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第10話 街でバザールを見学してみたぞ

「でかい!」


街に着いたとき、僕は思わず声を上げてしまった。


3mもの高さの街壁に囲われたその街は15万人もの人が住んでいる。

外から見えるのはどこまでも続くように見える街壁と大きな門。

そして、街の中央にある城と塔だ。


「ね、シャルル。あの城は王様が住んでいるの?」

「ここは王都じゃないから、王様じゃなくて領主の侯爵様よ」

「へぇ、お金持ちなんだね」

「お金持ちなんてものじゃないわ。このあたり一帯の領主様よ。領民だけで50万人もいるのよ」


50万人の領民っていうのがどれだけすごいのか。

良く分からないや。

でも、とんでもないお金持ちだってことは分かる。


「じゃあ、街に入りましょう。ちゃんと身分証は持った?」

「うん」


街に入るためには身分証が必要で、僕は鉱山の村長さんが作ってくれた身分証を持っている。

自由民であることを証明してくれるものだ。


「でも、街に入ったらどうしよう」

「えっ、決めてないの?」

「うん。とにかく街行きたいってだけで来ちゃったから」


いつかは商人になりたいって気持ちはある。

だけど、どうしたらなれるのか、全然分からない。


街に行って冒険者になる、っていうが勇者物語の定番だ。

なんの経験もなくてもできるのが冒険者だからね。


商人となるとそうはいかない。

どこかの商会に所属すると言っても、僕みたいな経歴だと無理だろうし。


シャルルは街の貴族に呼ばれてアトリエを開くという目的がある。

今の僕には、いつかは商人になるっていうものしかない。


まぁ、最初は、ただの観光客だね…お上りさんでいいか。


ただ、鉱山村でもらった金貨60枚があるから、しばらくは働かないでも大丈夫。

賊達を引き渡して報奨金をもらえたら、さらに金貨50枚ももらえてしまう。


「えっと。街の宿屋って一泊いくらくらいするのかな」

「そうね。一人部屋なら安いところで銀貨1枚。大部屋でいいなら、大銅貨3枚からあるわ」


お金はあるから、一人部屋がいいな。

だけど贅沢するとすくなくなってしまいそうだから、安めのところを紹介してもらおう。


「それなら、前に泊まったとこが良いところだったら紹介するわね」

「うん」

「だけど、その前に街警団に賊達を引き渡さないとね」

「そうだった」


街に来た目的がひとつあった。

賊を引き渡して報奨金をもらうこと。

これでただのお上りさんって言われなく済むかも。


☆  ☆  ☆


今、僕は街の中にいる。

しかしまぁ、すごく人がいて驚くな。


すでに賊は引き渡しが終わったけど、報奨金は1週間後になるらしい。

なにやら取り調べをするらしく、罪が確定してからになる。


「余罪があったら報奨金が上がるかもだぞ」


引き渡した街警団の人が言ってた。

まぁ余罪がなくても、ひとり金貨10枚はもらえるらしいからラッキーだね。


で、今、僕がいるのは下町のバザール。

商人になるなら、やっぱりバザールを見ておかなければね。


バザールというのは、露天がたくさん出ている広場で、朝は主に生鮮食品、昼以降は雑貨や服、そんな物を売る露天商が集まっている場所だ。

バザールはどこの街にもあって、毎日開催されるのが普通らしい。


バザールを管理している事務所は、入口の近くにある。そこで登録すればだれでも店を開くことができるらしい。

うん、商人になるための最初の一歩は、バザールの露店から始めるのがいいかもね。


今の季節は雨期なので、フルーツがおいしくなる季節。まるごとのフルーツはもちろん、フルーツジュースやカットフルーツを売る露天がたくさん出ている。

露店の前を通ると甘い匂いがして、わくわくするな。


「ねぇ、お兄ちゃん。ジュース飲まない?」


気が付いたら、10歳くらいの女の子が僕のズボンを引っ張っている。

僕と同じくらいの歳のお姉ちゃんと一緒にフルーツジュース屋さんをしているのか。


「じゃあ、ひとつ,もらおうかな」

「わーい。お客さんだー。お姉ちゃん、ジュース欲しいって」

「いらっしゃい。何、ジュースがいい?」


その露天には、様々なフルーツが並んでいる。

とっても、おいしそうだね。


「何がお勧めなの?」

「そうね。スイカジュースはどう? 今の季節は甘くなるから、一番人気なのよ」

「じゃあそれ」


彼女は手際よく、スイカをカットすると金属製の筒に入れる。

蓋をして引き手をひっかけると、ぎゅーっと引き手を引き上げると下から赤いジュースが出てくる。

それを素焼きのコップで受けて、満杯になってこぼれる瞬間に止める。


「はい。スイカジュース。あ、こぼれるから気をつけてね」

「いくら?」

「たった銅貨1枚よ。安いでしょ」


ジュース1杯が銅貨1枚か……故郷村なら考えられないほど高価だな。

もっとも、故郷村だと果物はそのあたりになっているから、お金なんて払わないけど。


お金を払って、スイカジュースを飲むとすごく甘い。

今の季節が一番スイカが甘いんだよね。

気温も高くなってきてるからすごくおいしく感じる。


