第11話 耕作地で菜っ葉の種を撒いてみた
「意外と広いんだね。10アールって」
1アールが100㎡で10アールだと1000㎡だから、1辺が30mちょっとくらいか。
ダンジョンの中の耕作地は、その部分だけが赤い境界線で区切られている。
そこから外に出ようと思ったら、透明な壁があるみたいでブロックされる。
赤い境界線の内部がダンジョンで、同時に耕作地ってことだな。
だけど、耕作地と言っても畑ではないのね。
草ボーボーで、それなんとかしないと。
《そりゃ、そうよ。廿日菜の種を撒くなら、まずは草刈りして、しっかりと耕さなきゃダメよ》
そうか。ダンジョンだから、畑になっていると思ったのは甘かったか。
《そのくらい自分でやったらどう?》
だってさ、農具もないし、僕一人だけだよ。時間が掛かってしまうよ。
ダンジョンなんだからさ。自動で草刈りとか耕すとか、できないのかな?
《出来るわ。ダンジョンの整地をすればいい。だけど、10DPも掛かるのよ。もったいないじゃない》
うーん。いいじゃん、そのくらい。
やってよ、お願い。
《しょうがないわね。ほら、耕したわよ》
おおー、すごいな。
なんと草がなくなって、しっかりとした耕した土になっているぞ。
その上、50センチ間隔で溝が掘られていて、畝になっている。
これなら、すぐに畑として使えるよ。
「やったぁ。ダンコアちゃん、すごい。尊敬しちゃうよ」
《まあね。ダンジョン内部のことは大抵のことはできるのよ。私がダンジョンコアなんだから》
うん、すごいすごい、
やるなぁーーー。
後は僕の役割だな。
廿日菜の種を撒くんだよな。
この畝なら1畝で2列の種まきラインを作ろう。
種まきラインは、25センチ間隔で穴をあけて、種を3つ撒く。
一つの畝30mで240か所に3つづつ種まきだね。
それを60畝だから、なかなか大変だ。
《そんなことするの大変じゃない? それよりも魔物を配置しましょうか?》
却下! 邪魔しないでよ。
しっかりと撒くんだから。
25㎝は手を広げて指先からここまでだな。印をしてと。
ぽん、ぽん、ぽん、ぽん、と。穴を開けたら種を3つづつ入れて土を被せる。
これで4か所だな。
これを60回繰り返すと1畝か。1畝30分も掛かるぞ。
10時間作業して、20畝だから1日で出来るのはそのくらいか。
《そんなやるの大変よ。やめない?》
何言ってるの。農作業というのは、こういうものなんだ。
とにかく、やるぞーーー。
☆ ☆ ☆
ふう。やっと20畝が終わった。
結局、休憩も入れたら12時間も掛かってしまった。
もう、夕方だな。暗くなってきた。
今日の作業はこれくらいにしないとな。
「さて、帰るとしよう」
《帰りは入ってきたところから出る。どこか分かる?》
「もちろん分かるよ。ちゃんとマークしてあるからね」
赤い線付きの棒を差してあるんだ。
《じゃあ、帰るわよ》
「うん。さぁ、帰って寝るかぁー」
《何言ってるのよ。まだ、朝よ》
「えっ、どういうこと?」
《ダンジョンの中の時間は、外の時間の10倍速く進むのよ。だから、ダンジョンを出ると入ってから1時間ちょっとしか経ってないわ》
「えっと、うーむ」
なんとなく分かる。だけど、どうも分からないとこがある。
まぁ、ダンジョンを出てから考えよう。
☆ ☆ ☆
確かにまだ朝だ。ダンジョンの入り口をくぐったのが朝7時くらいだから、8時過ぎか。
太陽の高さもそんなとこか。
だけど、12時間も作業したんだ、疲れてるぞ。
寝ないと続かないな。
《何時間、寝る予定?》
そうだな。8時間くらいかな。
《それだとダンジョンの中は80時間過ぎてるわ》
えっと、80時間というと3日ちょっとか。
それだとちょうど、芽が出ているころかも。
《いいタイミングね。寝坊しちゃダメよ》
大丈夫。坑道での労働で無理は慣れているからね。
どんなに疲れても8時間くらい寝れば復活できるよ。
《食事とかの時間も含めてなのよ》
あー、それだと寝るのは6時間だな。さっさと食事して寝ないとね。
食事は朝の屋台がまだやっているはずだ。
簡単に食べられるスープ麺を買ってきて済ませよう。
急がなきゃね。
こうして、僕は1日に3回、耕作地ダンジョンに入って、廿日菜の種を撒く作業をしたのだった。
スローライフのつもりが、がっつり農作業。
やりすぎじゃないのかな。




