第19話 接触:「死にたくなければオレの話を聞け」
ギィィィィ……バンッ。
重厚なオーク材の扉が閉じられると、路地裏の冷たい静寂は遮断され、再び圧倒的な「熱」と「騒音」が全身を包み込んだ。 冒険者ギルド併設の酒場『戦鬼の喉』。 数百人の男たちが吐き出す熱気、脂の焦げる匂い、安酒の揮発したアルコール臭、そして紫煙。 それらが混然一体となった空気は、白く濁り、肺に入れるだけで酔いが回るほど濃密だ。
「……っ」
エルフの射手、アーシェが僅かに眉をひそめ、フードを目深に被り直した。 無理もない。 つい数分前、彼女たちはここから「敗者」として、罵声を浴びながら追い出されたばかりなのだ。 再びその場所へ、しかも得体の知れない男に連れられて戻ってくる。 その心理的負荷(ストレス値)は計り知れない。
「顔を上げるな。……余計な視線ノイズを拾うことになる」
オレは短く告げ、人混みをかき分け進んだ。 先頭にオレ、真ん中にアーシェとマリエル、最後尾にリーズ。 彼女たちを挟み込む陣形フォーメーションだ。逃亡防止と、周囲の干渉を防ぐ意味がある。
「おい、見ろよ……」 「あれだろ? こないだの鉄級昇格試験で、副ギルマスのガルガンさんを叩きのめした新人……」 「マジかよ、あんな優男が? ……でも装備は良さそうだぞ」
周囲のテーブルから、ひそひそとした陰口や値踏みするような視線が絡みついてくる。 一部の事情通たちの間では、オレの顔はすでに割れているようだ。 だが、オレはそれらを一切無視した。 今の彼らは背景モブだ。オレの事業計画には1ミリも影響しない。
「ここだ。……座れ」
案内されたのは、酒場の中央、暖炉の近くにある一等席だ。 そこにはすでに、オレが追加注文しておいた料理が所狭しと並べられていた。
厚切りにされたオーク肉のロースト。表面は飴色に焦げ、ナイフを入れるまでもなく肉汁が滲み出ている。 大皿に盛られた温野菜のバター煮込み。湯気が立ち上り、甘い香りを放っている。 そして、焼きたての白パンの山と、冷えたエールのピッチャー。
それは、ついさっきまで路地裏で絶望していた二人にとって、あまりにも暴力的なまでの「生の輝き」だった。
「……こ、これは……」
神官のマリエルが、ゴクリと喉を鳴らす。 彼女の視線は肉皿に釘付けだ。 敬虔な聖職者としての理性が、生存本能としての飢餓感と激しく葛藤しているのが見て取れる。
「座ってください。……冷めちゃいますよ?」
リーズが手早く椅子を引き、二人を促す。 彼女の甲斐甲斐しさは、計算高いオレとは違う、純粋な善意によるものだ。 このパーティにおける「良心(緩衝材)」として、リーズは優秀に機能している。
二人がおずおずと席に着く。 オレも対面に座り、まずは自分のジョッキにエールを注いだ。
「食え。……話は胃袋を満たしてからだ」
オレはナイフを取り、自分の皿の肉を切り分けた。 他意はない。 血糖値が低下した状態では、脳の判断能力が鈍る。 正常な商談ネゴシエーションを行うためには、まず交渉相手の生理的欲求(マズローの最下層)を満たすのが最も効率的だ。
「……施しを受けるつもりはないわ」
アーシェが強がって見せる。 だが、その視線はテーブルの上のパンから離れない。 彼女の指先が微かに震えている。 弓ダコのできた指。 日々の鍛錬の証だが、今は栄養失調と疲労で白く乾いている。
「勘違いするな。……これは『初期メンテナンス』だ」
オレは切り分けた肉を口に運び、咀嚼しながら言った。
「これからオレの話を聞くにしても、断るにしても、脳にブドウ糖が回っていなければ判断を誤る。……それに、オレは食べ物を残すのが嫌いな性分でな」
