表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイギスの盾~異世界サバイバル・ストラテジー~  作者: たっく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/27

第7話 死の世界の洗礼:闇の行軍と追跡者の嗅覚③

静寂が戻った森で、オレはナイフについた血を振るい落とした。


《経験値(XP)閾値に到達しました》


《レベルアップが可能です:Lv1 → Lv2》


視界の端で、待ち望んでいたシステムログが点滅している。


だが、まずは現状復帰リカバリーが先だ。


オレは手早くオークの死体を探り、腰にあった皮袋と、投げ出されていた投擲槍ジャベリンを回収した。


野犬の死体も、比較的損傷の少ない一匹を選んで担ぎ上げる。


食料であり、素材だ。この世界で捨てていいリソースなど一つもない。


「……トールさん、大丈夫ですか? 肩、血が……」


リーズが駆け寄ってくる。


彼女の顔色は悪い。魔力枯渇(ガス欠)による疲労だ。だが、その瞳にはオレへの心配と、強敵を倒したという興奮が入り混じっていた。


「問題ない。【底力】でバイタルは安定している」


オレは短く答え、闇の中を見据えた。


「だが、血の匂いが強すぎる。風上へ移動して休むぞ」


30分後。


オレたちは岩場が入り組んだ窪地を見つけ、そこを今夜の仮宿ビバークと定めた。


背後は岩壁、左右は巨岩。風上であり、他の獣に嗅ぎつけられるリスクも低い。


オレは担いできた野犬を手早く解体し、火打ち石で小さな火をおこして肉を炙った。


調味料はないが、したたる脂が炭火で弾ける音は、空腹の胃袋を刺激するには十分だった。


「ほら、食え」


焼きあがった肉をリーズに渡す。


彼女は少し躊躇ったが、一口食べると、ハフハフと熱さを逃がしながら飲み込んだ。


「……ん、意外と……食べられます」


「獣臭いが、栄養価は高い。明日のために詰め込んでおけ」


オレも自分の分を口に運ぶ。


硬い肉を噛み砕き、胃袋へ送り込む。消化器官が活発に動き出し、失われたエネルギーが充填されていくのを感じる。


食事を終え、人心地ついたところで、オレは改めて虚空のウィンドウを開いた。


【レベルアップ:承認(Yes) / 保留(No)】


オレは迷わず【承認】をタップした。


瞬間。


オレが身構えていたような「劇的な変化」や「苦痛」は訪れなかった。


代わりに訪れたのは、極上の「充足感」だった。


ドクン、と心臓が力強く脈打つ。


身体の奥底から、温かい光のような熱量が湧き上がってくる。


それは血管を通って全身を巡り、疲弊した細胞の一つ一つを優しく、しかし劇的な速度で活性化させていく。


左肩の槍傷が熱を持ち、痒みと共に瞬く間に塞がっていく。


筋肉の繊維が密度を増し、骨格が最適化され、視界の解像度が一段階上がったような感覚。


《システム:レベルアップ処理完了》


《HP完全回復》


《基礎ステータス上昇:適用完了》


「……ほう」


オレは自分の掌てのひらを握りしめた。


軽い。


先ほどまでの疲労が嘘のように消え失せ、全身に力がみなぎっている。


STR18という数値は変わらないはずだが、それを扱うための肉体の「器」が拡張された感覚だ。


【ステータス更新:ファイター Lv2】


HP:14 → 24 (+10)


新規スキル:【怒涛のアクション】


効果:限界突破。一時的に肉体のリミッターを解除し、1ターンに通常のアクションに加えて、もう一度アクションを行える。


「HP24……」


一般人のHPが4。熟練の兵士でも10程度。


レベル2にして、オレは常人の6倍近いタフネスを手に入れたことになる。


そして、傷も完全に癒えている。


どうやらこの世界のレベルアップは、肉体的な負荷を強いるものではなく、純粋な「恩恵バフ」として機能するらしい。


「……悪くないシステムだ」


オレはニヤリと笑った。


強くなることに代償がいらないなら、いくらでも貪欲になれる。


狩れば狩るほど、オレは強くなる。単純にして明快なルールだ。


ふと見ると、隣のリーズも不思議そうに自分の手を見つめていた。


彼女の体からも、淡い光の粒子が立ち上っている。


「あれ……? なんだか、体が軽いです」


リーズが驚いたように瞬きをした。


さきほどまで顔色が悪かったのが嘘のように、肌に赤みが戻り、瞳には力が宿っている。


「魔力も……空っぽだったのに、溢れてきます」


「お前も上がったようだな」


オレは『メタ・ナレッジ』で彼女の状態を確認する。


【ステータス更新:ソーサラー Lv2】


HP:6 → 10


MP:全回復


新規:魔力点ソーサリー・ポイントの解放


パーティを組んでいる以上、経験値は分配される仕様らしい。


HP10。これで即死のリスクは減った。何より、魔力が全回復したのは大きい。


「トールさん、すごいです! 私、前より元気になっちゃいました!」


「傷は、もういいんですか?」


オレは左腕を回してみせた。痛みも違和感もない。


「ああ。完治した。心配するな。オレたちはそう簡単に死なないし、壊れない」


オレの言葉に、リーズは安堵の息を吐き、へにゃりと笑った。


「よかった……本当によかったです……」


彼女の目尻に浮かんでいた涙が、焚き火の光を受けてキラリと光る。


オレは無造作に彼女の頭に手を置き、ガシガシと撫でた。


「寝ろ。明日は早朝から移動するぞ」


「……はいっ!」


リーズはオレの隣で丸くなり、すぐに寝息を立て始めた。


オレは焚き火に薪をくべ、新しく手に入れた力(怒涛のアクション)の使い方を脳内でシミュレーションしながら、夜空を見上げた。


木々の隙間から見える星が、昨日よりも鮮明に見える気がした。


***


翌朝。


森の空気は澄んでいた。


オレの体調は万全パーフェクト以上だ。HP24の肉体は、今まで感じていた微かな森の寒ささえも、心地よい涼風に変えていた。


「行くぞ、リーズ」


「はい!」


オレたちは再び歩き出した。


目指すは「城塞都市バルグ」。


街道へ出ると、石畳の轍わだちが見えた。


文明のラインだ。


オレたちはその線に沿って、速度を上げた。


オークに襲われた恐怖の夜は終わり、冒険者としての第一歩が、ここから本格的に始まる。


(待っていろ、バルグ。……稼がせてもらうぞ)


手に入れた槍を背負い、オレは確信と共に踏み出した。


この世界は、攻略可能なゲーム(モノ)だ。


そしてオレは、その最強のプレイヤーになる。

【管理者ステータス】

名前: トール

レベル: Lv.2

クラス: ファイター

HP: 24 / 24


装備:

メイン: 投擲槍(オークから回収)

防具: なし

装飾: なし


能力値:

STR:18 / DEX:16 / CON:18 / INT:10 / WIS:12 / CHA:8


経験値 (XP):

現在: 0 (次Lvまで 300)


所持スキル:

底力、受動知覚、次元を超えた知識、怒涛のアクション


【パーティメンバー】

■リーズ (Lv.2 / ソーサラー(竜の血脈))

HP: 10/10

装備: 白木の杖

状態: 健康

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