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第7話 思わぬ脅威

第三位階中位

 



 翌朝。


 スッキリとした目覚めの後、軽く運動して汗をかいてから朝飯を食った。



『最良の報告が1つ。良い報告が2つ。悪い報告が2つありますが、何から聞きますか?』

「色々と興味深いけど……そうだな、良い報告と悪い報告を交互に、最良を最後にしてくれ」

『承りました』



 メンタル的にね?



『先ず良い報告ですが、ペルタの数が倍に増えました』

「おおっ、6000か」



 すげぇ数。流石増殖担当。



『本日中にも成体になり、明日は更に倍になるでしょう』

「12,000……池の容量は大丈夫なのか?」

『現在の池ならばおおよそ30万まで許容出来ます』



 ならいっか。

 ……しかし12,000か……これでも12Pなんだよなぁ。



『次は悪い報告ですが、昨日から今朝にかけて蟻の襲撃が相次ぎ、それを食べたピッドがお腹を下しています』



 平和かな? いや、報告に上がるくらいだから相当やばいのか?



「容態は?」

『腹痛があと半日程度続くかと』



 それは大変だ。そして平和だ。



『初級ポーションを一定量購入しておく事をお勧めします。必要とあれば私が運用しましょう。1DP3本です』

「分かった。取り敢えず30本あれば良いか?」

『当面はそれで大丈夫でしょう。注意点ですが……ピグマリオンとシャドーウォーカーには効きません。それからとても苦いです』

「うむ」



 ……まぁピグマリオンには効かないだろうな。シャドーウォーカーは……一応アンデットにも属するらしいし。あと苦いのか。



『……効果が高く苦味もなくて飲みやすいポーションもありますが、買っておきますか?』

「そんなのあんのか」

『1DPで1本です』



 3倍か……高級品だな。効能は高いんだろうけど1DPならそう変わらないだろうし、ここは……。



「……保留かな」

『ではその様に。次は良い報告ですね』



 そこでコアは一拍区切り、態々溜めを作る。



『良い報告は……』

「……」

『なんと……』

「ワクワクスルゼ」

『なんとっ……!』

「ザワザワ」

『プチモームが進化可能になりました!』

「スゲェゼ……え? まじ?」



 2、3日掛かるって言ってなかったっけ?



『通常であれば二齢、または三齢を経て次の段階に進むのですが……バド・ユレイドと十分な栄養を持つ畑を用意したのが影響して進化が早まった様です!』

「すげぇぜ。投資したかいがあったな」



 でも早い分リターンは少ないんだろ? 分かってるから素直に喜ぶぞ?



『中には自己進化して既に次の段階に至っている個体もいます』

「ほう、どれ」



 畑に向かい覗き込むと、一番近い所のイモムシがむにゃむにゃ糸を吐き、繭を作っている所だった。



『プチモームが進化し、プチモルムになろうとしています!』

「しん、か……?」



 進化って、もっとピカンキュイーンッみたいな感じだと思ってたんだが。

 ……そう言えばメニューに魔物進化って項目があったよな?


 そう思った瞬間、件のメニューが開いた。


 なんだ、コアに頼まなくても出るんだな。


 慌てず騒がず魔物進化の項目を見る。そこにあったのは、ズラーっと並ぶプチモームの文字だった。

 試しに一つ選択すると、出て来たのは矢印とその先のプチモルム、そして1DPと言う文字。



「これは……何の利点があるんだ……?」



 誰に問うでもない呟きに、しかしコアは嬉々として応える。



『プチモームの進化選択によるプチモルム化の利点は、なんと言っても更に次の段階に至り易くなる事です。自己進化によるプチモルム化の利点は、繭が取れる点でしょう。また、多様な進化が起きやすくなると言うデータもあります』

「成る程……繭は何に使えるんだ?」

『糸を紡いで布を織ったり、布に詰めてクッションを作ったり、擦り潰して薬として服用する事も可能です』



 やっぱ食うパターンもあったか。何せ人は蜂の巣とか鹿の角とかも食うからな。

 くわばらくわばら、近寄らんとこ。



『現場を考慮するならば、ピッドの仔が産まれた時のベッドとして活用するのが良いでしょう』

「じゃあそれでおなしゃーす」



 地味な進化だったぜ。



『それから、畑用土の再設置をおすすめします。5DPもあれば十分でしょう』

「栄養が不足して来たか? やっとこう」



 プチモーム達の進化は自己進化するに任せ、繭はコアに回収して貰う。

 これでイモムシの話は終了だ。


 俺はさっさとイモムシ畑から離れ、改めてコアと向かい合う。



『次は悪い報告ですね』

「聞かせて貰おう」



 虫以外でな。



『例の蟻の件です』

「……うい」



 まぁ、聞こうか。うん。仕方ないね。



『昨日から今朝に掛けて、頻繁に蟻が侵入して来ています』

「毒があるんだってな」

『はい。微毒ですが鼠程度なら腹を下します。解体した結果、あまりに鋭い牙と微かな毒、それを御する魔石がある事が判明しています』

「ふむ、魔石とは?」



 初めて聞く単語だぞ。なんとなく想像は付くが。



『魔石とは、物理法則に抗う為に作られる魔力の結晶体です。魂にスキルが刻まれるのと同じ様な機構を内部に備え、主に個の成長と種の繁栄に貢献し、魂の代替器官として作用します。配下で言えばピグマリオン、バド・ユレイド、ジェリーが持つ核が魔石です』

