表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編とかその他

正直者と嘘つき

作者: リィズ・ブランディシュカ






 チェックメイトだ!






 学生寮の一室、学生なら自由に使用できるその部屋で、彼はそう叫んだ。


 あまりの大声に、部屋の壁に飾ってある魔法銃のレプリカが暴発でもしたかと思った。


 対面の椅子に座る彼は、裏を感じさせない笑顔でにこにこと喜んでいる。


 しかし、わたしがすっと盤上の駒を動かすと、今まで座っていた椅子から崩れ落ちる。


「負けた! 嘘だろ!」


 チェスの敗北者決定。


 君は単純すぎるんだよ、だってすぐ顔に出るし。


 そう思ったけど、「おしかったね、あともう少しだったのに」と言葉を返した。


 彼はその言葉を疑わない。


「やっぱ、あそこがだめだったか」


 見当はずれな方向から、反省会を行っている。


 彼と私はとある学校に入っている。


 そこでは戦い方について、いろいろと学ばせてもらっているのだが、


 私と彼とでは得意分野が全く違う。


 彼は体を使うことが得意で、私は頭を使うこと。


 座学では毎回、補修をくらっている彼だ。


 奇跡でも起きない限り、彼は私には敵わない。


 だけど馬鹿正直にそんなことをいうわけがない。


 卒業したら、ほとんどの学生が同じところで働く。


 誰かの問題児がいたとして、それが原因でチームワークができていなかったら、死ぬのはそいつだけではない。


 周りの人間も巻き添えだ。


 だから私はうそをつく。


 罪悪感なんて感じない。


 全ては卒業後、生きるために必要なこと何だから。





 チェスを終えたあと、遠隔魔法連絡機械で家のものと連絡を取る。


 発明されたてのそれは貴重なので、こういうところかお貴族様のところにしか置いてない。


「姉さん、うちの兄貴はまだ前線から帰ってこれないみたいだね」

「根がまじめなのよ。いわなくてもいいこと言って、上司やお仲間さんにお節介してるみたいだから」


 ため息をついて、あれこれ近況報告したあと、通話を終えた。


 兄貴はそれで怪我だってしてるのに、こりない奴だ。


 正直者を貫いて何になる。


 いい見本が身内にいるから、私は正直者になどなりたくないのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