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第9話 Dを狩る

第三位階上位

 



 そして、その時は訪れる。



『マスター、朝になりました』

「……やっとか」



 長く感じられた数十時間。25日目の朝。


 ようやく……動き出せる。



『想定通り、クアンダは地を這う様に活動しています。狩るには絶好のチャンスかと』

「活心とポーションを」

『はい』



 気が急いて仕方ないが、それも活心を掛けるとすっきりと収まる。



『ナビゲートします。付近まで転移を』

「……頼む」



 少し悩んだのは、転移をするより移動した方が良いかと思ったから。

 だが、活心と同じだ。あくまでも転移は時短。必要経費と考えるべきだろう。


 数度の短距離転移の末に、目的地付近へ到着した。


 早朝故か、辺りは霧が立ち込めている。


 これは幸先不安だが、隠密と言う点では寧ろプラスと考えるべきだろう。

 流れは此方に向いている。



 直ぐ目の前には湿地のでこぼこ道があった。


 そう遠くまで見通せる物では無いが、岩や苔、水中に根を張る木等が散見される。


 チラリとそれら、初めて見る湿地帯を確認した所で、早速クロに指示を出した。



「クロ」



 ただ名前を呼んだだけで、体が地面に沈み込む。



『そのまま真っ直ぐ直進してください』



 そんな指示に従い、上に見える景色が移動する。

 それも、走っているぐらいの結構な速度だ。


 平然と水底を通過し、岩を乗り越え、時にマングローブの様な樹木の根の中を通過して、殆ど速度を変えずに走り抜ける。


 どう言う原理か分からないが、とんでもなく便利そうな事は分かった。


 そうこうやってる内に、第一目標に到着した。


 そこには、なんと言う事もない、寝転んでいるクアンダがいた。

 首が下にあるなんてレベルじゃねぇ。地面に横たわっている。


 クロはその手前で停止した。


 後は俺が飛び出して、サージナイフで首を叩っ切るだけ。



「……」



 少し、心を整える。


 呼吸は万が一気付かれるかもしれないので、息を殺して心のみを整理した。



 刹那——影から飛び出し、サージナイフを起動、振り下ろす。



 特に音も無い。



「……」



 ただ、首だけがごろりと転がり、そしてクアンダの遺骸が消滅する。


 後に残ったのは、僅かな血糊と、一線の痕跡が残る地面のみ。


 頬に飛び散った血を拭い、ナイフを振るって血糊を払う。



 さぁ、次だ。



『例によって価値の高い素材以外を、ペペルタの進化に向けて配給します。流石に200万もいればコストが掛かるでしょうが、上手く行けばマスターの負担を軽減する事が出来るかもしれません』

「だと良いな」



 それだけ答えて、ふっと呼吸を整えた。


 D級が相手だからって焦るな。惑うな。大丈夫だ。


 手応えは恐ろしい程無かった。だから射程に入れれば確実に仕留められる。



「コア、次を」

『はい。今度は斜め左に直進してください』



 再度無人の野を行くが如く真っ直ぐ直進すると、間も無く2体目に到着した。


 今度の2体目は、1体目と比べてやや小柄に見えたが、のそのそと歩いていた。

 所定の位置に付き、作戦を決行する。


 発動したのは、シャドーバインド。


 発生した影の腕複数が、クアンダの首を下げる。

 次の瞬間、斜め前に潜んでいた俺が飛び出し、サージナイフを起動して斬り上げる様にナイフを振るった。


 首が刎ねられ、血が飛び散る。


 クアンダの遺骸が消え、残された痕跡は僅かな血糊のみ。



 今度も、上手く行った。


 クロが上手く合わせてくれるからだ。



 さぁ、次だ。





 3匹目を仕留めた所で、一時的に帰還した。


 理由は魔力切れである。


 感覚的には4度使えそうな気がしているが、気が急いているからかもしれない。

 大事をとっての3回だ。


 それに、クロもシャドーウォークの連続使用により、魔力を消費している。



 帰還場所は、元蜥蜴達の繁栄地に作られた仮拠点。


 30P程度で作ったそこそこの広さの穴蔵だ。


 毎回5Pで第3拠点に帰還するよりもずっと節約になる。

 万一外敵が迫って来ても、その時はコアに教えて貰えるし、直ぐに転移離脱出来る。


 安全はバッチリキープしている訳だ。



 そんな仮拠点で、瞑想をする。



 必要なのは魔力。


 その回復の為、今の俺に出来るのは、どうにかして魔力回復を早める事だ。


 その方法は、コアに聞いた。


 なんでも、魔力は大気中に含まれる。それをマナと呼ぶ。

 体内に存在する魔力は、生命力も闇属性魔力も、少しの色の付いた魔力もオドと呼ぶ。


 オドは生命力等の総称の様だ。


 そんな体に満ちるオドを操り、例えば左腕からオドを抜いて循環しない様にすると、左腕にマナの流入が僅かばかりに増加する。

 これは、器の空いた部分に水が入って行く様な物なのだとか。


 これを、なるべく全身でやる。


 ただし、操作が容易な生命力と闇属性魔力は大きく減少しているので、操作するのは操作が困難な他の魔力、色の付いた少量の魔力である。


 これが魔力操作の訓練にもなり、一石二鳥。

 おまけに、流入するマナを感じる事で、大気中のマナを感知する修行にもなり、一石三鳥。


 その代わり、精神力を早く消耗するらしいが、そんなデメリットも活心で解決。


 結果メリットしかない過酷な修行となっている訳である。



 そんな修行を4時間程度こなし、魔力が十全に回復した。


 活心を掛けて精神を回復させ、再度、近くて仕留めやすい順にクアンダを襲う。



 取り急ぎ、夜になるまでが勝負だ。



 

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