「成る程」



 つまりは魔石を持っている奴は普通と違って、何か特別な事が出来るって事か。


 例の蟻の場合、魔石が牙を鋭くして毒を持たせているって事だな。



『件の蟻達は……野生環境下の下等生物にしてはやけに機能が整っている気がしますが、数の多い魔蟲と言う生命体は往々にしてそう言う物です。この蟻の場合は、毒で他生物の捕食から逃れ、鋭い牙で木や石さえも砕いて巣を拡張する事が出来る様です』

「迷宮が巣として狙われてるって事か?」

『いえ、迷宮の壁は余程強い攻撃に晒されないと砕けませんので、その点は大丈夫でしょう。問題は数が多い事です』



 たかが蟻に何の問題が? ……と言いたい所だが、蟻って案外やばい生物なんだよな。すんごい群れで大型動物を殺したり、火傷みたいに痛い毒を使う奴もいるし、中にはキノコ育てる奴もいるし。


 蟻の一穴天下のうんたらとか、ダムを壊すとか言うもんな。



「蟻の数が多いとどんな問題が出る?」

『現状蟻は散発的にこの迷宮に訪れていますが、その総数は現時点で100を越えます。この事から、付近に蟻の巣があるのではと近辺をより詳しく調べた所、蟻達は袋小路の森の真南から西に掛けてより濃く分布している事が分かりました』



 まぁまぁ距離があるんじゃないか? 知らんけど。



『この数百体は迷宮の気に引き寄せられた物と考えられます。その為、数日も経たない内に数万規模の群れがやって来る可能性が高いでしょう』

「数万……」

『牙が鋭く、また蟻酸にも毒が含まれると想定出来る為、数万規模で襲われた場合此方にも被害が出る可能性があります』

「対策が必要、か」



 あっちにゴブリンこっちにありんこ。何これ? 圧倒的に無双しても俺tueeeにすらならない様な連中を警戒しないと行けないの? こんなんでエリアボスを倒せるのか?


 ……いや、千里の道も一歩から、だな。冷静に行こう。



「……ジェリーならどうだ?」

『複数に囲まれた場合、蟻酸や牙の攻撃で修復が間に合わなくなると考えられます』


 牙と毒に特化してるらしいしそんなもんか……囲まれなければ問題ないんだろう?



「……なら鼠穴に詰めとけば行けるんじゃないか?」

『それならば……出入口に近い待機スペースに4体程配備しましょう。2体までは1つの穴に入れるのでこれで十分な防衛力となる筈です』



 これで複数の穴から入って来られて詰む事は無くなった筈だ。



「後は中央のデカい穴だが……蟻の群れに喰われて骨になるのは御免蒙る」

『骨も残りませんよ。マスターだけなら耳と鼻と口を塞いで目を瞑り、暴れ回れば何とかなるかもしれませんが』

「でも全身ズタズタだろう?」

『装備だけは残るでしょうね』



 そらそうだ。500万の服だからな。



「……魚とイモムシと木は戦力外。まともに動けるのは影と人形とハムネズミ」

『一本道の横穴は開けたままにして、ピッドに蟻を狩らせましょう。群れの大半は深部目指して真っ直ぐ突き進んで来る筈なので、横穴に入る数は少ないと考えられます』

「ハムネズミの配置は変わらずで良いと。シャドーウォーカーは1000。ピグマリオンは500。うーん……数を増やすべきか……?」



 残りのDPは2000くらいあったよな? 500ずつ増やすか?



『……広間の前半部分にピグマリオンを配置しましょう。蟻程度ならピグマリオンの力で握り潰せるので、武器は持たせない方が良いかと』

「ピグマリオンはポーションじゃ治らないんだろ?」

『木工スキルを取得して鍛えれば『木工修復ウッドワーク・リペア』の魔法を取得出来ます。それを使えばピグマリオンを修復出来ますので取得と訓練をおすすめします』

「俺の頑張りに掛かっている……?」



 そう言う事ならOKだな。



『迷宮の周囲から木や枝を回収させましょう。ピッドとピグマリオンを向かわせますが良いでしょうか?』

「安全なら良し!」

『多少の危険はあるでしょうが、剣を持つピグマリオンがいれば問題ないかと』

「まぁ多少の危険は承知の上だな」

『ただちに』



 蛇なら剣持ちピグマリオンがオラオラやればどうにか出来るだろうが、鷹に攫われたらどうしようも無いしな。いるか分からんけど。


 わらわら迷宮外へ出るピグマリオンとピッド達を見送り、改めて考える。



「……シャドーウォーカーを平らにして攻撃させるのはどうだ?」

『……蟻程度の知能なら地面を攻撃する事も無いでしょうし、とても有効且つ安全だと思われます。ピグマリオン1体につき2体配置し、蟻がピグマリオンと戦っている隙を突かせ、ピグマリオンを守らせつつ運用するのが良いでしょう』

「採用」



 安全且つ有効なのが良いね。ピグマリオンの修復は俺に掛かっている。



『戦場を広間の前半部に固定し、溝を作ってジェリーを敷き詰めるのは如何でしょうか? 体の上部だけならジェリーの対応力でも十分ダメージを与える事が出来ます』

「採用」

『それから、水路を敷くと良いかと。ペルタに戦闘力はありませんが、溺れる蟻はただの餌です』

「毒があるが?」

『戦闘後池にポーションを撒けば問題ありません』

「なら採用」



 溝作りに2DP。ペルタの逃げ道を作る為、少し深い水路を三重に張り、30DP。


 ここを突破されたら……俺が頑張る事になるぞ。



 

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