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第13話 夥しくて見てられない

第三位階中位

 



 ふわりと意識が浮上する。


 スッキリとした目覚め。上体を起こし、伸びをする。



「ふぁぁ……良く寝た」



 何するんだっけ、朝飯? …………いやまて、ピグマリオンの修復だ。



「いや寝てない」

『寝てましたよ』



 くそっ、寝ちまった。



「やべぇ、今何時? 敵は?」

『日が沈んで間もないです。8時間は寝ましたか? お疲れですね』

「8時間……」



 まぁまぁ寝たな。



『敵襲は無し、静かな物です。虫程度なら来ましたが、蛇も鼠もその他の獣も来ていません。おそらく蟻の群れが進路上を荒らし周り、他の生命体は死ぬか遠くへ逃げるかしてしまったのかと』

「そうか」



 チラリと視線を枕元にやると、シャドーウォーカーが寝ながら手をブンブン振った。


 おお、復活したのか! 良かった。


 シャドーウォーカーは取り敢えず休んで貰っておいて、ひょいっとベットから立ち上がる。



「さって、取り敢えず修復だな」

『その後に夕食をお召し上がりください。同時並行で新たな報告も聞いて貰います』

「りょーかい」



 飯は肉が食いてぇな。





 なんとなくまだひりつく様な感覚の残る左手を摩りつつ、むぐむぐと生姜焼き定食を食べる。



『蟻の統率個体を解体し詳しく調べた結果ですが……先ずはこれをご覧ください』



 ころりと現れたそれを拾う。


 片方はゴマ粒程度の黒い石。もう片方は、小指の爪くらいはある、反対側が透けて見える黒い石と言うか宝石と言うか……ナニコレ。



『小さい方が蟻の魔石。大きい方が統率個体の魔石です』

「ほう……? 全然違うな」

『はい。通常魔石は量、即ち大きさと、質、即ち不純物の少なさ、透明度からその力を測る事が出来ます』

「成る程」



 と言う事は、この透き通ってる魔石はマジでヤベェって事か。



『御想像の通り、本来G級程度の生命体では持ち得ない程に高純度の魔石です。おそらく統率個体の中でも特に優れた特異個体だったのではないかと思われます』

「運が良いのか悪いのか……」



 まぁ、勝って生きてりゃ十分運が良いだろうがな。



『強力な毒を持っていたのは、長期に渡り貯め込んで醸造していた為と考えられます。その目的は外敵の排除であると予想出来、住処近傍での外敵との遭遇が少なかったのだと考えます。また、通常の女王蟻同様に羽の様な器官が存在した形跡があり、跳躍力はその名残りだと思われます』

「羽ねぇ……」



 あんだけデカいとなると、風に乗って結構な距離を飛んで来れるんじゃないか?