「トールさんの言う通りです! ……ほら、このスープ、すごく美味しいですよ?」
リーズがアーシェの前に、具沢山のスープ皿を置く。 根菜とベーコンの香りが、湯気と共に立ち上り、アーシェの顔を包む。
その匂いが、彼女の最後の抵抗を崩した。
「……っ……」
アーシェは震える手でスプーンを握り、スープを一口啜った。 瞬間、彼女の肩が大きく跳ねた。 温かい液体が食道を通り、冷え切った胃袋に落ちる感覚。 それは単なる栄養摂取以上の、凍りついた心を溶かす熱量となって広がっていく。
「……あたたかい……」
アーシェがポツリと漏らす。 その瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。 彼女は慌てて手で拭い、パンをスープに浸して口に運んだ。 もはや、プライドよりも「生きたい」という本能が勝っていた。
一方、マリエルはもっと正直だった。
「神よ……この糧に感謝を」
短い祈りを捧げると、彼女はナイフとフォークを、まるで武器メイスのように力強く握りしめ、オーク肉に向き合った。 彼女の切り方は豪快だが、無駄がない。 繊維に沿ってナイフを入れ、一口大にして口に運ぶ。 咀嚼する顎の力強さ。 首筋の筋肉が躍動し、摂取したタンパク質を即座にエネルギーへと変換しようとする、戦士としての代謝の良さが窺える。
(……やはり、フィジカルが強い)
オレはエールを飲みながら、【次元を超えた知識】でマリエルの肉体構造を観察スキャンした。 法衣の上からでも分かる、しっかりとした骨格と、体幹の太さ。 華奢な少女ではない。 重い鎧を着て前線に立ち続けてきた、研ぎ澄まされた肉体だ。 ガレスが彼女を「後衛」として扱っていたのは、フェラーリで畑を耕すような愚行だ。
10分後。 皿の上から料理が消え、二人の顔色に赤みが戻った頃。 オレは懐から、先ほど路地裏で見せた【金貨】を取り出し、テーブルの上に置いた。
カツン。
硬質な音が、食事の終わりと、交渉の始まりを告げた。
「さて……本題だ」
オレは指を組み、二人を真っ直ぐに見据えた。
「この金貨1枚は『手付金』だ。……正式にオレのパーティに加入するなら、契約条件は以下の通りだ」
オレはあらかじめ脳内で構築していた条件を提示した。
報酬形態: 完全歩合制に加え、固定給(生活保証)を支給。
装備支給: 武器・防具のメンテナンス費、および消耗品(矢やポーション)はパーティ経費で負担。
福利厚生: 宿の手配と、一日三食の食事を保証。
酒場の喧騒の中でも、オレの声だけは明瞭に二人の耳に届いたはずだ。 あまりにも破格の待遇。 搾取が当たり前のこの業界において、オレの提示は「異常」と言っていい。
アーシェがスプーンを置き、疑わしげな目をオレに向けた。 空腹が満たされ、理性が戻ってきたようだ。
「……話が美味すぎるわ」
彼女は金貨を見つめながら、低い声で言った。
「装備支給に、食事まで? ……そんな好条件、銀ランクのパーティでもありえないわ。あんた、何の慈善事業? それとも……」
彼女の視線が鋭くなり、オレの目を睨みつける。 そして、自分の胸元を隠すように腕を組んだ。
「……『裏』があるんじゃないの? 私たちの身体が目当てとか、奴隷契約書にサインさせるとか」
隣のマリエルも、ハッとして自分の法衣の襟を合わせた。 女性冒険者が「パトロン」を名乗る男に騙され、夜の相手をさせられる話は珍しくない。 むしろ、これだけの金を出すなら、そちらの方が「相場」としては自然だ。
だが、オレは鼻で笑った。
「自意識過剰だ。……鏡を見てみろ」
「はぁ!?」
「今の薄汚れたお前たちに、性的価値マーケット・バリューなどない。……オレが欲しいのは『女』じゃない」
