理想的な復讐方法
登場人物
清麻呂/阿部清麻呂 ゲーム スィートときめきLOVEの主人公
俺は、宇津伏リクとのファーストコンタクトから付き合いを深めていくと、
(あいつ、すげぇーいいやつじゃん)
そう思わずにはいられなかった。
他の連中に比べれば理解度が早く賢いし、親切だし、そしてなによりもノッコが凄く懐くほど優しい子だった。
身長は、すでに162センチあり、俺の151センチを大きく上回っていた。
最初こそ人見知りが激しいのと、遠慮が過ぎ、俺が家から出てくるまでインターホンを押せずにいつまでも玄関先で待つような子だった。
手を繋ぐのも俺が勝手に習慣化したが、申し訳なさそうな表情がいつまでも続いた。
というのも、
「翔介、われ、ひょっとして、こんなぁと付きおぉとるんじゃろう」
俺が、周りから散々冷やかされるからだ。
畳屋も恥を注ごうとリクに、
「このデカ女、この前のこと絶対許さんからの」
絡んでくるが、俺にはやはり手出しはできなかったのは母さんのお陰か・・・
俺は、この程度のこと「ガキのじゃれごと」として全く気にしなかった。
だが、リクが周りからの冷やかしを、他の女子達のように嫌がるのなら距離でも取ってやろうかと思い、
「恥ずかしいならやめるよ、遠慮せずに言えよ」
手を繋ぐのに配慮したが、逆に握られていた手が強く握り返された。
そんな様子を目にした当時の仲良し若林勇に、
「あののー翔ちゃん、姉と弟にしか見えんしよ」
そう言われた時は、笑うしかなかった。
◆
4月20日が俺の誕生日だ。
俺は、30歳になる約一ヶ月前に死んでしまうが、この走馬灯ワールドでは無事に10歳を迎え、この日から何かを決めたのだろう、リクは、これまでと違い自ら俺に手を絡ませてくるようになった。
(可愛いやつ)
リクからのプレゼント、手作りのサプライズボックスに入ったお揃いのハンカチを手にして想いを深めていくと、姪っ子たちの事を思い出してまた涙した。
とても会いたい姪っ子に甥っ子たちの面影が当然ある二人の母親というか姉達へも本来なかった情まで芽生えてきて、
(可愛いやつ)
リク同様の父性感情で親しみをもって弟でなく兄のように接するようになっていた。
ゴールデンウィーク初日、六年生の次姉、博子の、
「ノッコのお散歩したい」
との願いを聞き届けるために、俺がウンチセットを持って、リードを博子姉に託してそれに従った。その道中に、もう数えられなくなった心内会議を開いた。
▲ 心内会議 ▼
(リクの奴、よく笑うようになったな)
《ああ、それでも女子友は、まだできないよなぁ。うちの姉さんたちと母さんとは仲良くしているけど》
(うん、俺の目の届かないところでのクラスでの嫌がらせはまだまだあるようだしな・・・)
《それだけじゃないぞ、あいつの見た目が中学生にしか見えないこともあり、色気付いた六年生の野郎どもからも熱い視線を集めているだろう》
(ああ、六年の悪ガキ六人組のことだな。あいつら早々にリクにちょっかいを出してきやがったな)
《それをひがむ上級生女子からも、嫌がらせをされているようだし、なかなか女子友まではなぁ・・・》
(だな、何かいいきっかけでもあれば・・・)
《そんなことより俺ヨ、あいつの心配ばかりして復讐はどうすんだ復讐は!そろそろ復讐方針を明確にしておかないと、こんなダラダラ無駄に流れる時間に埋もれてしまうばかりじゃないか》
(だな、いくらリクが可愛いからといっても俺を殺した奴だ、復讐するは我にありだ。そこで俺は思いついたんだ、理想的な復讐方法を)
《理想的な復讐方法だって?》
(ああ、そうなんだ)
《もったいぶらずに早く聞かせろよ、その理想的な復讐方法とやらを》
(俺がリクによって殺されたことは間違いないが、その原因が俺にあったことも間違いない、そうだろう)
《ああ、間違いないな》
(そこで俺は、リクが将来トップモデルになれるように育てることにしたんだ。プリンセスだけじゃなくてクイーンとしてあのキャサリア・エスポジトを上回るモデルになれるようにな)
《はぁ~それのどこが復讐なんだ、俺ヨおかしくないか》
