職員室雑景
「うぃーす、お疲れ様です」
明くる朝、悪びれる様子も無く職員室に出勤すると、
「ひ・な・せ・先生? 」
ごごごごご……と謎の効果音付きで同僚の出水先生が迫ってきた。
「よっ、イズ」
「よっイズじゃありません!! なんですか昨日はっ」
「はは、悪りぃ悪りぃ、ちょっと七転八倒してたもんで」
ちなみに嘘は言ってない。
「もう、初めて聞きましたよ。『変なもの食べて中ってのたうち回ってたら頭ぶつけて目が回ったから休みます』なんて前代未聞ですよ……」
「それが本当なんだよなぁ……」
9割方話を盛ってるけど。1割が事実だからセーフです。
「ガハハ、休む理由もそこまで開き直りゃぁ清々しいもんでんなぁ」
「うるせーっすよタコナベ先生」
「今日はまだ茹だってへんで、この後は分からへんけどなガハハ」
向こうの席からタコ鍋……じゃなかった、田辺先生が混ぜっかえす。
「笑い事じゃありませんよもう……昨日は社会科総動員で大変だったんですからね、愛瀬先生は『あぁ………みおにゃの生配信が……』て死んだ目してたし、急遽自習の監督に駆り出されたひよ……水無瀬先生なんか、ふぇーっ!?て鳴きながら休み時間の合間に廊下を走って移動してましたよ……」
「なんか……サーセン……」
ここに来てちょっと罪悪感が芽生える。
「今月とかで授業何個か代わりますんで、どっか自習にして寝ててください……」
「寝ませんよ先生じゃあるまいし」
「言うなぁ……なんかあたしへの当たり強くない……同期だよ……?」
「名目上ですけどね」
バッサリ斬られる。おーおー冷たいなぁ同期さんよぉー…………
そういや別の『同期』は、とぐるりと首を回すと……お、居た。さっきからクッキー缶を抱えてモフモフ食べてる。マリーさんは相変わらずマイペースというか……まぁいいか。
「……っと、そうだイズ先生。ミナセは……あぁ小動物っぽい方じゃなくて生徒の方……どうでした昨日、何か変わったとことか……」
「や、特段何も。あ、でも少し、落ち込んでたような……」
「そうですか……分かりました、ありがとうございます」
…………心配、かけちゃったかな?一昨日が一昨日だもんな……
「んじゃあたしは1限の準備してきますんで」
「あ、待ってください昨日の引き継ぎが」
「一応ここに来る前に何人かの先生から聞いたんで大丈夫です」
後ろ手に職員室の扉を閉めると、物陰でひょこひょこ動く頭が見えて、
「……なにしてんだ水瀬、こんなとこで」
「ひゃいっ!?」
回り込んで声をかけると飛び上がらんばかりに驚いて、
「せ、先生……ビックリさせないでください……」
「悪い悪い。……しかし、イズから聞いてたより元気そうだな」
「そ、それは…………その…………」
「?」
またしても何やら様子がおかしい。
「あっそうだ水瀬、水瀬って今週末空いてるか?」
「ふぇ? え、ええ、何も予定は無いですけど……」
「そうかそりゃ良かった。じゃあちょっと…………付き合ってくれるか?」
「………………ふぁい!?」
お借りした先生方
・水無瀬ひより先生(しっちぃ様)
・出水 綾香先生(つかさ様)
・幸 まりあ先生(はと子様)
・愛瀬 めぐみ先生(伯爵様)
・田辺 大輔先生(大腸様)