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防具ジューダー、最後の戦い

作者: 真蛸

 物陰から襲いかかってきた先駆員の十人ほどを一瞬のうちに片づけると、佐藤太郎は階段をさらに地下へと降りていく。

 秘密結社ザンガダバの亜細亜における拠点、五十二階建てビルヂングだが実は心臓部は地下にあり、佐藤太郎のつきとめた範囲では地下は最低でも十一階あるはずだった。

 ときどき飛びだしてくる先駆員をかたずけながら、佐藤太郎はこれまでの戦いを回想していた。つらく、長い戦いだったが、ここまできた今となってはどこか懐かしく甘酸っぱい匂いとともに思いだされるのは不思議だった。

 正義の戦士防具ジューダーとしてはじめて倒した敵は、怪奇蛸親爺だった。

「ジューダー背負い!」

 掛け声とともに数十メートル投げ飛ばすと、地面に叩きつけられた蛸親爺が爆発してしまったのには驚いた。もし普通に投げていたら、巻き込まれてこちらもただでは済まないところだった。デビュー戦だからと肩に力がはいりすぎたかな、と思ったが正解だったようだ。

 偶然かとも思ったが、次に妖異海老姐御を倒したときにいちおう用心して、

「ジューダー車輪!」

 数十メートル投げ飛ばすと、やはり海老姐御も爆発した。

 それから防具ジューダーは、恐怖河豚兄貴、不気味鯖鯖女、腕白烏賊坊や、……と次々にザンガダバの悪の奇天烈人間たちを退治してきたが、いずれも最後、とどめの技を決めると大爆発を起こした。

 秘密結社ザンガダバは、地球のすべての地区を悪の世界に変えるため、世界征服をもくろむ組織だ。

 目的のためには、幼稚園バスジャック、水源に砂糖を入れて子供たち(大人たちも)の虫歯を増やす、レコードにアイドルのハグチケットをつけて同じ商品を大量に買わせてお小遣いを無駄遣いさせる、万引き、等々の悪の限りを尽くしてきた。

 ジューダーに退治されてもしかたのない奴らだ。

 柱の陰から飛びでてきた先駆員をパンチ一発で沈める。いよいよ地下十一階、これより下はどうやらないようだ。

 廊下を歩きだすと、また先駆員がぱらぱらと出てくるのをパンチ、チョップ、あるいは蹴りの一撃で葬っていく。先駆員ザコどもは殺しても爆発しない、ということもこれまでの戦いで学んでいた。

 中央の部屋にたどり着いた。ここにはザンガダバの悪の指令の発信者、悪の超電子頭脳スーパーコンピューターが鎮座ましましているはずだった。

「メタモルフォージング!」

 佐藤太郎はそう叫び軽快なステップを踏むと防具ジューダーにメタモルフォージングした。

「ジューダーぶちかまし!」

 ドアにタックルして弾き飛ばし、室内に入った。部屋は巨大だった。中央にガラスケースに入った超電子頭脳がいた。

 なぜ奇天烈人間どもは爆発するのだろうか。

 それは防具ジューダーが、初めて蛸親爺を倒したときから、ずっと頭を離れない疑問だった。

 あれだけ大きな爆発をするということは、体の中に爆発物を持っているとしか考えられない。そしてそんなことができるとすればそれはザンガダバしかない。奴らがさらってきた人間を奇天烈人間に改造したのだから。

 しかし。

 仮に敵にやられることを潔しとせず、つかまって機密などを話されることを防ぐためだったとしても、体内に毒を持っておけば済む話ではないか。奇天烈人間たちも、もとはふつうの人間だった。脳は人間のままだから、脳に利く毒ならば死に至らしめることができるはずだ。

 背後から襲いかかってくる気配を感じて、防具ジューダーは転がりざま振り返ってパンチをいれた。

「ぎゃ、ギャアー」

 老骨蟹婆アだ! 悲鳴をあげさせるには成功したが、奇天烈人間は一撃では倒せない。蟹婆アはすぐにその巨大な鋏を振り回しながら防具ジューダーに迫ってくる。

 そうか、と思いあたった。

 本人たちの意志ではなく悪の秘密結社ザンガダバが、そのように体内に爆薬を仕込んだのだ。奇天烈人間たちが死ぬときに周りを巻き込んですこしでも被害を大きくするために、である。奇天烈人間たちが誰かによってたおされたならば、あわよくばその者を道連れにするように、だ。そして振り返れば、その誰かの役を、防具ジューダーはこれまで務めてきたことになるのだった。それは他に被害を出さないという意味で幸いなことであった。

 蟹婆アの鋏をかわし、その腕をつかむ。逆にひねりあげて、

「ジューダー腕ひしぎ逆十字!」

 に持っていったが、蟹婆アもさるもの、その怪力で防具ジューダーを振り払った。

 数メートル吹っ飛ばされたが空中で体勢を立て直して足から着地すると同時にジャンプ、蟹婆アの正面に飛び戻りその体に指を抜き入れ強引につかむ。

「ジューダー巴!」

 超電子頭脳の入ったガラスケースに向けて蟹婆アを投げ飛ばした。背中を強打した蟹婆アは爆発した。

 しかし、外側の強化ガラスは破損したものの、中の超電子頭脳は無傷だった。

「ギギ、ジューダー、ヤメナサイ」

 超電子頭脳の合成音声がどこかに仕掛けられたスピーカーから流れる。あの爆発でも超電子頭脳をほふることはできなかった。こうなったら最後の手段しかない。

「オマエヲツクッタノハ、コノワタシ。イワバオヤデハナイカ。ソノオヤヲ、オマエハコロスツモリカ」

 そうだ。このおれは、ザンガダバに改造された奇天烈人間のプロトタイプだったのだ。

「ソシキヲウラギッタオマエヲ、イマナラユルシテヤル。ダカラワタシヲコウゲキスルノハヤメナサイ」

 そうだ。もとはおれも世を拗ね、ザンガダバの世界征服のために働いていたが、ミヨコを好きになったことで、結社を抜け、組織を裏切り、奇天烈人間どもと戦うことになった。

「ヨシ、デハオトナシクシテ、シュウリハンヲヨンデクルノダ」

 しかしそのミヨコもザンガダバの手先に殺された。

 そのとき駆けつけてきた先駆員がドアから入ってきて、防具ジューダーにパンチを浴びせた。

「アッ、ヨスノダ」

「うわあ、やられた」

 防具ジューダーはうしろ向きに吹っ飛び、部屋の中央の超電子頭脳のところまで跳んでいった。

 背中をザンガダバの超電子頭脳に叩きつけられた防具ジューダーは爆発した。

〈了〉


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