(まぁ待てオレよ、話は最期までだ。俺が言いたいのは、リクを将来モデルとして俺の手助けもあって成功させたあとに復讐するんだよ)
《もしかして自らの力で頂に上らせて、自らの手で奈落の底に突き落とす作戦か》
(ああ、でも突き落とすといってもモデルとして貶めるわけじゃなく、あいつをこの俺に惚れさせてふってやるのさ。いわば精神的ダメージを与えるという復讐にしたいわけだ。そのタイミングさえ間違えなければかなりダメージある理想的な復讐になるんだ)
《なるほど、スィラブイベントの【女の復讐】男バージョンだな。確かにあれはダメージ大きいな。目の前に現れた理想的ないい女が、実は昔、ふった女で、その復讐の為に清麻呂の前にきれいになって別人として現れるんだったよな》
(そうそう、清麻呂はそれに気が付かないでふられてしまい大ダメージを受けてしまう)
《それで【女の復讐】イベントをどんな風にアレンジするんだ?モデルで成功したあいつの前にカッコよくなった俺が颯爽と現れるといった感じなんだろう》
(まぁ、そんなところだが、まずは手始めにあいつから信用を得て仲良くならないとならないだろう)
《そこはもうクリアできてるんじゃねぇ?》
(そうだな、そこでだ、次に、あいつをクイーンになれるほどの何かをこの幼い時期に身に付けさせるのが俺の課題となるんだ)
《なるほど、俺が協力してあいつを一流モデルにすることが、あいつをイジメで苦しめた俺の罪滅ぼしになるわけか》
(そういうことだ。心底にこぶり付いた罪悪感を剥がしたいのさ。そして絶妙なタイミングでふってやることで本来の復讐としたいね)
《絶妙なタイミング?》
(まぁその話は置いといて、理想的な復讐を成し遂げるには前提条件としてまずは俺に惚れてもらわないとならないんだが、そこが難しいよなぁ〜)
《そうか?あいつを俺に惚れさせるのはそんなに難しいことじゃないだろう。今だってベッタリだし、カメラでも持ち出して、『撮影したい』とあいつに言えばそれこそパンチラありのエロ画像初期段階ぐらい撮影できるだろう》
(惚れてもらうのは今じゃない。リクがモデルとして成功してからだ。今、リクに惚れられてふったとしても罪滅ぼしはできんし、それ以上にあんな健気な可愛い子を泣かせるなんてクズだろう)
《なるほどモデルとしてブレークしてからふるわけか・・・それには、今じゃなくて未来のあいつに俺は惚れてもらわないとならないわけだ》
(そういうことだ)
《難易度高そうだな・・・それに、ミイラ取りがミイラになる可能性はないのか?》
(俺がリクに惚れるってか、それはないな。リクは確かに中学生にしか見えない大人感ある美少女だが、俺は、ロリ属性は皆無だし父性本能でしかあいつを見れない。この思いを培っていけばリクがいくら成人して俺好みになったからといって恋愛感情は芽生えないさ)
《本当にそう言い切れるのか?案外俺の方があいつにのめり込んでしまうかもだ》
(ないない、あってたまるか!)
《だな、でもさぁ別のケースがあるかもだ》
(別のケース?)
《ああ、今のように親しくしすぎていたら、あいつが俺に恋愛感情なんてものを将来持てなくなる可能性だよ。幼馴染とは結ばれないフラグのことだよ》
(さすがスィラブマスターだなオレよ。それも心配してないさ。あいつとの付き合いはこの先の長くても四年だ。その間、リクに向ける俺の感情は恋心じゃない、父性だ。だから、リクがいくら幼心で恋愛感情を俺にぶつけてきても俺の父性感情で捌かれ淡い思い出としかならないのさ)
《なるほど、スィラブで散々お世話になったアイテム【淡い思い出】を使うんだな。たしかにあれに勝るアイテムは突発性の事件、自然災害からの救助による【命の恩人】と同じく突発性の偶然による【アイドル降臨】しかなかったな》
(そういうことだ、淡い思い出を仕込むのがまさに今の時期で、そのために俺は、リクにクイーンになれるような何かを優しく丁寧に色々授けていきたいんだ)
《それ、いい考えかもしれんが問題が二つあるぞ》
(二つも穴があるというのか?)
