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第36話 己を知り、敵を知る

第三位階中位

 



 北西の森に荒れた様子がない事。エリアボスの縄張りと思わしき場所の発見。今日も天気が良いなははは。等々重要な情報を入手し帰還した。


 そこから、コアによる徹底的な調査が始まった。


 尚、俺は魔法的な力の重要性を深く認識し、魔力操作を獲得する為に瞑想を開始した。





 時刻は進んで昼。


 昼食に細かく切ったあまじょっぱい蛇肉をつまむ。

 ゴブリン達には、彼等自身が回収済みだった猪の肉と豆、それに初級ポーションを用いて料理した物を出した。


 あれから一度も話をしていないが、それなりの情報共有はした様で、一先ず落ち着いているとの事。


 蛇肉をもぐもぐしつつ、コアの報告を聞く。



『はっきりとした情報ではありませんが、この森には5種類の脅威が存在した様です』

「した、ね」

『サジェカント、ゴブリン、猪、熊、鹿の5種です』



 然もありなん。いや待てよ……?



「鹿か……狼はいないのか?」

『狼は現在北部の山脈に生息している様です。白狼が南部にいた理由は不明、件の白狼は今は山脈には居ない模様です』

「まぁ、森の中に居るかも知れないし、警戒はしとこう。鹿はどうだ?」

『現時点でその存在は確認されていません。元の生息域は森の西部であった為、サジェカント、もしくはエリアボスに討たれた、或いは森の出口から逃げ出したと考えるのが妥当かと思われます』



 ふむ……最近の情報として確認が取れないってんなら少なくとも森にはいないだろうが……まぁ、警戒しておいても損はないだろう。



『また、エリアボスの種族についてですが……私の持つアーカイブから、おそらくパワードベアーと言う種族であると考えられます』

「確かにとんでもないパワーだったからな」

『断定出来ない理由は、本来のパワードベアーが両腕を強化しているのに対し、彼の個体は片腕のみだからです』



 ふむ、となると……パワードベアー何某の方が強いって事か?



『片腕しか強化されていない代わりに、通常のパワードベアーと比較して倍近い出力を持っている様です。その為、彼の個体は右腕に限り……C級にも届き得る力を持っているかと思われます』

「…………ふむ」



 そんな気はしていた。


 だって、あの猪はどう考えてもD級だ。それを一撃でぶっ飛ばす奴が同じD級だとは思えなかった。

 仮に下限と上限程力の差が開いていても、同等級でそれほどの差があるとは思えない。増してや……1体目も明らかにD級だったのだから、2体目はそれ以上。最低でもD-の上限くらいはあった筈だ。


 つまり、あいつの赤い一撃は、俺より2つも上のランクと同じ程度のパワーがある訳だ。


 それが表す事は——



「——ルー先生やばくね?」

『ルーセントソードの総合エネルギー量はF級の生物一体分のエネルギーと同量です』

「F級が一瞬で命を使い果たすくらいの力と言う事か」



 それで3段階上のパワーを受け流すんだからやばいよな。



『また、ルーセントソードに搭載される人格は、神に至った武人が神になる前に計測された技量を持つとの事です』

「そりゃおすすめされるわな」



 ほぼ神じゃん。そりゃE級の首をぽんぽんするぐらい朝飯前だよ。

 そうなると、やっぱり2枚同時とかやると、1+1は2ではない! 10倍にも100倍にもなるのだ! ……みたいな感じになるのだろうか?



『マスターが気になっていらっしゃる様なので分かりやすく説明しますが、ルーセントソードは近場で複数発動するとエネルギーが統合される仕様です』

「そりゃ残念」



 ダブルー先生は出来ないのか。トリプルー先生ならワンチャンエリアボスを楽に倒せるんじゃないかと思ったが、そう上手くは出来てないらしい。



『話を戻します……エリアボスの正式な呼称ですが、彼の個体は現時点ではパワードベアー亜種と言う事になります』

「サジェカントもなんかの亜種じゃなかったか?」

『シャープアントの亜種でしたね。エリアボスの報告はまだですが、再度命名権を下賜されるかもしれません。そこでなのですが……』



 事この状況でソワソワワクワクしてる辺り、コアは本当に魔物と言うか生物と言うかが好きらしい。

 態々若干の溜めを作り、コアは話を続ける。



『ゴブリン達の呼称であるバンムオーンを利用するのが良いかと考えます!』

「バンムオーンね。怖いとか森を乱すとかなんとかの。実際の意味はどうなんだ?」

『単語に分解すると、バンムが破壊音または破壊、オーンまたはムォーンが獣の咆哮の類いを指す様です。よってバンムオーンの語源は“猛り咆える者”であると言えるでしょう』

