表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あいつは俺の仇!  作者: 方結奈矢
第二部 五年生編
32/58

あんた誰なの? 


 昨年は、俺の家族も一緒だったお盆の墓参り。今年は父さんが迎えに来る前日に爺ちゃん婆ちゃんに俺となんだか元気がないリクに元気いっぱいノッコの顔ぶれだ。


 母方、園田家の墓は、徒歩10分、近所の天龍寺境内の塔頭寺院にある。 


 その道中、


 「なんだなんだ翔介の目つきが艶ぽいぞ」


 爺ちゃんにからかわれた俺の成果は、女舞を習った事でそんなところに出てきたようだ。


 フランス語も俺は頑張った。


 なんせスィラブにおいても女との競い合いにおいて負けるよりは勝った方がいいケースが多く、俺はフランス語に正面から取り組みリクに勝ったのだ。


 もちろんリクも頑張ったし、この先も広島でも二人で続けていくつもりだ。


 まぁ、ちょっとしたトラブルもあった。


 フランス語会話のレッスンでは、俺は、有閑おばちゃん族の人気者となり、リクは地元国立大のフランス文学を専攻する学生たちの人気者になった。


 リクの拙い(つたな)フランス語が本来の幼い姿を隠し、最後まで実は小五であると知られる事はなかった。


 Je suis son frère.

 「僕は、彼女の弟です」


めんどくさいので、リクに理解できないのを利用して周りが勝手にイメージしたとおりに自己紹介すると、その間隙を突くように、初心者クラスの世話役だったエリート大学生の雅俊君19歳は、意を決してレッスン最終日にリクを食事に誘ってきたのだ。


  Tu me manques quand je pense que je ne pourrai pas te voir à partir de demain. Sortons dîner.

 「もう、明日から会えなくると思うと寂しいよ、どうだろう、これから食事にでも行かないかい」


 しっかりしたフランス語での誘いだったが、リクは誤訳する。何を思ったか、


  Je suis encore trop immature pour le montrer.

 「まだ、お見せできるほどのものではありません」


 そう発音して丁寧に頭を下げたのだ。どうやら、それまでのグループディスカッションでの会話から、「舞を見せて下さい」ぐらいに誤訳したのだろう。


 リクは、ここ最近の日常を辞書と格闘してフランス語で発表していたのだ。


 俺は笑ってしまったが、


 (あいつ、あんなにリクのことを一生懸命フォローしてくれていたのに・・・)


 気の毒にもなり俺は雅俊君のフォローをしてやった。


 「リク、お食事のお誘いだよ、あの大学生のお兄さんが、どこか美味しいものを食べに連れてってくれるってさぁ」


 俺は、日本語でそう伝えてやると雅俊君に感謝の会釈をされたが、さらに気の毒な結果を生む事になった。


  Sur rendez-vous avec ma mère,Tu ne peux pas suivre les autres.

 「ママに言われているの、知らない人に絶対についていってはダメよって」


 これは見事なフランス語だった。


 俺は、この昨日の事を思い出して(ヤバイ)と思ってしまう。


 そうなのだ、俺はリクがよその男から誘われても嫉妬心が湧いてこなかったのだ。

 

 その事が、リクを蝕み元気を奪っている事に気が付いてしまった。


 こんな事は実は初めてじゃない。これまでもチョクチョクあった事で、ボディーガードはすれどリクへの誘いへの妨害はした事はなかったのだ。


 下校中に地元中学生からよく誘われるリク。ラブレターをもらうとこにも遭遇したが、そんなときも様子を窺いはしたが干渉はしなかった。


 もちろんよほど困った顔をしたときは介入したが、リクの自発性に任せたのだ。


 その度に、めんどくさい事に今朝と同じ顔をしやがる。


 墓参りを終えた俺は、ノッコとリクを大堰川で遊ばせるために爺ちゃん婆ちゃんと別れ観光客で賑わう川土手へと向かった。


 ▲ 心内会議 ▼


 《昨日の雅俊君のこと、問題あるんじゃないか、一応あいつは俺のカノジョだぞ》


 (そうだな、あいつ後生大事に俺のやったネックレス肌身離さずだし、あそこは、リクの手前、嫉妬心ぐらい見せておくべきだったんだろうな、「リクは僕のカノジョだぞ、近づくな」ぐらいのな。でも青年の純粋な気持ちもわかるしなぁ・・・高ポイントもらい損ねたな)