《ああ、まずはアイテム、【淡い思い出】には強力な反撃イベント【幻滅】が発生するし、俺が色々授けるといっても今の俺に何ができるというんだ?社会人の俺なら何かしらのことができたかもしれんが》
(そこなんだよ、そこ。俺があいつに色々教えを授けるためのスマホじゃないかと俺は考えているんだが・・・ニュースは俺が死んだ日を境に更新はされないけど、検索データはそのまま使えるし、未来情報からの知識情報は満載だ。スマホを便利に使えば俺はリクのいい教師になれるはずだ。そうだろう。それにまだ全部目を通していない木村佐和子からの、あの膨大なデータも残されていることだし)
《なるほど、俺の考えはよくわかった、検証の価値ありだな。でも俺ヨ、【幻滅】対策にスマホは使えんぞ》
(そうだな、幼馴染のキャラ攻略中に必ず清麻呂の前に立ち塞がるのが、【淡い思い出】から美化された記憶を徐々に蝕む【幻滅】だったな)
《そうだ、たしか中学生編では小学校の時に転向していった篠川綾香が戻ってきての再会だったが、最初こそ【淡い思い出】のお陰でうまくいっていたけど清麻呂の帰宅部姿が、テニス部の綾香には理解できずに【幻滅】が発生してダメになりそうになる》
(そこで俺は、綾香攻略の為に清麻呂を丸尾栄一郎君みたいに名門のテニススクールに通う設定にして【幻滅】を防ぐ作戦にでたんだ)
《効果的だったな、あの策》
(ああ、帰宅部男子と思って幻滅していたら実は、プロ養成スクールの生徒だったなんて、それも同じテニスでさぁ)
《でも藪蛇だったじゃないか、レギュラー取りのために練習漬の日々でデート時間がなかなか取れずに攻略に手間取ったぞ》
(ああそうだった、そうだった。結局、綾香も同じスクールに誘って、やっと攻略できたんだったな)
《高校生編では、さらに難易度あがって苦労したな、初恋相手の緑川祥子との再会イベントで》
(ああ、でもな【淡い思い出】を発動して幼馴染との距離を縮めた後に【幻滅】が発生しても事前に自己スキルを相手以上に上げておけば、さほど【幻滅】は怖くないのもよく知っているだろう。俺はそれで祥子を攻略できたんだ)
《そうだったな、祥子はお嬢様設定のバイオリン奏者。そこでおまえはピアノスキルを密かにあげておいて、コンクール当日伴奏者が事故に巻き込まれて来られなくなって失意のどん底にいた彼女の前に颯爽と代役奏者として登場したんだったな》
(祥子のレッスンに何回も立ち会っていたのが幸いしたんだったな、あれ)
《そうか俺ヨ、わかったぞ!俺にそこまでの覚悟があるというのなら、この理想的な復讐と言った作戦、認可しようじゃないか。あいつがモデルとして成功した後の再会に備えて、俺が【淡い思い出】だけを頼るんじゃなく【幻滅】されないようにあいつ以上にスキルを上げておくことを》
(そこなんだよオレよ、そこ!)