「へぇ」



 そりゃ的を射ているな。猪の事もバンムオーンとか言ってたが、確かに暴れ回って咆えまくってた。



「じゃあサジェカントの時みたいにちょっと縮めてバンムオンとかにするのが良いんじゃないか?」

『命名権が下賜された暁にはその様に命名しましょう!』



 寧ろ命名権寄越せみたいな勢いで報告しそうだなー。

 邪女神様うちのコアがすみません。生物が好きなだけなんです。


 ……いや待て、コア寄越したの邪女神様なんだから良いのか。



『……続けて山脈の詳しい情報ですが……北部。それも北端に、自然発生した物と推測されるゴーレムが確認されました』

「ゴーレム……! それは少し気になるな」

『ゴーレムはピグマリオンと同様に本来術によって製造される物ですが、稀に信仰や魔力の吹き溜まり等の特殊条件で自然発生する場合があります。信仰により発生した個体は一種の現神と呼ばれる物で、極めて強い力を持ちます。北部に見られる個体は後者による物でしょう』



 マヂかよ。信仰によって生じる現神と呼ばれる物。なんてあるのか。

 聞いた感じだと付喪神みたいな物なんだろうが……強そうは強そうだな。



「戦力は?」

『土精霊が変質した物であり、ピグマリオン同様にコアに生命活動を依存している為、コアを破壊されればそれまでです。観測された個体の発散エネルギー量から見て、おおよそF級相当かと』

「ふむ……取り敢えず放置だな」



 ゴブリン程度の戦力なら警戒する程の物じゃないし、利用も出来ないだろう。



『山脈におけるこれと言った生物は、後は狼くらいの物ですね。続けて崩落した小鬼達の採掘場の情報です』

「聞こうか」



 とは言えほぼ得られる物は取り切ったと思うが。



『先ず、山の崩落により、森エリアの一部が山エリアに上書きされました。これはバンムオンの認識による物が大きいと思われます』

「支配者がここは支配領域では無いと認識した、か」



 そこら辺の条件が良く分からんが……認識が大事って事なんだろうな。

 逆に言うと、南東部で崖崩れが起きても支配者がそれを認識していないとエリア侵害は起きない、とか?



『これにより、採掘場前にあった施設からアイテムを回収する事が出来ました。詳細は、破損した防壁、鍛治道具、炉、それらがあった石の家です』

「まるっと頂いて来たなぁ」

『保存空間の空き容量は残り0.2%です』

「空気しか入らん。いや拡張で。どのくらい拡張したら良いんだ?」

『1万P程度あれば倍になります』

「む」



 1万か……出せない事も無いが……流石に出費が、今日だけで3万くらい使ってるし……いやいや。



「実行で」

『はい……完了しました』



 パチパチっと軽く明滅し、保存空間が拡張されたらしい。


 うむ。まぁ急を要する訳では無いだろうが、資材も日々溜まってるしな。

 やがては拡張するのだろうし、これは必要な投資だ。



『続けて、採掘場深部から大量の鉄鉱石と魔鉱石を発見しました』

「ほう……魔鉱石?」

『魔力により変質した低級金属の総称を魔鋼と呼びます。魔鉱石を製錬する事で魔鋼を取り出す事が可能です』



 武器とかを作れそうな感じだが、生憎そっち方面の知識は無い。



『全ての回収におよそ1万P。製錬および精錬に200万P必要です』

「…………ん?」



 にひゃくまん……200万? ふむふむ……回収だけでも——



『——尚、回収する場合は保存空間の拡張に100万P程度必要です』

「前途多難デアルナ」



 やっぱり鉱脈を掘るには金が掛かるんだな。



『取り急ぎ魔鋼だけを確保しましょう。回収から精錬まで210Pで可能です』

「それなら実行で。後のは今は放置」

『承りました。回収された魔鋼は1,000kg。鉄は10tです。因みに北西部にも露出した鉱脈が存在し、魔鋼はおおよそ3,000kg、3t程度埋蔵しています』



 コアは金属も好きなのかね? 取り敢えず今は使い道ないし、ここまでで良いだろう。



「1tあるんだし、そっちは後でやろう」

『承知致しました。現時点で分かっている情報は以上です』

「おう、お疲れ」



 ……えー、拡張に100万で回収は1万、使える様にするのに200万。で、回収10Pで得られた鉄が10tだから……合計10万tくらいの埋蔵量? 全く想像つかないんだが……?



『……一応言っておきますがマスター、鉄の多い鉱脈ではありますが、鉄以外にも少量の金、銀、宝石類も存在します。今回はあくまでも魔鋼がある部分だけ切り取った結果であり、鉄が多く取れたのは魔鋼が鉄から変質しやすいからです』

「金もあるんだすげぇ」



 すげぇが別に使い道は無いな。売れる訳でもないし。


 精々俺が見て楽しむか、ゴブリンに見せびらかしたりあげたりするぐらいしか思い付かない。



 

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