 《そうだなスィラブでも、これはやり方を間違えなければ超高ポイント発生イベントだったのにな、もったいない。俺ならできるんだろう、そのさじかげん》


 (ああ、お手のものだ。要は束縛感をリクに与えず且つ守らている感を与える言い回しだろう、簡単にできるが・・・それにしても・・・どうして俺は、大事なリクに対してこうも淡白なんだ)


 《もしかしてこの走馬灯ワールドで俺は恋ができない設定じゃないのか?俺は現在小五の11歳、あんなに可愛いあいつに恋してもいいはずなのに、それができない。やはりここへは復讐のためだけの走馬灯ワールドということかもな》


 (そうなのか?ただのロリ属性の有る無しの問題だろう)


 《そうか?俺の一推し愛莉ママにしろ、恋する相手じゃないだろう》


 (ああ、ママコレすべて眺めてよしの眼福材料だよな。独身吉井先生にしろ・・・)


 《だろう、悲しいかな現在の俺にリアルで恋する相手はなしだ。そして、この先もわかったもんじゃない。この問題にあえて目をそらして、どれもこれも適当にごまかした結果が安易なブチューだろう》


 (だな・・・キスすることでロリ趣味に目覚め、キス相手に恋心が芽生えるとか期待してのな・・・どうしよう、恋のない人生なんてこれまで経験ないぞ)


 《ああ、片思いでも俺はいつでも恋をしていた。その素晴らしさをスィラブで学び実践してきた俺にとっては・・・辛いな》


 (どうせならこの走馬灯ワールドがスィラブの仮想空間だったらなぁ・・・ログアウトできなくてもいいのに)


 《言っても詮無きことさ。とにかくだ、この先、恋できる相手との出会いを願いつつも、あいつをこの日本から旅立たせるまではあいつに奉公だぞ》


 (ああ、わかってるよ。ここはリクのフォローに努めようじゃないか)


 《だな》


 ▽


 俺は、この走馬灯ワールドでは「恋ができない設定の恐れあり」をスルーしてこの先に期待する事にした。


 そして保津川下りの終着場近くで川に浸かるノッコを見守るリクの側に寄った俺は、その手を固く握って、諭すように話を始めた。


 「リク、おまえがなんで不機嫌なのか僕にはよくわかってるんだ。だけどな、これだけはわかってくれ。僕は、リクのことが一番大事だけど束縛するのは嫌なんだ。リクは自由であり僕のものじゃない。わかるか」


 頷いて俺の顔を見つめてくるリク。


 「だから、せっかくリクのことを気に入って声をかけてくる人の邪魔はしたくないんだ。昨日の大学生だって、フランス語の教室ではずいぶん僕たち世話になったじゃないか、そんな彼の誘いを無下に断るのは失礼だと僕は思ったから口出ししなかったんだぞ、わかるよな」


 「うん、わかるよ・・・」


 「だから、不機嫌になるのはリクの間違いだ。もし、あそこでリクへの誘いを僕が邪魔するような男なら、僕自身が僕に我慢ならないキャラに成り下がるんだ。リクのことを守るべき時に守るのは知ってるだろう、僕は」


 「うん・・・」


 ここで俺は、スィラブでもリスク高い賭けにでる。


 「もし、僕の昨日の態度が気に入らないというのなら、僕とリクの縁はこれまでだ。僕がフランス語や舞にリクを誘ったのは一緒に成長の糧にしたかったからだよ。あんなつまらんことでヘソを曲げるようなら、もういい、マジでもういい、これまでだ。僕だってリクの相手なんて本当はクソめんどくさいんだ」