《高いぞハードル》
(ああ、知ってる。でも、やるつもりだ、やってみせるさ)
《そうか・・・だったら、具体的に何のスキルを上げるつもりなんだ》
(それは、まだわからん。だからこそ、いろんなことを試せるこの10歳という年齢が大事になってくるんだ。とりあえず色々やってみるさ。そして、必ずトップモデルのリク超えをしてみせるのさ)
《おもしれぇ!ということは、あいつは仇でもあるがライバルでもあるわけだなぁ》
(そういうことだ。リクには負けられないほどのスキル者にならないと【幻滅】にすぐに喰われてしまうからな)
《これは、なかなかだな》
(ああ、なかなかだろう。この先は“リクは仇でもあるがライバルでもある”を意識したライフスタイルにしていくのが課題になるんだ)
《了解した、何か、いいのに出会えたら・・・
▽
「翔ちゃん、翔ちゃんってば、ノッコが逃げちゃったよ」
俺の心内会議を妨げたのは博子姉の慌てた声で、見れば公園の中を嬉しそうにリードを引きずって疾走して失踪しようとしているノッコだった。
「大丈夫だよ、博子ねぇ」
俺はそう言うと、口に指をくわえ、「ピッーーー」笛を鳴らした。
ノッコはその音に敏感に反応して失踪行動をやめて一目散に俺の方に駆け戻ってくる。
U^ェ^U おやつ・おやつ・おやつ・おいしいおやつ・おやつ・おやつ・おやつ・おいしいおやつ・おやつ・おやつ・おやつ
俺は、離乳食離れが済んだばかりのノッコに柔らかめのジャーキーをポケットから取り出して与えた。そして博子姉が驚くが、再びノッコを急き立てて自由に走るように仕向けてやった。
U^ェ^U あそぼ・あそぼ・あそぼ・あそぼ・あそぼ・あそぼ・あそぼ・あそぼ・あそぼ・あそぼ~
博子姉も喜んでノッコと戯れるように走り出した。
▲ 心内会議再開 ▼
《なぁ俺ヨ、俺の覚悟はわかったが、オレにはどうしても払えない懸念事項が三つあるぞ》
(え~三つも・・・俺は一つしか思い浮かんでないぞ。リクがモデルとして羽ばたく場所がパリを中心とした俺なんか想像もできないワールドで、凄いスキル人ばかりがいる所だということだろう)
《そう、それもだ》
(木村佐和子の話ではリクに言い寄る男は数多く、フランス人のF1レーサーチャンプのジャルバノ・スコティッシュは恋人なんて噂もあったそうじゃないか。俺の懸念は、俺がいくらスキルアップした上に【淡い思い出】を使用したとしても、そんな凄い奴らには勝てないかもしれないということだけど)
《その通りだが、それよりも時系列の問題について考えておく必要があるんじゃないか》
(考えてるさ。俺は、リクがモデルになる前提で話をしているし、もし時系列通りに進めば俺は30を前に再び死ぬんじゃないのか?回避する方法はあるんだろうか?)
《そこさ、一番大事なのは。この走馬灯ワールド、俺がスマホまで持たされてチートに蘇ったのは、復讐する機会を与えられたからであり、もし俺がこの前のように過去の桜花賞だとか皐月賞だとかの結果を調べて企むようであれば、俺はたぶん、30前どころか、すぐにでもこの走馬灯ワールドから追放されてしまうような気がする》
(ああ、俺だってそう思ってるさ。この前のは、俺のお年玉貯金33,000円全額を元手に桜花賞に注込んで、その利益金でさらに皐月賞で勝負したら、いくらになるかというシミュレーションを面白半分でしただけだよ。あれはあれでスマホ性能を確認するためだけのもので、あんな大金、欲しかったけど、それしていたら終わりだ感は凄くあったよ。自覚してるだろう)
《ああ、痛かったな、激痛だ。シミュレーションだけだったからあの程度の頭痛で済んだが、実際にやっていたら間違いなく痛みで即ENDだったな》
(ああ、間違いなくおしまいだった)
《それこそ俺はこの先起きる社会現象をいくらでも知っているわけだから、アップル株にしろLINEやメルカリにアマゾンにしろ、いくらでも金儲けができるし、》
(金儲けはともかく、災害予告なんてこともできるじゃないか。たちどころに多くの人命を救い、俺は、英雄になれるかもしれないな)
