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時間戦士は永遠の夢を見るのか・番外編「アミカナの朝」

アンドロイドヒロイン・アミカナの火曜日の朝:気を付けなきゃ

作者: 刹那メシ
掲載日:2025/12/14

これは「時間戦士は永遠の夢を見るのか」本編の第2話「真時間と偽時間」と第3話「時間転送物の辿る道」の間の出来事です。未来から来た女性タイムトラベラーであるアミカナは、自身がアンドロイドであることを隠して、大学生の志音と行動を共にしています。本編では描き切れなかった、互いに惹かれていく二人の心の触れ合いやすれ違いを描いています。本編未読でも、少しは楽しんで頂ける……ことを願っています。なお、彼女の本当の想いについては、番外編「あと50000回」も読んでみて下さい。

挿絵(By みてみん)


<火曜日>

 志音は、ホテルの斜め向かいにあるコンビニのイートインスペースに腰を下ろして、ホテルの玄関の様子を窺っていた。未来からやって来た歴史改変阻止者を名乗るアミカナとは、今日の10時に、彼女が泊るホテルの前で待ち合わせの約束をしていた。大学を休み、ホテルの付近まで来ておきながら、彼はその約束を信じることができなかった。来るはずのない彼女を待って、長時間ホテル前に立ち尽くす自分の姿を想像して、猜疑心に駆られた彼は、こうして、本当に彼女が来るのかを探っていた。ホテルの自動ドアが開くたびに顔を上げる。テーブルの上のカップコーヒーがすっかり冷めてしまっていた。

 9時55分頃、アミカナは、昨日彼が買わされた白いブラウスに赤色のリボンタイ、ベージュのフレアスカートという装いで、ホテルから出てきた。

 ……へえ、意外に日本人的だな……

 事前行動に感心しつつ、彼は、再び彼女に会おうとした自分の選択に安堵していた。一瞬、出ていこうと腰を上げたが、手玉に取りやすい男と思われるのも癪に障った彼は、もう5分待つことにした。

 彼女は、スカートの前で手を組むと、ホテルの前に立ち尽くしていた。相変わらず、花のようなオーラがある気がした。ホテルの前を行き交う人々も、彼女の美しさにチラチラと目をやる。

 彼女は――不安げな表情をしていた。誰かを探すものの、投げかけられる視線を感じては目を伏せる。昨日の有無を言わせないような明るさは、そこにはなかった。

 5分も待ち切れずに、彼は席を立っていた。自尊心から彼女を試そうとしたことを後悔していた。いや、彼に見せるつもりのない彼女の顔を盗み見たことに、申し訳なさを感じていた。

 コンビニを出た瞬間に、彼女と目が合った。花が咲くような笑顔が浮かぶ。思わず足が止まった。この笑顔は、本当に自分に向けられたものなのだろうか?……。ダメ押しするように、彼女は彼に向かって小さく手を振った。

 彼は道を渡ると、彼女に近寄った。

「おはよう、志音!」

 元気な声が響く。

「……ああ、おはよう……」

 見慣れない青い瞳に見つめられて、彼は目をそらした。

「来てくれてありがと!」

 彼女は彼へと顔を近づける。そこに、さっきまでの不安の影はなかった。

「あ~!」

 緊張で妙に大きな声が出る。一度咳払いをした彼は、もう一度話し始めた。

「あのさ、昨日、この街について知りたいって言ってたよね……」

 思い切って彼女の顔を見る。彼女の癖なのか、彼女は真っ直ぐ彼の目を見つめていた。一瞬言葉が止まる。

「……その、市の施設で、この街の歴史を見せてくれる映像コーナーがあるらしいんだけど……」

 彼女の目が見開かれる。

「調べてくれたんだ」

「……ああ……」

「……う~ん、でもな~……」

 彼女は腕を組んで顔を顰めた。

「私としては、作られた映像よりも、実際に歴史を紡いできた実物が見たいな。確か、博物館があったでしょ?」

「実物?」

 頷いた彼女は、人差し指を立てるとクルクルと回した。

「そう。要は、二次元の女の子と三次元の女の子、どっちがいいのかってことよ」

「……そりゃあ、三次元だけど……」

 彼が呟くと、彼女は眉を顰めて身を引いた。

「え? そうなの? ちょっと意外。気を付けなきゃ」

 ……ああ、そういうことか……。分かった気がした。

「……知ってる? ちょっと失礼なこと言ってるよ……」

 彼の突っ込みに、彼女は微かに目を見開いた。青い瞳が少し輝いたような気がした。

 本当の彼女のことは分からない。しかし、彼女が、そういうキャラクターで、そういうやり取りを望むなら、乗ろうと思った。それが彼女にとって居心地のいい空間になるのなら、別に自分は構わない。どうせかっこいいキャラクターにはなれないのだ……。その承諾が、彼女にも伝わった気がした。瞳の輝きは、そういう意味に思えた。

「ごめんごめん!」

 微笑んだ彼女は彼の腕を取った。彼女に引き寄せる。

「でも、調べてくれてありがとう!」

 言いながら、彼女は博物館のある方向を見据えた。

「……あなた、いい人ね……」

 彼とは目を合わさずに、彼女は呟いた。その声に、本当の彼女が垣間見えた気がした。しかし、次の瞬間、彼に向けられた笑顔で、それは掻き消された。

「さあ、博物館、行こ!」

お読み頂きましてありがとうございます。お休みをもらうと言いながら、書きかけが一編あったので、今回公開致しました。この後は本当にお休みとなります。少し気長にお待ち頂けると幸いです。ここまでお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。

※2025.12.15 初めて評価を頂きました。私はちゃんと泣けるので、泣きます! つけて頂いた方、誠にありがとうございました!

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