 となるとあちこちで見かけそうだな。



『地脈の調査、及び回収した魂魄から得られた微かな情報から、蟻の巣の位置が判明しています。卵や蛹が無数に残されていると考えられる為、襲撃を推奨します』

「そりゃ良いな。残しといても死ぬだけだし、有効活用しよう」

『山脈側から徒歩数秒の距離です。最も近い距離までの支配に掛かる費用は210P。中継地点と前哨拠点の設置に合計10Pです』

「当然実行」



 支配は結局進めないといけないしな。一石二鳥で渡りに船だぜ。



『支配に伴い、日間取得可能DP量が123まで増加しました』

「限界まで増やしといて」

『実行します』



 不労所得もぼちぼち増えてる。いっそ大規模に支配を進めてみるか? いや、無闇と増やして必要な時足りないってのは控えたいしな……ちょっとだけ使うとか? 考えとこう。



『支配範囲外に出る為、マスターの指示が不可欠ですが……』

「あぁ、そっか」



 外だとコアの補助を受けられないのか。そうなると途端に不安になって来るな。



『例によって巣の付近に強力な外敵はいません』

「ならいっか」



 だから蟻の毒が強烈だったって言う話だしな。心配ないか。

 寧ろ配下だけで行かせるとかの方が心配だ。



 もぐもぐと夕飯を食い、作戦を詰める。


 まぁ、作戦と言うか作業だが、万が一の逃走方法については入念に話し合い、飯を食い終わる頃には万事滞りなく決まった。


 さぁ、DP収穫に行こうか。





 青白く光る魔法陣が展開され、キラキラと仄かな輝きが辺りを満たす。

 僅かな時を経て、視界がガラリと切り替わった。


 初転移だが……戦闘利用はちと難しいと言わざるを得ない。

 逃げには使えるので、やばい時はどんどん使おうか。


 2度目の転送を経て、目の前に森が広がった。



「おぉ」



 視界の端には満天の星空が広がり、三日月が地上を見下ろしていた。


 都会では見られない星々の煌めきを堪能していると、後ろでキラキラが放たれ、コロコロとシャドーウォーカー達が雪崩れて来る。



『マスター。手筈通りに。御武運を』

「任しとけ。行くぞー」



 ガキを引率する様に、シャドーウォーカー達に声を掛け、異世界のフロンティアに一歩踏み込んだ。


 うわー、異世界来ちまったなぁ。すげぇ。今更か。


 夜風が吹いて木々を揺らし、青い匂いを運んで来る。

 柔らかい地面を踏み均し、草を踏んで歩く。


 少し感動を噛み締めながら進んでいると、目的地には直ぐ着いた。

 ちょっとだけ地面が盛り上がり、蟻塚の様にも見えるそれは、蟻が地面から掘り出した土を積み重ねて固め、拡張された蟻の巣だ。



「良し、行け、シャドーウォーカー達よ」



 声を掛けるや、シャドーウォーカー達は影となり、蟻の巣穴に突撃して行く。

 変幻自在の体を使い、一気に蟻の巣を攻略する作戦だ。


 侵食は瞬きの内に進み、バケツリレー方式で卵と蛹が地上へ運ばれる。

 その一方で、残ったシャドーウォーカー達は合体し、草っ原の草を引き抜いて道を作る。


 特に何のトラブルもなく、細長くて白い物の回収は終わった。


 シャドーウォーカー達は作られた道に並び、バケツリレー方式で迷宮へ白い物を運び込む。

 迷宮内にいるのは、後から転送されてきた101匹のジェリー。


 ジェリーに放り込まれた白い物は直ちにゆっくり捕食され、ゴマ粒程度の魔石を残すと予測されている。


 全ての戦利品回収は滞りなく終わり、ぞろぞろと浅い迷宮に帰還した。



『おかえりなさいませ、マスター。先に帰還しましょう』

「いや、消化が終わるまで待ってるよ」



 心配性な発言をするコアを制して、待機を選択する。

 俺がいない時に俺が倒せる程度の敵襲があって損害が出るのはごめんだからな。



「それよか、一個聞きたいんだけど」

『拝聴します』

「……迷宮外で敵を殺した場合DPってどうなるんだ?」



 いや、回収はされないとは思うよ? だけどさ、ワンチャンあるかなって思うわけ。

 それなら外出た時の殺しも無駄にならんなってだけの話。



『迷宮との縁が近ければ得られるDPが増加します。迷宮の目の前で何らかの外敵に生命体が殺害された場合、およそ1割程度。迷宮外で迷宮の魔物の手により生命体が殺害された場合、魂の縁を通じておよそ半分程度。マスターが殺害した場合100%回収可能です』

「ほう? じゃあ今回は俺が殺せば良かったって事か?」

『魔石と肉体の利用を考えるなら回収する方が良いかと』



 ……それもそうだな。相手が虫となると判断が鈍る……!



「っつうか魔石って具体的には何に使えるんだ?」

『何にでも使用可能です。何せ基本は魔力結晶ですから。ただし蟻程度の魔石なら、餌にするか畑に撒くのが良いかと思われます!』

「ふーん」

『そうすれば進化がより早まります!』



 急に元気になったからそんな事だろうと分かっていたぞ。



『勿論、魔石を保有していた蟻の肉体も大事なエネルギー原ですから。ジェリーやペルタ、ピッド等に食べさせる事でより多くエネルギーを取得させ、進化を早める事が可能なのです!』

「ナルホドナー」



 今の所進化の恩恵に預かれていないから何とも言えないが……アリボス程の奴が仲間になるかと思うと確かに安心だし頼りになるしワクワクもするな。毒餌だけど。


 となると一杯食わせてやりたい所だが……しかしこれ……アリの卵と蛹、結構な量だな。それに毒餌だし。



「これって結局どれくらいあるんだ?」

『蛹が12,716体。卵が37,145個です。予想獲得DP量は、2,757Pになります』

「行って良かった大収穫!」



 ってか多過ぎぃ! どんだけ増える予定だったんだよ。

 バケツリレーとは名ばかりのベルトコンベアー式運搬でも数十分掛かった訳である。


 直視してないから分からんかった!



「こりゃあジェリー増やした方が良いか?」

『このままゆっくりと消化させれば良いかと。マスターは奥の方にいてください』

「分かった。折角だから瞑想しておくか」



 戻るまでに魔力回復しておいて、少しでも早くピグマリオンを治療しないといけないからな。


 シャドーウォーカー達がジェリーにぷすぷす白い楕円形の物体を差し込むのを見た様な気がしながらも、目を瞑って瞑想を開始する。



 




《3日目》



【出費】


岩除去 550P

畑用土 95P

茹で豆 20P

初級ポーション×9 3P

闇の属性石 10P

朝食 1P

夕食 1P


バド・ユレイド×900 900P


瞑想 140P


短距離転移 24P

支配領域拡大 210P

吸収量増加 150P



合計:2,104P



【収入】


地脈吸収 123P

生産量 11P


ゴブリン生産量 2P


卵×37,145 1,485.8P

蛹×12,716 1,271.6P

蟻?×21499 4299.8P

蟻?(大)×10749 3224.7P

蟻?(女王) 6P


その他

虫?×24 2.4P



合計:10,426.3P



所持DP:11,014.9P



【所持アイテム】


石塊(中)×220

石屑


木材(中)

木屑


蛇?(大)の牙

蛇?(大)の皮

蛇?(大)の骨

蛇?(大)の肉

蛇?(大)の魔石


蛇?(中)の牙×5

蛇?(中)の皮×5

蛇?(中)の骨×5

蛇?(中)の肉×5

蛇?(中)の魔石×5


鼠?(黒)の歯×6

鼠?(黒)の毛皮×6

鼠?(黒)の魔石×6


蟻?(卵)の魔石× 37,145

蟻?(蛹)の魔石× 12,716

蟻?の牙× 21,658

蟻?の魔石× 21,658

蟻?(大)の牙× 10749

蟻?(大)の魔石× 10749

蟻?(女王)の牙

蟻?(女王)の魔石


鼠?の毛皮×20



 ゴミ処理はジェリー。虫等はピッド、ペルタの餌、及び畑の肥やしとなっております。早く進化しないかなぁ?



 

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