《待て待て、たぶん、たぶんだが、自己の欲望を満たす行為やかっこをつけた正義感を満足させるような行為は許されないような気がするぞ》
(そうなるのかぁ~?そうなのかぁ~?まぁしばらく検証してみるよ)
《気をつけろよ!いらんことをしたらあの腔内からくる頭痛が再度だぞ。あれは耐えがたいものがあったぞ、もう勘弁だぞ》
(わかってるよ)
《オレはな、このワールド、復讐するしか許されないような気がするぞ。だから一つでも懸念事項を削っておきたいんだ》
(ということは、脇目もふらずに復讐に専念しろということか?復讐こそが俺の人生ということなのか?スマホスキルが活かされていないような気がしまくりだぞ)
《とにかくここは、あまり欲張らずに理想的な復讐のために俺自身を磨くことに専念するのが大事だと思うんだが》
(う~ん)
《わかってるんだよな俺ヨ、もう一度確認するが、あいつがパリで体験するワールドは半端なく凄いぞ。そこに真っ向勝負できるほどのなんだかのスキルを俺は、身につけてモデルになったあいつと再会して惚れさせてふるのを復讐としてやってみせるんだよな》
(ああやってみせるさ。その日を俺の死んだあの日3月23日に設定するんだ。俺は、リクからのプロポーズを喜んで受けて相思相愛を演じてみせたところで、)
《なるほど、その日に死因は不明だが死ぬわけか、それが絶妙なタイミングというわけだな。あいつにはこの上ない復讐になるぞ。そもそもあいつのせいで俺が死んだわけだから、あいつが生涯心に残る死に方をしてやってもいいわけだ》
(ご名答!そのとおりだ。時間が経てばあいつは元気に復活するだろうし、罪のない細やかな復讐としゃれ込もうじゃないか)
《いいじゃないか俺ヨ、それ》
(だろ、そして俺は木村佐和子の待つ生前ワールドに無事に御帰還というわけだ)
《うん?そうなるのか、そうなればいいけど・・・》
(うん?ならないのか)
《そこはわからんよ。場合によっては転生なく成仏かも・・・だ》
(なのか・・・成仏か・・・できるかな、未練タラタラだぞ)
《少なくともこのままこの走馬灯ワールドを生きていたなら姪っ子に甥っ子たちには再会はできるかもだが、スイラブの新作に木村佐和子との温泉旅行は・・・》
(諦めるしかないのか・・・?心残りだが、しかたがないのか・・・?)
《悔いない30前ライフを復讐のために過ごそうじゃないか》
(うーん、そこまでの 悟に至れるのかなぁ・・・)
《難しいか・・・なら、あいつのプロポーズを受けた時にOKするんじゃなくてその場でふってやるのをゲームクリアにすればいいじゃないか》
(うん?それで何が変わるというんだ?)
《何も3月23日に死んでやらなくてもいいじゃないかという話だよ》
(あーーーなるほど!死ぬんじゃなくて、超えるわけだな。それなら復讐のために生きる人生にも励みがでるというもんだぜ)
《それこそがこの走馬灯ゲームクリアの賞品だと期待しょうじゃないか》
(30越が俺の復讐達成の報償か・・・なんだかマジでやる気になってきたぞ)
▽
「翔ちゃん、翔ちゃんってば、ノッコにさっきのおやつをあげたいの私にもちょうだい」
再び心内会議を妨げてきた、博子姉の揺さぶりでハッとする俺は、ポケットからジャーキーを取り出し、
「姉さん、全部あげたらお腹を壊すから少しだけだよ」
声を掛けたけど、ノッコは見事にゲリピーになってしまう。
そうなる前のノッコを再びリードに繋ぎ帰宅中に心内会議を再開して、目先の最大の懸念事項について協議する事にした。
▲ 心内会議再開 ▼
《最大の懸念事項についても俺ヨ少しばかり考えてくれないか》
(ああそうか三つあると言っていたなオレよ、それで最大の懸念事項とはなんだ?)
《おふくろだよ、俺のことをかなり疑ってるよな、この変わりようを》
(母さんかぁ・・・そうだな、習い事も増えたし、熱心にもなったからな・・・手伝いも日課で当たり前のようにやってるし、やばいかもな、このままじゃぁ)
《やばい、やばい、やばい》
(どうする?)
《どうしよう、どうしよう、どうしよう》
(対策を急いで考えないと)
《考えろ、考えろ、考えろ》
俺は最大の懸念事項、母と向き合う事に全神経を傾ける事になる。