 (あれ?やばい、俺、暴走してるぞ、本気で言ってる、止められない。リクのことなんか正直どうでもいいんだ、本当の俺は・・・)


 ▲ 緊急心内会議 ▼


 (やっぱり、そうだよな・・・俺は復讐のためだけにリクに近づいただけだよな)


 《ああ、罪滅ぼしのためにあいつに施すべきものを与えるために親しくなったにすぎんが、それがどうした、おい俺ヨ、まさか・・・》


 (あ~~~めんどくせ~なんて復讐方法を俺は選んだんだ。オレよ、もうここらへんでいいんじゃねぇ、リクから手を引いても。俺は我が道を行くべきなんだよ。稼ぐ手段も兼ねたやりたいことも見つけたんだし、ここらで復讐なんてリタイヤしないか)


 《おい待てよ、そんなことをしたら、》


 (俺はな、30前に死ぬ可能性が高いんだ。リクに関わっている時間がもったいない。やりたいことをやりたいよ)


 《おいバカなことを言い出すなよ。見ろよあいつさすがに勘のいいやつだ、泣き出してるじゃないか。俺の言わんとしているところを正確に察したぞ、なんとかしろ》


 (泣け、いくらでも泣け、もうどうでもいいや。ああ、なんだか気分が楽になってきた、これで舞もフランス語もやめられる)


 《おい俺ヨ、どうしちまったんだ!しっかりしろよ、このままだったら、》


 (このままだったらどうなるって言うんだよ。よし、最後の台詞を言ってやるぜ、もうこれまでとな)


 《おい、待てよ》


 ▽


 「リク、俺とおまえの、関係は、ウッ!・・・」


 俺をこのタイミングで襲ったのは、腔内起点で急速に広がるあの頭痛だった。これまでにない気が狂うほどの激痛だ・・・


 俺は苦しみのあまり膝を付き、頭を両手で抱えた。


 (ああ・・・そういうことかぁ・・・俺はこの走馬灯ワールでは脇役だったんだ。ここはリクを主人公にしたステージであり、俺はNPCにすぎないんだ)


 ここにきて俺はやっと自分の立ち位置を明確に正確に認識できた。


 (俺は所詮脇役なんだ、ここで退場かぁ・・・ノッコのことだけは頼むぞリク・・・)


 ドッサと俺は、河原に倒れ込んでしまった。


 最後の意識はノッコが慌てて駆け寄ってきて俺の顔を舐めた感触だ。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 次に俺が目覚めたのは病院のベッドかな?


 枕元にはリクの顔。父さんもいる。爺ちゃんに婆ちゃんも・・・一斉に声がかかる。

 

