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第4話 鉱山奴隷としての矜持

エリーちゃんによると、今は村長さんが仕事中だから夕方にならないと会えないみたい。

村長さんに会うためには準備が必要らしく、夕方に待ち合わせしてエリーちゃんと分かれた。


「これでうまくいくかな。まずは僕の奴隷身分を解放しないとね」

《なんで、そんな面倒なことをするのよ!》


あ、ダンジョンコア、ダンコアちゃんが頭の中でしゃべりかけてきたぞ。

ダンコアちゃんは僕の背負いバッグの中にいて、14個の金鉱キューブと一緒だ。


「えっ。だって、金鉱キューブをちゃんと評価してもらわないとダメじゃない」

《あんたは奴隷でしょう。逃げちゃえばいいのよ。ダンジョン造れば簡単にできるわ》


「それはダメだよ。僕が逃げたら故郷の村がひとい目にあわされちゃう」

《そんなのいいじゃない。あんたを奴隷に売った奴らでしょ。どうなろうといいじゃない》


そんなことはない。僕を奴隷に売るのは仕方ないことだったんだよ。

村の作物が不作で、税金を納めたら来年の種がなくなってしまう。

村が生き残るためには、誰かひとりは奴隷になるしかなかった。


《他の誰かでもよかったんでしょ。なんで、あんたが奴隷にされるのよ》


もちろん、僕もそれを考えたとこはある。

別の誰かが代わってくれないかな、と。


だけど、ちょうどいい年齢で男なのは僕か、弟だけだった。

女が奴隷になると、ひどいことをされてしまうから。


僕は9歳にしては力があって、小さな坑道にも入れるから鉱奴として高く売れたんだ。


《あんたバカね。もっと自分中心に考えなきゃダメよ》

「そんなことない。僕は頑張って見受金を返せるって、自信があったからね」


6年で半分返せたんだから、あと5年もあれば全額返せるはず。

それと同額、村に仕送りとして届くしね。


《その見受金って残りはいくらなのよ》


今は金貨10枚くらいかな。元々が金貨20枚だったからね。


《だったら、早く金鉱キューブで返しちゃいなさいよ》

「うん、そのつもり。だけど、普通に納入するとごまかれちゃうかもしれないでしょ」


実際、ノルマより沢山掘り出した時に、納入をチェックする担当者がイチャモンをつけてきた。

それ以降、あまり多すぎる時は納入を分けたりしている。


《腐ってるわね。強い魔物をけしかけたいわ》


ダメだよ。そんなことをしたら大騒ぎになっちゃう。

それよりも、ちゃんと対応してくれる人に会うのが最善なんだ。

エリーちゃんに金鉱キューブを託して、村長さん会えればすべてうまくいくんだ。


《人間世界って面倒くさいわね。強い者だけが生き残るダンジョンの方がシンプルね》


それだけ言うと、ダンコアちゃん、静かになった。

納得してくれたかな……でも、心配してくれるからうれしくなる、


村にいるときは熱が出たら心配してくれた。

今は熱を出すとノルマが達成できないと怒られる。


心配してくれる存在がいるって、いいことだね。


《心配するの、当たり前じゃない。私のダンジョンを造ってくれる人なんだから》


ダンジョンは造る気はないんだけどなぁー。ごめんね。


ダンコアちゃんは、言いたいことがない時は黙っている。

その後は静かにしていた。


さて、何するか。

待ち合わせの夕方までは、時間あるしな。


よし、お腹が空いたし、飯にしよう。

本当はエリーちゃんと一緒に来るはずだった食堂にやって来た。


「お前、ひとりか?」


先客がひとりだけいた…3人組の一人、チビ。

あれ、おかしいな。今の時間だと坑道にいる時間じゃないのか?