オレは身を乗り出し、テーブルの中央を指差した。
「オレが欲しいのは『火力(DPS)』と『回復(HPS)』だ」
オレの言葉には、一切の情欲も、嘘も混じっていない。 あるのは、純粋な機能性への渇望だけだ。
「アーシェ。お前の弓の腕前はAランクだ。だが、近接戦闘への恐怖心イップスが射撃精度を下げている」 「マリエル。お前のフィジカルは前衛級だ。だが、教義への忖度がその剛力を封じている」
二人が息を呑む。 図星を突かれた動揺。
「オレは、お前たちのその『枷リミッター』を外したい。……女として抱きたいんじゃない。戦力として使い潰したいんだ」
冷徹な言葉。 だが、それは同時に、彼女たちを「プロの冒険者」として対等に見ていることの証明でもあった。
「……使い潰す、ですか」
マリエルが呟く。 その言葉の響きに、彼女は嫌悪感ではなく、どこか安堵したような表情を浮かべた。 「お飾り」として扱われるより、「道具」として必要とされる方が、戦士としての自尊心は満たされる。
「トールさんは、本当にそういう人です」
リーズが苦笑しながら、口元のソースをナプキンで拭った。
「私なんて、森で拾われた時は『火力アセット』って呼ばれましたから。……でも、だからこそ信用できるんです」
リーズの言葉が、最後の一押しとなった。
「……分かったわ」
アーシェが息を吐き、組んでいた腕を解いた。
「そこまで言うなら、試してあげる。……でも、もし変なことをしたら、寝首を掻くから覚悟してね」
「神よ……。この身を『機能』として捧げることをお許しください」 マリエルもまた、覚悟を決めたように頷いた。
「交渉成立ディールだ」
オレは金貨を二人の前に押しやった。
「だが、ここはうるさすぎる。……場所を変えるぞ」
オレは席を立った。 酒場の喧騒は相変わらず続いている。 だが、オレたちのテーブルの周りだけは、確かな「結束」の磁場が生まれ始めていた。 これから行うのは、彼女たちの意識改革マインドセットだ。 負け犬根性を叩き直し、最強の兵士へと作り変えるための教育レクチャーが始まる。
「宿へ来い。……お前たちの本当の『スペック』を診断してやる」
オレは出口へと歩き出した。 背後で、二人が椅子を引く音が聞こえる。 もう、迷いのない足音だった。
***
宿屋「踊る熊亭」、二階の個室。 深夜0時。 街の喧騒は遠のき、部屋にはランプの芯が燃えるパチパチという音と、教会の鐘が日付けの変更を告げる重い響きだけが届いていた。 窓の外からは、バルグの冷たい夜風が微かに吹き込み、部屋に漂う蝋と埃の匂いをかき混ぜている。
「……さて、診断チェックを始めるぞ」
オレは部屋の中央にある丸テーブルに、一枚の羊皮紙を広げた。 バルグ周辺の簡易地図だ。 その上に、インク壺と羽ペンを置く。
「診断って……装備を見ればいいの?」
アーシェが警戒心を解かないまま、部屋の隅に立っていた。 彼女は自分の愛弓を抱きしめるように持っている。それは射手の習性であり、同時に心理的な防壁バリアでもある。
「まずは茶でも飲んで落ち着け。……リーズ、頼む」
「はいっ。安宿の備え付けですけど、淹れたてですよ」
リーズが手際よくカップにお茶を注ぎ、二人に手渡す。 その横顔には、仲間が増えてパーティが賑やかになることへの期待と、それ以上に複雑な感情が見え隠れしていた。
(……お二人とも、すごく美人です。お姉さんって感じで、スタイルも良くて……)
リーズはお茶を渡しながら、チラリとアーシェのしなやかな肢体と、マリエルの豊かな胸元を見比べる。
(もし、トールさんがこの人たちの方を気に入っちゃったら……。私のこと、子供扱いして、構ってくれなくなったら……)
