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第6話 村の全員集会が催されたぞ

「よく集まってくれた」


長屋村から歩いて10分くらいのところにある広場。

僕が隠れ家を近くに作ったとこ。


そこに村の住人300人ほどが集まっていた。

全員を集めた集会は初めてで、皆、何の集会なのかざわざわと話している。

僕はエリーちゃんとふたりで静かに待っている。


広場の北の端に作られた檀上には、村長さんが立ってしゃべり始めた。

それまでざわついた雰囲気が一気に緊張したものに変わる。


「今日は大変な発見があったので、皆に伝えようと思う」

「大変な発見ってなんだ!?」


檀上の村長さんの真ん前に陣取ったチビ・ガリ・ヒョロの3人のうち、チビがヤジを上げる。

こいつら目立つこと好きなんだよな。


「それは、これだ!」

『『『『おおーーー』』』』


皆が驚きの声をあげている。

村長が取り出したのは、金鉱キューブだ。


「これは午前中に掘り出した物だ。他にも50個ほどある」

「坑道から掘り出したんだな、それは金で間違いないか」

「そうだ。間違いなく金鉱キューブ、金含有量が1㎏ある」

『『『『おおーーー』』』』


皆、驚いているな。

僕とエリーちゃんだけは、ニコニコして聞いている。


朝一番で、村長の指示の元、枝坑道に入って、そこにある金鉱キューブを回収した。

全部で36個あり、前に回収した物と合わせて51個になった。


他にも金鉱キューブの一部が露出したものもあったが、採掘が必要だからそれは回収せずにいた。


「これから、皆を平等に金鉱脈近くの採掘する権利を与えよう」

『『『『おおーーー』』』』

「採掘した金鉱キューブは、それぞれの立場に応じた評価をし、歩合収入になることを約束しよう」

『『『『おおーーー』』』』


誰もが、喜びで笑顔になっている。

そりゃ、鉄鉱キューブを掘り出すより、金鉱キューブの方が割がいいことを知っている。


金鉱坑道に入れるのは、本来だったら特別な鉱夫だけだ。

それも、採掘した金鉱キューブは坑道オーナーの物になり、鉱夫には固定の日当が払われるだけだ。

金鉱キューブを掘り出したら、歩合評価されるなんてありえないことなのだ。


「この金鉱脈を発見した者を紹介しよう」

「すごいぞ。誰なんだ!」

「タイガ君、ここへ」

「タイガだって!!」


チビの奴、相当驚いてやがる。

だけど、反感は感じさせないな。

なんか、感謝している顔だな。


「はい。僕がタイガだよ。たまたま見つけた金鉱脈を村長さんがみんなで掘り出すことを約束してくれたんだ」

『『『『おおーーー』』』』「村長ありがとう~」


うん、村長さんが約束してくれたのは本当だしな。

まぁ、約束してくれなければ、金鉱脈のありか教えないって脅したんだけどね…それは内緒さ。


「そういうことだ。皆、この村の大きな発展に結びつく金鉱脈を発見したタイガ君に拍手で感謝を伝えて欲しい」

『『『『おおーーー』』』』


割れんばかりの大拍手が起きた。

エリーちゃんも、村長も拍手をしてくれる。

チビ・ガリ・ヒョロの3人組を嬉しそうに拍手してくれている。


なんか、全員がひとつになった感じですごく気持ちがいい。


「今日、伝えることは以上だ。細かいことはそれぞれのリーダーから指示が出る。それに従ってくれ」

『『『『おおー!』』』』

「明日らから、今までと全く違う、輝く人生が始まるのだ。皆、楽しみにしてくれ」

『『『『おおー!』』』』


☆  ☆  ☆


僕は村長さんの家の客間に戻った。

村長さんの計らいで長屋の大部屋から、ここに移ったのだ。


「ここでやることは、すべて終わったな」

《なんで、金鉱脈の権利を渡してしまったのよ》


「いいんだよ。僕が興味があるのは街だからね」

《そうよね。こんな小さな村より、街の方がいいわね》


「だろう。一度、行ってみたかったんだ、街」

《うん。いいわ、街。街の近くにダンジョンを作りましょう》


「えっ、ダンジョン?」

《そうよ、ダンジョン。街から近ければ多くの冒険者がやってくるわ。大きなパワーをゲットできるチャンスよ》


「ダンジョン? 作る必要あるかな?」

《何言ってるのよ、あなたはダンジョンマスターなのよ。私を使えるんだから》


あー、すると金鉱脈採掘の枝坑道はダンジョンなのか?


《あれは、ダンジョンというより、ダンジョンの下書きみたいな物ね》


だったら、魔物とか発生しない?


《しないわ。正式なダンジョンは異時空に存在するのよ》


異時空? それって何?


それからダンコアちゃんは、ダンジョンのことをいろいろと教えてくれた。


ダンジョンは洞窟や塔みたいな物と思われているけど、実際は全く別の物。

入口はこの世界にあるが、ダンジョン自体は異時空に存在する。

だから、ダンジョンの入り口から階段を下りたら、広大な草原が広がっていることもある。

もちろん、火山地帯だったり、海底だったりのこともある。


《とにかく、ダンジョンはすごいのよ。なんでもできるの》


「だけど、そんなダンジョンを作るのって、迷惑じゃないかな」

《何を言ってるのよ、あなたはダンジョンマスターなのよ。迷惑とか関係ないじゃない》


「でも、ダンジョン作っても、別にいいこともなさそうだけど」

《冗談じゃないわ。ダンジョンがあれば、あなたの望みはなんでも叶うのよ》


権力が欲しいなら、世界征服もできるという。

ハーレムが欲しいなら、街に美女達を捧げさせることもできる。

拒否したら、魔物たちで街を襲うぞ、と脅せばいい。

欲しい物があれば、いくらでも集めることができる。


それがダンジョンマスターだ。


「んー、どれもいらないかな」

《ええー。権力よ、ハーレムよ、男の夢でしょう?》


なんで、そうなるのかな。

僕は生まれてからは、村のため、家族のために働き続けてきた。

鉱奴になってからは、長屋村のため、故郷村のため、とがんばり続けてきた。


今は、故郷にも長屋村の人達にも役立つことができて満足なんだ。

あと、鉱奴から解放されて自由になった。

当面のお金に困ることもなくなった。


街に行って、いろいろとやってみたいことをする。

まずは、資金ができたから商売をしてみようかな。


それが今の僕の目的だ。


《だからね。街でやりたいことやったら、次はダンジョン作って、やりたい放題しましょう》

「それ、僕は望んでないから」


あれ? ダンコアちゃん、黙っちゃった。

僕がダンジョン作りたくないって言ったのがショックだったのかな。


まぁ、いいか。

そんな魔王になるみたいなこと、僕にできるはずがないからね。


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