「どうした? なぜ、ひとりで食堂にいるのかな」

「ふん。俺がどこにいようと勝手だろう。俺はな、もうノルマを達成したんだよ」


きっと嘘だと思う…そんなに早くノルマが達成できるとは思えない。

どうせ、3人で掘った分を集めて、先に戻ったんだろう。


「エリーちゃんはどうした? 今日はデートだと言ってたろ」

「まぁ、それはだな」

「ははは。ふられてやんの! だから、やけ食いするのか?」

「まぁ、飯を食いにきたのはアタリだよ」

「かわいそうに、一人飯か。残念だったな」


嬉しそうにチビが言う。


まぁ、チビからみると一人でいる僕はそう見えるな。

人って誰でも、自分が信じたいと思うがそれが現実として見えてしまうからな。


「さて、気を取り直して、おばちゃん!」


今日はエリーちゃんが休みだから、食堂は、おばちゃんとシェフのおじさんだけだ。

エリーちゃんは、そのふたりの娘だ。


「あら、どうしたの? ひとり?」

「うん。おいしい物、食べたいと思ってね」

「えっと、エリーは。。。まぁ、いいわね。何、たべたい?」

「肉!」


この食堂の一番高級な料理は肉だ。

もっとも、肉と言ってもシチューだけど。


肉って注文すると普通のシチューの値段が倍になる。

その代わりに、シチューの肉がドドンと増える。

普通だと小さい肉片が1つだけなのに、大きい肉が2つも入る。

もちろん、黒パン付きだ。


「豪勢だな。ああ。デートが滑べってお金が余ってしまったって訳か」

「そういうお前は、飯を食わないのか?」

「ほっとけ」


一人で先に帰ってきたから、飯は他の2人が帰るまで待つのだろう。

そこまでして、僕達のことを監視したいのだろうか。


「タイガ君、できたわよ。今日は特別におまけしておいたから」


おおー、シチュー肉が3つだ。

ドドン、じゃなくて、ドドドンだ。


「うまいなー、シチュー肉! ほろほろだぞ」


がぶっと噛むと肉の旨味がどど~っと出る。

この美味さは肉注文しないと味わえないな。


「この肉は黒パンに挟むと特にうまい。こうしてシチューに黒パンを浸してだな」


黒パンは硬いから、シチューやスープに浸して食べる。

パンを薄くちぎって2枚にする。それをスープに浸して肉を挟む。


「できた! 肉サンド! うまそう」

「おい、すこし、肉をくれないか?」

「やなこった」


人のデートを邪魔しようとした奴に誰がやるかっていうの…バカじゃん。


「俺、最近、肉喰ってないし。ちょっとでいいからさ」

「やなこった」


絶対にオマエにはやらん!


「うまいな。一人で3つも肉を食ってしまうのは罪悪感あるな」

「だったら、1つ、いや、半分でもいいからさ」

「やなこった」


あー、悔しそうな顔のチビをみていると一段とうまくなる気がするな。


「あー。うまい。次はどうするかな」


残った肉をどう食べてやろうか悩んでいたら、チビが席を立った。

あ、帰っちゃうんだ。残念だな。


まぁ、絶対やらん、っていうのは伝わったらしい。


「じゃあな」

「ああ。さっさと帰れ!」

「デートに失敗したからって、お前は器の小さい男だな」

「お前には言われたくないよ」


そんなやりとりをしていたら、エリーちゃんがやってきた。

チビをからかっている場合じゃない。


「ええっ。どうして、エリーちゃん!?」

「だから。待ち合わせしていたのさ。時間があるから先に飯食っておこうと」

「あー、いいな。エリーも食べたかった」

「食べる?」

「あー、でも。もっと大切なことがあるから、終わるまで我慢する」

「だね。すぐ食べ終わるから、ちょっと待っててね」

「うん」


僕の食べるとこをニコニコとエリーちゃんが見えてる。

それを見て、チビは苦虫をすり潰して丸のみしたような顔……なんだか、楽しい。


「さて、行くか」

「うん。もう準備はできているわ」

「ドキドキするな。こういうの初めてだから」

「私もよ。ドキドキ」


うん、この会話。チビは勘違いするだろうな。

わざと勘違いするように、初めてを強調しておいた。


そんなどうでもいいことはおいておいて。

これから村長さんに会うのか…緊張してきたぞ。


ダンコアちゃんは、人格が女の子してるなー。姿は白い玉だけどね。


よかったら、↓で☆☆☆☆☆をクリックして評価してね。お願い。



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