第12話 たった2日で収獲の日を向かえることになった
最初の種を撒いた時から、48時間後。
俺は耕作地ダンジョンに向かった。
予定では耕作地ダンジョンは20日経っているから、収獲にちょうどいいタイミングだ。
だけど、畑にしたところを見て愕然となった。
「なんで、廿日菜がないだよ!」
《ほら、みてよ。野獣が齧った跡があるわ》
確かに廿日菜の芯は残っている。
柔らくておいしい部分だけなくなっている。
しかし、こんなダンジョンの中に野獣がいるんだ。
魔物は配置していないから、魔物はでないのに野獣はいるんかい。
《ここは自然の中のダンジョンよ。自然を一部切り出してダンジョンにしているの》
はぁ、自然の中と言ってもダンジョンだろう。
その証拠に俺はこの赤い境界線の向こうにはいけないよ。
《そりゃそうよ。ダンジョンに入った人はダンジョン境界は越えられないわ》
ええー、じゃあなんで野獣が入れるんだ?
《元々の自然の地にいる野獣はダンジョンの境界とは関係ないわ》
なんと! それじゃ、畑を食い散らかされないためには、どうしたらいいんだ?
《そりゃ魔物よ。ここはダンジョンだから魔物を配置すれば野獣なんかに負けないわ》
あ、そうか。 魔物を配置すればいいのか。
野獣が来たら戦ってくれるのか。
それはいいな。畑を守るからガーディアンだぜ。
ガーディアンに似合う魔物はなんだろう。
どんな真似にするかな。
《やっぱりドラゴンがいいわ。ぶおおおっーと炎を吐くレッドドラゴンなんてどう?》
却下! そんな物騒な魔物じゃなくて、普通のはいないのか?
どうせ野獣なんて猪か鹿だろう。
《じゃあ、ファングウルフはどうかしら? 肉食の魔物だから野獣が来たらいい餌よ》
ファングウルフは、大きな牙を持った狼の魔物で体長が2m、体重が100㎏と一般の狼より大きい。
完全な肉食で獰猛な魔物だ。
「よし、ファングウルフを2体配置しよう。ここに配置しておけば、畑ガーディアンになるし必要ならここから呼び出すこともできるし」
《そうね。ファングウルフなら普通の盗賊くらい簡単に倒すことができるわね》
ファングウルフは1体10DPで2体で20DP。
ポイント的にもちょうどいい感じがする。
「よし、最後に撒いた1/3はまだ食い荒らされていないから、あと2時間後に来ればちょうどいいだろう」
☆ ☆ ☆
「やったー、できたぞ」
廿日菜がちょうど二十日目になって収獲にちょうどいいサイズになったぞ。
いや、廿日菜にしては大きすぎる気がするが。
廿日菜というのは、本来小さめの菜っ葉のはずだ。
普通の菜っ葉だと生育に40日かかるが、廿日菜なら半分の廿日で収獲の時を迎える。
普通の菜っ葉より大きさは小さいのが普通だ。
「ここの廿日菜は普通のひ菜っ葉くらい、いや普通の菜っ葉より大きい気がするぞ。
《ダンジョンは魔素が循環しているからね。野菜の生育も良くなるのかしら》
そのあたりはこれから研究しないと、だな。
おっ、2匹の牙が大きな狼がいるな。
ガーディアンのファングウルフだ。
もちろん、ダンジョンマスターの俺を襲ったりしないぞ。
ハチ公より忠実な俺の僕だ。
「よーし、よしよし。ウルワンとウルツー。ガーディアンの役割ご苦労さん」
こいつらがいるから、野獣はここに入ってこれないんだな。
もしかしたら、何匹かは入ってきたかもしれない。
こいつらにかかったら、骨までバリバリ食べてしまうから、痕跡すら残さないだろう。
しかし、こいつら。普通の犬より長さで2倍くらい大きいけど、よく懐いた犬みたいでかわいいな。
上顎から生えているでかい牙はかっこいいしな。
「さあ、収獲しないと。鉈持ってきたから、簡単に出来るかな」
簡単じゃなかった。1/3の広さしかないけど、全部で4800株。
それをひとつづつ収獲していく。
一株で50g。2㎏くらいの束になるように40株を紐で縛っていく。
全部で120束、240キロにもなってしまった。
1日がかりで収獲した。
「ふう。終わった。しかし、沢山収獲できたな」
でも、こんなに沢山の廿日菜。
とても運べそうもないな。
荷車があれば、一度に運べそうなんだけどね。
「よし、マジックバッグを作るとしよう」
《そんなの作れるの? マジックバッグはレベルが高いマジックアイテムよ》
「もちろん、本物のマジックバッグは無理さ。単にダンジョンにつながった袋でいい」
うん我ながら良いアイデアだ。
まずはそこそこの大きさのダンジョン倉庫を造る。
ダンジョン倉庫の入り口を袋の中に作る。
「これでマジックバッグが出来上がりだ」
《あんた、なかなか頭いいわね。はい、できたわよ。そこの袋に入口を付けたわ》
袋をのぞき込んでみると、真っ白い部屋が見える。
これがダンジョン倉庫か。
この袋に収獲した廿日菜を入れていく。
10時間もしたら、全部の廿日菜をダンジョン倉庫にいれられた。
「よし、バザールに収獲物を売りに行くぞ」




