈ちゃんの言葉に皆どっと笑ってくれた。
俺は美奈ちゃんの言葉に頭の中が真っ暗になった。
確かにはしゃいだ俺が馬鹿だったが、何もそこまで言うことは無いだろう!
その時だ!
「うっ」
俺は突然胸に激痛が走った。
「えっ、餅田さん!」
美奈ちゃんの驚いた顔が見えた。
でも、俺はそれどころではなかった。
俺は激痛のためにその場に崩れ落ちたのだった。
俺の名前は餅田頼夫、しがない中堅商社の営業課長代理だった。
年は60,そう、信じられないことに還暦を迎えてしまったのだ。
60なんて昔は年老いた老人だと思っていた。
30の時は俺もバリバリ働いていた。
でも、要領の良い若手がドンドン出世をしていく中で、押しの弱い営業社員の俺は中々成績を上げられずに、平社員のままだった。
その頃は両親からはさっさと結婚しろとしつこいくらい言われていたが、毎日が忙しくてそんな暇も出会いも無かった。
40になった時はさすがに不味いと思って婚活の出会い系サービスにも手を出したが、40で中堅商社の平社員では中々良い相手に出会えなかった。相手を20代の初婚とか美人の女とか、高望みをしすぎていたんだと思う。
出てくる相手はバツイチ、バツニの連れ子がいる女か、少し年上の女ばっかりだった。
そうこうしているうちに50になってしまった。
50になってやっと課長代理になったが、課長代理とは名前だけの役職で、部下もいないし、管理職になったので残業代がでなくなった分給与は下がった。
踏んだり蹴ったりの役職だった。
その頃には金ばかりかかる婚活の出会い系サービスも止めていた。
そして、そうこうしているうちにあっという間に60になってしまったのだ。
『少年老い易く学成り難し……』という諺は本当だと俺は実感した。
本当にあっという間だった。
俺としては還暦を迎えたという実感は全くわかなかった。
昔は60と言えば年老いた老人というイメージがあったが、俺は髪の毛もふさふさしていたし、顔にしわも少なくて下手したら40代でも通用すると一人思っていた。
「ええええ! 餅田さん。還暦になったんですか? 餅田さんなら十分に40代でも通用するのに」
一緒の課の美奈ちゃんが雑談のついでに俺の年を聞いて驚いてくれた。
「じゃあ、餅田さんの還暦お祝いに皆で飲みに行きましょうよ」
俺はお気に入りの美奈ちゃんの言葉に喜んで行くことにした。
俺なんかのお祝いをしてくれるなんて美奈ちゃんはなんて良い子なんだろう。
飲み会は8人くらいが来てくれた。
「いやあ、本当に美奈ちゃんはよく気がつくし、良いお嫁さんになるよ」
「まあ、餅田さんってそんなこと言っても何も出ませんよ」
美奈ちゃんが俺の肩を軽く叩いてくれたが、俺はとても楽しかった。
こんな子が本当に俺のお嫁さんになってくれたらな……そう思わなかったかといえば想像くらいはしたと思う。
でも、60の俺と20代の美奈ちゃんでは年も違いすぎだとは思っていた。
でも、現実はもっと残酷だった。
『あんなキモオタじじいなんて眼中にないわ』
笑って言う美奈ちゃんの言葉に俺は凄まじいショックを受けていた。
ガン!
俺は頭を思いっきり蹴られたのを感じた。
「ふん、口ほどにも無い。剣聖のくせにこの様とは恥ずかしいな」
どうやら俺を馬鹿にした男が立ち去ろうとしているようだ。
俺はそれにむかっ腹がたった。
あいつらもう許さない!
剣聖のくせにとか訳の判らない事を言ってくれたのは寺田か! 倒れた俺の頭を蹴飛ばしてくれた上にその言い様、絶対に許さん。
俺は目の前にあったその男の足を思い切り引っ張っってやったのだ。
服がスーツでないのはおかしいと思ったが、怒りの前にそんな些細なことは吹っ飛んでいた。
「なっ」
ガツン!
馬鹿な男は振り返ろうとして体勢を崩して地面に顔から激突していた。
ざまーみろだ!
俺は心の底で喝采を叫んでいた。
男は倒れたまま起き上がれないみたいだが、まあ、死んではいないだろう。
審判みたいな男が慌てて倒れた男に駆け寄っているのが見えた。
俺は頭を振って体を起こした。
頭がガンガンするし腹も痛い。
俺はどうやらこの男に痛めつけられていたみたいだ。
でも、ここはどこだ?
俺には訳が判らなかった。
俺が寺田だと思って倒した相手も見たこともない男だった。
居酒屋で倒れた記憶はあったが、それからのことを覚えていなかった。
どうやってここまで来たんだろう?
周りを見るとここは病院では無くて何かの訓練場の様だった。
周りが俺達を見てざわめいているようだ。
でも、騒いでいる者達の服装が、どこか変だ。
よく見ると、髪の色もまちまちで皆ラノベの世界のような衣装を着ている。
俺はコスプレ会場にでも迷い込んだんだろうか?
それに倒れたときは夜だったと思うのだが、今は昼間だ。
よく見ると俺の着ている服もその時着ていたスーツでは無くて、ラノベに出てくるような衣装だった。
どうなっているんだ?
よく判らない俺は頭を振ってなんとか立ち上がった。
「勝者、ラファエル・サンティーニ!」
遠くで審判みたいな男が叫んでいるのが聞こえた。
「おい、あんなので勝って良いのか?」
「どう見てもカスパルが勝っていたよな!」
「あんな卑怯な手は初めて見たぞ」
「やられたと見せて相手の足を引っ張るなんて、剣聖がしても良いのか?」
「まあ、それで気絶したカスパルも馬鹿だが」
周りからいろんな声が聞こえた。
皆呆れたように俺の方を見ている。
どうやら俺は卑怯な事をして勝ったようだ。
でも、俺はそれどころではなくなった。
「ラフィー、やったわね!」
そこには美奈ちゃんなんて月とすっぽんだと言えるほどの目の覚めるような金髪の美少女が駆けて来て、俺にいきなり抱きついてきたのだ。
女の子にそんな事をされたことも無かった俺は頭の中が真っ白になっていた。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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