 「「「翔介!」」」


 俺はまた意識が飛んだ。


 ▲ ▼


 それで、どうするね


 「えっ?どうするとは」


 このままこの舞台を逃げ出すというのなら、遠慮はいらんぞ、好きにするがいいさ、ちゃんと成仏させてやる


 「えっ?あなたは誰です」


 誰でもないし、何者でもない


 「誰でもない?何者でもない?」


 それで加羅翔介よ、どうするんだ。さぁさぁどうする 静かに成仏するか、それともこの世界にとどまるか・・・


 「残っていいの?リクにあんな酷いことを言おうとした俺が」


 おまえが望めば残れる。おまえが望めば成仏できる。


 「元の世界には戻れないの?」


 元の世界のおまえは無に帰した、どうにもならん


 「だったら残るよ、残ればいいんだろう。その代わり一つだけ教えてくれ、人の運命は変えられるのかを」


 運命?そんなものは元々ない。あるのは自然の摂理だけよ


 「自然の摂理だけだって、それって自然任せの成すがままということですよね」


 なるようにしかならぬということだ。どう足掻こうとも人は自然の摂理に抗うことはできない。おまえがここに来たのも、そういうことだ


 「わかりました、俺はこの世界に残ってこれまで通りリクに尽くすよ、自身の復讐のために」


 復讐だと・・・おまえは未熟だな。まぁいい賢きおまえならいずれ気が付くだろうよ、何を成すべきなのか、をな。


 さぁ、自分で目覚めてみよ。


 ▽


 こうして俺は、今度こそしっかり目覚めた。


 だが、目が開けられない。体も動かない。でも意識はあり、周りの状況はよくわかる。


 リクが必至に俺を起こそうと話しかけている。


 「私がわがまましてごめんね、もう翔介を困らせないから、早く起きて」


 俺の手が痛いほどしっかり握っている。俺に握り返す力はない。


 諦めを知らないリク。父さんが止めるのも聞かずに、いつまでも俺に呼びかけてくる。いつまでも、いつまでも・・・


 思い出したのかな?リクは、あの日を、ファーストキスを俺にした時を・・・


 リクは、俺に覆いかぶさってきて、キスをしてきた。以前とは違い力強くより情愛を込めたものを。


 (これは目覚めるタイミングだな。さぁ起きよう)


 どうしたわけかリクの唇を通して流れ込むパワーとは違うマナみたいなものを俺は深く感じ取り、急に身体に力が漲ってきた。


 力がなかったわけじゃなかったんだ。力の源へのアクセス道が閉ざされていただけなのだ。


 リクによって閉ざされていたドアは開き、俺はやっと身体に自由を取り戻した。


 「あ~~~腹減ったぁ」


 情けない俺の第一声に皆は驚き大喜びした。


 どうやら俺は、丸二日間寝込んでいたようだ。

 その間、誰かと語り合いチャンスを一度だけもらった記憶はしっかりあるが、ただの夢であったような気もするし、よくわからん。


 まぁ俺が目覚めない間の周りの騒動は想像にたやすく、謝罪に徹した。


 「ごめんなさい、迷惑かけたみたいだね。僕はもう大丈夫だから」


 「やっぱりリクちゃんは凄いな、キス一つで翔介を蘇らしてしもうたよ」


 この父さんの喜ぶ声で俺は事情をだいたい悟った。


 俺はバイタルサインが安定するまで、集中治療室にいたようで、病室に移されたところでリクが登場したらしい。


 「リク、ありがとな、また僕を助けてくれて」


 あのショッパイ味を俺はまた散々味わう事になる。


 目覚めた俺は、ドクターの診察でも、「もう大丈夫でしょう」お墨付きをもらうと、早く無駄にした二日間を取り返すために退院を催促するも聞き届けられない。それほど俺の痛みを訴えていた苦しみは尋常でなかったようだ。


 「母さん」


 父さんより一日遅れてやってきた母さんの姿を目にして俺は、二人きりになると、事の顛末について、想像を語った。


 「真魚様に、怒られたんだよ。もう、それは解決したんだ。もう一度だけ機会をもらったんだ。だから、健康上の問題でこうなったわけじゃないんだ。だから、退院させて、やるべきことがたくさん僕にはあるんだ。それと母さんとビールを飲みたいしね」


 検査結果も良好であったのもあり、目覚めた翌日には俺は、退院してみせた。


 まずは、リクへの謝罪だ。


 「リクに酷いことを言おうとした天罰だよ、今回の件は、本当にごめんな。リクは僕にとって掛け替えのない人なのに、大事にしなかった罰さ」


 そして、ノッコとのコミュニケーションだ。


 U^ェ^U 翔介元気か?翔介元気か?翔介元気か?翔介元気か?翔介元気か?


 「ああ元気だよ、心配かけたな。さぁ、散歩に行こうぜ」


 盆が過ぎて朝夕がめっきり涼しくなった予定にない京都をリクとノッコと三人でゆっくり散策するのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