「……リーズ、手が止まっているぞ」
「は、はいっ! どうぞ、熱いですから気をつけてくださいね!」
トールの声に我に返り、リーズは慌てて笑顔を作った。 今はまだ、役に立つ「火力」であることを証明し続けるしかない。 そんな健気な独占欲と不安を飲み込み、彼女はお茶を配り終えた。
「まずは、アーシェ。お前からだ」
オレは椅子に座り、手を差し出した。
「その弓を見せろ」
「……傷つけたら許さないわよ」
アーシェは躊躇いながらも、ロングボウをオレに手渡した。 オレはそれを受け取り、指先で材質と状態を確認した。
(……素材はエルヴン・ウッド。表面のニスは塗り直されている。手入れは良好)
オレは弦ストリングを指で弾いた。 ビィィン……。 高く、鋭い音が響く。
(……テンションが強すぎる)
オレの眉が動く。 弦の張力が適正値を超えている。これでは矢の初速は上がるが、引き絞るのに余計な筋力を使い、照準がブレやすくなる。 なぜ、こんな調整をしているのか。
「……近距離戦が怖いか?」
オレの問いに、アーシェがカップを持つ手を止めた。
「敵に近づかれる前に殺したい。……一撃で、確実に。だから威力を上げている。違うか?」
「……っ」
図星だったようだ。 彼女の視線が泳ぐ。
「ガレスに怒鳴られ続けたのが原因だな。『外すな』『誤射するな』というプレッシャーが、お前の射撃スタイルを歪ませている」
オレは弓をテーブルに置いた。 強すぎる弦は、余裕のなさの表れだ。 確実に当てようとして身体が硬直し、さらに「味方に当ててはいけない」という強迫観念が、射線ラインを極端に狭めている。 これでは、動く標的に対して柔軟な対応ができない。
「いいか、アーシェ。……思考を書き換えろ」
オレは彼女の目を真っ直ぐに見た。
「誤射フレンドリーファイア? ……構わん。撃て」
「は……? 何言ってるの? 前衛の背中に当たるわよ!」
「オレの背中は広い。多少矢が刺さったところで、HPの1割も減らん」
オレは自分の胸板を叩いた。 STR19、CON19という、人間としての限界に迫る異常なステータス。 重装鎧と筋肉の鎧の前では、流れ弾の一発や二発、蚊に刺された程度だ。
「それに、お前の腕なら外さない。……ガレスが動き回るから当たらなかっただけだ。オレは敵を『固定』する。お前はただ、その固定された的の眼球を狙えばいい」
「……本当に、動かないの?」
「ああ。彫像のように止めてやる。……だから、弦の張りを緩めろ。リラックスして、呼吸をするように撃て」
アーシェが息を呑む。 「当ててはいけない」という呪縛。 それを「当たっても死なないから気にするな」という、常識外れの耐久力ロジックで粉砕された。 彼女の肩から、憑き物が落ちたように力が抜けていくのが見えた。
「……変な男。自分の命をなんだと思ってるの」
「資産だ。……お前の矢もな」
オレは視線を移した。 次は、神官のマリエルだ。 彼女はソファーに浅く腰掛け、巨大なヘヴィ・メイスを膝の上に置いて縮こまっている。
「次はマリエル。……その鈍器を見せろ」
「は、はい……。お恥ずかしいものですが……」
マリエルがメイスを差し出す。 オレは片手で受け取ろうとして――瞬時に両手に切り替えた。
ズシリ。
(……重い。推定重量18キログラム)
鉄の芯に鉛を詰め込んだ特注品だ。 これを片手で振り回すには、最低でもSTR16が必要だ。 並の戦士でも扱いかねる代物を、このおっとりした神官は軽々と持ち運んでいる。
「なぜ、これを使わない?」
オレはメイスの先端を見た。 傷一つない。新品同様だ。 一度も敵を殴っていない証拠だ。
「……教義です」
マリエルが俯き、絞り出すように言った。