「他に何か、いい物はないかな」


こんなにたくさんの商品を見たことがないから、眺めているだけで楽しいな。

ダンコアちゃんはなんか欲しい物ないかな。


《大きなダンジョンが欲しいわ》


それはダメ…あとで、万一の備えのために魔物が飼えるようなダンジョン造るから待っててね。


《わーい。どんな魔物がいいかな。アンデッド系? それとも、ゴブリン系》


それもあとね。今はバザールを楽しもう。


《しかし、ここもダンジョンね。どこに何があるか分からないわ。きっとトラップもあるはずよ》


トラップかぁ…あるかもね。気を付けなきゃ。


「はーい。ご覧ください、この古着! 名前は言えませんが、とある高貴な貴族様の奥方が来ていた逸品です」


あ、なんだか、口上が始まったぞ。

面白そうだから、見てみよう。


「今、貴族の中では人気になっているアトリエ・シャルルの作品です」


あ、シャルルさんが作った服なんだ。

思ったより有名な人なのかも知れないな。


「みてください、このライン。女性の方なら分かるでしょう。あなたを一番美しく見せるラインになっています」


うー、男には分からないぞ。

他のとどう違うのか?…ダンコアちゃんには分かるかな。


《ダンコアは服は着ないからわからないわ。だいたい300年も土に埋まっていたから今時の流行なんてわかるはずないじゃない》


だよな…僕より流行に疎いんだね。


《流行ならちゃんと知っているわ。今なら、海浜ダンジョンが人気よ。魚介魔物を配置してさ》


はいはい、ダンジョンの流行には敏感なのね。


「ちょっと、あなた!」

「はい、なんでしょう?」


ん? シャルルさんの服を売っている露天商のおっさんに、おばさんに近いお姉さんが怒りの表情で声をかけてきたぞ。


「これ、アトリエ・シャルルの作品って言って昨日売ったでしょう?」

「あー、そうだな」

「真っ赤な偽物じゃない! シャルルショップで確認してもらったのよ!」

「あー、シャルルショップは最近できたところだからな。古いタイプは分からないんだよ」

「マークが違うって言われたわ。シャルルは最初から同じマーク使っているって言ってわ」

「あー、それは…」


あ、いきなり走って逃げた…あの露天商は偽物のシャルルの服を売っていたみたいだな。

しかし、偽物が出るほど人気なんだな、すごいっ。


《バザールにダンジョンの入り口を作るのってどうかしら》


おいおい、こんなとこにダンジョンはいらないだろう。


《偽物とか現れるのなら、魔物が出るダンジョンがあってもいいじゃない》


それはちょっと違うだろう。

僕はまずは露店をお客さんとして見て回った。

自分が露店をするなら、で考えるのはあとにしよう。


《あんたね。ずっとノルマに縛られていたんだから、気楽に生きたらいいんじゃないの?》


どうも、そういうのは苦手だな。

何かやることが決まってないと落ち着かない。


《じゃあ、ダンジョン造りましょう》


それは却下。もっと、街の人達に役立つものじゃないとダメだね。


「何よ、この値段! 先週は半額だったじゃない」

「野菜の入荷が少ないんだよ。俺たちだって、仕入れが高くなってしまって仕方ないんだよ」


あー、野菜が高いのか。

野菜が作れれば、高く売れるな。


《作れるわよ。ダンジョンで》


えっ、本当?


《草原のダンジョンだって出来るんだから、野菜ができる耕作地のダンジョンだってありよ》


それいいかも。

今は野菜が足りなくて高くて街の人が困っている。

きっと野菜なら僕でも売れるし、いいかもしれない。

田舎にいたときは、村の菜園のお手伝いをしていたから、だいたい分かるしね。


なんで野菜の入荷が少ないのかを聞いてみたら、暑くて、雨が少なくて野菜が育たないらしい。

特に葉物野菜が足りないらしい。


うん、ちゃんとバザールで情報収集をしたぞ。

情報は商人の武器だと言っていた人がいたな。

村に来ていた行商人の人だ。


だけど、野菜を作ると言っても、あまり時間がかかるのはダメだな。

廿日菜はつかなならいいかな。

20日で収獲できるし。


《ダンジョンなら10倍のスピードで収獲する方法があるわよ》


ええー、ダンジョンはそんなことができるのか。

すごいぞ、すごいぞ。


《でしょう? じゃあ、1階は耕作地フロアにして2階は火山フロアっていうのはどうかしら?》


火山はいらないな。

耕作地だけ、プリーズ。


《もう。耕作地じゃ、畑だけになるわよ。つまんなくない?》


面白いかどうかじゃないだろう。

何が作れるかが重要だよな。


「廿日菜の種、あります?」


僕は種を売ってる露店を見つけて、交渉した。


「どのくらい必要なのか?」

「ん? 沢山!」


大き目な袋に一杯買ってみた。

これを撒いたら、沢山の廿日菜が収獲できるだろう。


明日はこの種を撒くための耕作地ダンジョンづくりからだな。


ダンジョンで畑づくり。

街の人に役立つダンジョンを目指しています……本当にそれでいいのか?


続きが気になったら、↓で☆☆☆☆☆をクリックして頂戴ね。

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