「私の所属していた教団では、神官は『癒やし手』であるべきと教えられました。……暴力は野蛮であり、神の御心に反すると。だから、これはあくまで護身用で……」
「護身用にしては殺意が高すぎるな」
オレはメイスを彼女に返した。 彼女はそれを、まるで罪の証拠のように抱きしめた。 強大なフィジカル(物理)を持ちながら、精神的なブレーキ(教義)によってそれを封印している状態。 宝の持ち腐れどころか、機能不全マルファンクションの原因だ。
「マリエル。……回復ヒールとは何だ?」
「え? ……傷ついた人を癒やす、聖なる奇跡です」
「違う。……それは『事後処理』だ」
オレは断言した。
「傷ついてから治すのは、コストがかかる。MPを消費し、痛みによるデバフも残る。……最も効率的な医療とは何か分かるか?」
「……?」
「『予防医療』だ。……つまり、敵が攻撃する前に、敵を排除することだ」
オレはメイスのヘッドを指差した。
「お前がそのメイスで敵の頭蓋を粉砕すれば、敵は攻撃できない。味方は傷つかない。……結果として、ヒールを使う必要もなくなる」
「……敵を、殺すことが……癒やし?」
マリエルが目を見開く。 彼女の中で、相反していた「信仰」と「暴力」が、トール流のロジックによって強引に接合されていく。
「お前のその筋肉フィジカルは、飾りじゃない。……神が与えた『悪を討つための法具』だ。遠慮なく振るえ」
「……振るって、いいのですか? 思い切り?」
「ああ。……オレが許可する。骨の髄まで叩き潰せ」
マリエルの瞳に、怪しい光が宿った。 抑圧されていた破壊衝動が、「正義の執行」という名目を得て解放されようとしている。 彼女がメイスを握る手に力がこもり、ミシッ……と柄がきしむ音が静かな部屋に響いた。 頼もしい握力だ。
「さて……役割ロールの再定義だ」
オレは二人の顔を見渡し、宣言した。
「今までの常識を捨てろ。……オレのパーティに『守られるだけの後衛』はいない」
オレは地図の上に、駒に見立てた硬貨を置いた。
「オレが最前線で敵のヘイト(敵視)を集める。これは変わらない」 「マリエル。お前はオレの横、あるいは少し後ろに立て。……サブタンク兼アタッカーだ。漏れた敵を殴り殺せ。ヒールは戦闘が終わってからでいい」 「アーシェ。お前は中距離だ。……オレが固めた敵の急所を狙え。誤射を恐れず、最大火力(DPS)を出せ」 「そしてリーズ。……お前は広範囲殲滅だ。オレごと焼くつもりで撃て」
「はいっ! 任せてください!」
リーズが元気よく答える。 アーシェとマリエルは、呆気にとられた顔をしている。 「オレごと焼け」「誤射しろ」「ヒールは後回し」。 どの言葉も、従来の冒険者セオリーとは真逆だ。
だが、そこには否定しがたい合理性があった。 リスクを許容し、攻撃力オフェンスに全リソースを振ることで、戦闘時間を短縮し、結果として生存率を高める。 「殺される前に殺す」。 それがオレの生存戦略だ。
「……無茶苦茶ね。でも、嫌いじゃないわ」
アーシェがフッと笑った。 その顔には、酒場での悲壮感はない。 自分の役割が明確になり、迷いが消えた戦士の顔だ。
「神よ……。私の道は、ここにあったのですね」
マリエルがメイスに頬ずりをする。 その姿は少し怖いが、戦力としては申し分ない。
「よし。……スペック診断は終了だ」
オレは地図を畳んだ。 時計の針は深夜を回っている。 だが、オレたちの目は冴え渡っていた。
「明日は『実戦投入テストラン』だ。……死にたくなければ、オレの指示に従え」
オレの言葉に、3人の女性たちが力強く頷いた。 駒は揃った。 システムは構築された。 あとは、この最強の予備軍を、戦場で稼働させるだけだ。




